デザイン思考の浸透とともに、ビジネスにおいてユーザーと対話することは、新規事業を考える上でも、既存の事業を改善していく上でも、不可欠のものとなってきています。
対話を行う手法の中でも特にインタビューは、新規事業における仮説の検証に適しており、ユーザーとの対話を通じて、そのアイデアが、ユーザーに「欲しい」と思ってもらえるかを確かめることができます。
インタビューは、そのようにとても有効な手法なのですが、検証課題の定義から始まり、対象者条件の設定/事前アンケートの配布先の検討と配布/対象者の選定/日程調整/機材等の準備/当日の流れの準備など、インタビューそのもの以外にも準備することが多く、なかなか繰り返し行うことができず、内容的にも1回1回のインタビューが重くなりがちです。結果、分析も大変で、インタビュー結果をプロダクトに活かすのにも一苦労します。
リサーチ会社を使って、これらの雑事をお任せすることもできますが、その場合は1回1回のインタビューコストが高まり、こちらも繰り返すことが難しくなっています。
そんな中、インタビューをよりライトに何度も回せるようにしてくれる『インタビュープラットフォーム』がいくつか登場してきています。これらをうまく導入していくことで、アイデア検証がぐっと身近になり、事業開発やサービス改善を行いやすくなります。
今回はインタビュープラットフォームについて、公開されている情報を比較してそれぞれどのような特徴のあるツールなのかを解説してみたいと思います。
新規事業における、インタビューの重要性は以下の記事でも紹介していますので併せてご覧ください。
目次
1. 各インタビュープラットフォームの比較結果
今回比較したインタビュープラットフォームは、pivo、ZERONE、torima.in、uniiリサーチ、Lupe の5つです。pivoは、当社が提供しているツールです。
簡易版と詳細版を用意しました。表の画像をクリックすることで詳細版を参照することができます。詳細版では簡易版に掲載されていない項目の比較も行っておりますので、興味のある方は是非クリックしてみてください。
※2023年5月現在、「ZERONE」は提供されていません
※クリックで詳細版を表示します
※基本的にはサイト上で公開されている情報を参考にし、比較しています。
pivoは既存事業(ローンチ済のサービス)向けで、サービスを実際に利用しているユーザーに話を聞いて改善につなげたいという方に向いているツールと言えます。クライアントはメルマガなどを使ってモニターの募集を行うだけで、面倒なことはすべてpivoが行ってくれる上に、自社モニターを集める場合はすべて無料で使えるのが最大の特徴と言えるでしょう。
逆に、新規事業に向けて、広く一般の消費者の中から、ユーザーとなりうる属性を持つ人を募り、話を聞きたいという場合は、uniiリサーチやZERONEがおすすめです。
uniiリサーチはpivoと同じく日程調整やオンライン会議ルームの準備などの面倒事を引き受けてくれるので負担が少なめ、ZERONEはオープンなリサーチプラットフォームなので、他のサービスと比べて募集のハードルが1段低いという印象があります。
2. 各インタビュープラットフォームの特徴
2-1. pivo
- 無料ですべての機能が使える
- 自社サービスの登録ユーザーに向けてインタビューを行うことができる
- 募集条件や事前アンケートの内容を、コンサルタントに相談できるので経験がなくても安心
- 事前アンケートの自由度が高く、マッチング精度が高い
当社が提供しているツールです。
すべての機能が無料で利用可能であるにも関わらず、日程調整やオンライン会議ルームの準備など、インタビュー周りの面倒事をほとんどpivoが代わって行ってくれます。利用者は、自社が持つ登録ユーザーやメルマガ会員に向けて招待を配布した後、対象者と日程候補を挙げれば、あとはインタビュー当日を待つだけです。
また、事前アンケートの自由度が高いため、より狙ったターゲットを捕まえやすいのも特徴です。インタビューに不慣れな方のために、コンサルタントと事前アンケートの内容や募集条件を相談できるセッションも用意されていますので、インタビューのベテランから初心者まで、幅広く利用いただけます。
※2023年5月18日時点の情報です。最新情報は各社サイトにてご確認ください。
2-2. Zerone

※2023年5月現在、サービスは提供されていません
オープンなサイト上での募集/応募なので、他に比べてハードルが低く見える自社サービスの登録ユーザーに向けてインタビューを行うことができる基本セルフなツールなので、自社の都合に合わせて利用しやすい3件のプロジェクトまでは無料
Gmailアカウントなどを使ってスグに登録できるうえ、インタビューに至るまでのほぼ全てのプロセスがツール上で完結しており、募集のハードルがとても低い印象です。また、募集案件はサイト上に一覧で公開されているため、定性インタビュー特有の特別感や招待感が無く、気軽に登録/参加しやすい雰囲気があります。
印象としてはインタビュープラットフォームというより、マッチングツールと言う方が、近いかもしれませんが、謝礼の受け渡しの代行や、事前条件の指定もある程度細かくできる点は、定性インタビュー用のツールとして十分利用可能です。また、pivoと同じように、自社ユーザーに招待を配布し、インタビューへの参加を促すことができますし、ZERONEが持つユーザーパネルに向けて募集を公開することも可能なので、多様な用途で利用できそうです。
2-3. torima.in

- 最短当日でインタビュー可能
- 他サービスと比べて低コストでユーザーインタビューを実施できる
- 募集側/モニター側それぞれに評価制度がある
とにかく低コストで気軽にインタビューしたい場合で、自分たちでパネルやユーザーを持っていないチームにとって利用しやすいツールという印象です。コストが低い分、モニターとの日程調整や当日のオンライン会議ツールの準備は自前で行う必要があります。
また、募集側/モニター側双方に、評価を行うことができるのも特徴です。ルールやマナーを守らない募集主や、遅刻の多いモニターなどが判別でき、応募時や対象者の選定時の参考になって便利です。torima.inはセルフで運用するようなツールですので、こういったレーティング制度はツールの活性を維持する点でも、非常に有効な機能だと思います。
※2023年5月18日時点の情報です。最新情報は各社サイトにてご確認ください。
2-4. uniiリサーチ

- 最短当日でインタビュー可能
- 募集後はマッチングを待つだけ、マッチング後は日程候補を挙げて待つだけ
- しっかりした管理画面と充実したFAQ
募集の登録を完了したらマッチングするのを待ち、マッチした中からインタビューしたい対象者と日程候補を挙げて待つという流れです。募集の登録は、管理画面上から専用のフォームに従って入力して行うことができます。謝礼は、設定した額の70%がモニターに渡るようになっているため、集めにくいセグメントを募集するような場合には、モニターに表示される額が低くなりすぎないように注意が必要そうです。
しっかりした管理画面や充実したFAQが用意されており、安心して利用できそうな印象です。公式サイトには、1案件あたりの平均のモニター出現数や、募集からの最短インタビュー開始時間も掲載されており、検討段階の利用者にとって好印象です。
※2023年5月18日時点の情報です。最新情報は各社サイトにてご確認ください。
2-5. Lupe

- モニター数約2,541万人からリクルーティング可能
- インタビューに関わる多くの作業を代行
- モニターに直接、事前説明などを行ってくれるので安心
- インタビューに不慣れな場合は、随所でサポートを行ってもらえるオプションも
唯一、モニターパネルの母数が公開されており、とても多くのモニター数を保持されています。この母数に対して、回収サンプル5,000名(小規模調査は1,000名)、最大13問の事前質問が可能なので、狙ったモニターの人数を確保しやすそうです。
また、モニターに対してインタビュー前に事前説明を行ってもらえるなど、インタビューがスムーズに実施できる環境の準備部分が他のツールに比べて手厚い印象です。別オプションとはなりますが、事前アンケートの設計/対象者の選定/インタビューの実施 についてもLupeに依頼することもでき、インタビューに不慣れなチームでもスムーズに導入できるようにもなっている点も特徴的です。
※2023年5月18日時点の情報です。最新情報は各社サイトにてご確認ください。
3. まとめ:インタビュープラットフォームでUXリサーチを加速しよう!
今回は事業開発におけるUXリサーチに有用な、インタビュープラットフォームについて比較しました。インタビュープラットフォームは、インタビューにかかる手間を大幅に削減してくれるツールです。これまで時間やコストがかかるからと諦めていた定性リサーチも、インタビュープラットフォームを利用することでもっと手軽に実施いただけるようになれば、それによって、よりユーザーの声を取り入れたプロダクトづくりが、身近な活動になっていけばと思っています。
それぞれのツールの特徴を踏まえた上で、新規事業の企画/既存事業の改善に、是非インタビュープラットフォームの導入を検討してみてください。
インタビューをもっと行いたいけど、時間や予算を踏まえるとなかなか実施できなくて困っているという、事業企画担当者やデザイン現場の方は、ご相談に乗りますので、ぜひお問い合わせください。