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新規事業アイデアを検証しよう!事業開発チームのためのユーザーインタビュー入門

スタートアップ110社の失敗理由を調査したCBINSIGHTSによるレポートの最新版(The Top 12 Reasons Startups Fail(CBINSIGHTS))が先日公開されました。これによると、1位は Run out of cash(資金ショート)で、前回まで1位だった No market need(誰もほしがらなかった)は僅差で2位に落ちましたが、依然として上位に入っています。

このデータを示すまでもなく、新規事業を成功させるうえで「人がほしがる良い事業アイデアを見つけることが重要だ」ということに疑問の余地はないでしょう。では、どうすればあなたの手持ちのアイデアの良し悪しを見極めることができるのでしょうか?

本日は、事業アイデアの良し悪しを見抜き、正しく磨き込むためにはどうすれば良いのか、というあなたの悩みを解決すべく、新規事業におけるアイデア検証のための『ユーザーインタビュー』についてご紹介します。

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目次

1. 新規事業開発におけるアイデア検証の基本

新規事業と言うと、どうやって良いアイデアを発想するかに意識が向きがちですが、実際にはアイデアの発想よりも検証をしている期間の方がずっと長くなります。どう思いつくかよりも、どう育てるか。アイデア検証の技術を磨くことは、新規事業成功の近道です。

一般的にインタビューとは、「対象となる領域にいる生活者との対話を通じて、その人の考え方や行動を理解する」手法を指します。新規事業においては、1)アイデアの種となる仮説を生み出すため、2)アイデアを検証・改善するためという2つの目的で使われますが、本記事では、後者のインタビューを取り扱います。

1-1. アイデア検証のためのユーザーインタビューとは

アイデア検証のためのユーザーインタビュー(顧客インタビューやソリューションインタビューとも呼ばれます)とは、「ターゲットとなる一般の生活者に、対象となるアイデアを何らかの形で見せて、フィードバックをもらう」定性調査手法の一種です。ターゲットとの対話を通じて、「アイデアをほしいと思ってもらえるか」を検証し、もし何か足りないのだとすれば「何をどう変えれば良いのか」を学びます。

アイデア検証のためのユーザーインタビューとは
  • ターゲットとなる一般の生活者に協力してもらう
  • 対象となるアイデアを何らかの形で見せて、フィードバックをもらう
  • ほしいと思ってもらえるか、何をどう変えれば良いのかを学ぶために行われる

アイデア検証自体は、事業をやっている限り継続して行う終わりのない活動ですが、本記事では、プロダクト開発に入る一歩手前の事業開発フェーズまでを取り扱います。

1-2. どのタイミングでアイデアを検証するのか

事業アイデアが出てきたら、できるだけ早く検証をスタートします。新規事業における最大の損失は「芽の出ないアイデアを育て続けてしまうこと」です。検証のタイミングが遅くなればなるほど、手戻りを生むリスクが大きくなってしまいます。

では、どれくらい早ければ良いのでしょうか?よく(開発が必要なレベルの)プロトタイプを作ってから検証しようとしている事業開発チームを見かけますが、一般的に言ってそれでは遅すぎると考えておいた方が良いでしょう。やり方を工夫すれば、プロトタイプを作る前であっても、アイデアに対する具体的なフィードバックを得ることが可能です。ぜひ、本記事を最後まで読んでみてください。

1-3. ユーザーインタビューによるアイデア検証の例

以下は、私が何らかの形で関わったプロジェクトで実際に行ったアイデア検証の実例です。デジタルプロダクトとして完結する事業アイデアの場合は、最初のユーザーインタビューからプロトタイプを持ち込むこともありますが、それ以外は、後述するストーリーボードを使ったアイデア検証から始めることが多くなっています。

例1:新しい保険サービスのアイデア検証(BtoC)

「保険に入ったのは良いが内容を覚えていられず、知らない間に請求漏れが発生している」という課題を解決する、あるアイデアを検証するために、現在保険に加入している生活者を対象にストーリーボードを見てもらうユーザーインタビューを実施しました。

例2:新しいレンタカーサービスのアイデア検証(BtoC)

「旅の中日に、ホテルから店舗までレンタカーを借りに行くのが大変だ」という課題を解決する、あるアイデアを検証するために、レンタカー利用経験者を対象にストーリーボードを見てもらうユーザーインタビューを実施しました。

例3:新しいオンライン営業ツールのアイデア検証(BtoB)

「(コロナ禍が起こる前)対面での営業に人をさくのが難しいが、オンラインでの営業には抵抗がある」という課題を解決するオンライン営業ツールを検証するために、営業職の方を対象にペーパープロトタイプを使ってもらうユーザーインタビューを実施しました。

事業開発のフェーズが進むと、MVP(価値を感じることができる最小限のプロダクト)を使ったアイデア検証に移っていきます。

2. なぜ、事業アイデアを検証するのか

新規事業プロジェクトが始まって、あなたのチームは運良く何かしらのアイデアにたどり着いたとします。まずまず筋の良いアイデアだと思っているけれど、現時点では机上のアイデアに過ぎないので、さすがにこれがベストだと言い切る自信はない…このようなフェーズの事業開発チームは、以下3つのいずれかの状況に当てはまります。

  • 状況1)アイデアが間違っているが、そのことに気づけていない
  • 状況2)正しい方向に進みつつあるが、ターゲットが理解できていない
  • 状況3)正しいアイデアを持っているのに、確信が持てない/説得できない

アイデア検証のためのユーザーインタビューは、まず自分たちがどの状況に当てはまっているのかを正しく認識したうえで、それぞれ異なる出口に向かうために行われます。

事業開発チームの状況によって変わるアイデアの検証目的

2-1. 状況1の検証目的:早く正しくピボットするため

実はアイデアが間違っている、つまり商品化しても売れないアイデアなのに、そのことに気づけていないという状況です。「わりと筋は良いんじゃないか」「結局は売ってみないとわからないよね」「プロトタイプを作ったら何か見えるはず」など楽観的に構えていて、自らの意思で間違いに気づくことは容易ではありません。

この状況にある事業開発チームの出口は、アイデアの良し悪しを見抜き、早く正しくピボットすることです。ここの判断が遅れるほど手戻りが大きくなり、時間的・予算的に2発目の弾を撃つことが難しくなってしまいます。

2-2. 状況2の検証目的:早く正しく磨き込むため

アイデアの方向性は正しいものの、そのアイデアが肯定/否定される理由の理解が浅く、結果として誰がターゲットなのかよくわからないという状況です。そもそも「ターゲットをどこまで理解すれば良いのか」「アイデアをどこまで磨けば良いのか」が不明確なまま進めているので、あやふやなまま通過しがちですが、状況3で行き詰まります。

この状況にある事業開発チームの出口は、ターゲットの理解とアイデアの改良を高速に反復し、誰に何がどうして売れるのかを明確に語れるようになることです。ここをしっかり回せれば、失敗のリスクはかなり下がると言って良いでしょう。

2-3. 状況3の検証目的:早く正しく投資判断するため

事業開発チームはアイデアに自信を持っているのに、経営層に開発予算等を承認してもらえないという状況です。新規事業では、少数の質的根拠をもとに洞察力をきかせて意思決定していくことが求められますが、そのような意思決定ロジックを持っていない会社も多く、既存事業の意思決定ロジックにあわせるために売上予測や事業計画書を求められて困ったという経験をされた方もいるでしょう。

この状況にある事業開発チームのやるべきことは状況2と同じですが、それに加えて、次のフェーズで何がどこまで明らかになるのか(=判断基準)を示し、それを段階的にクリアして証明していくこと(=判断材料)の両方が求められます。

3. 新規事業におけるアイデア検証が難しい理由

アイデア検証の進め方に入る前に、なぜ新規事業におけるアイデア検証は難しいと言われているのか、考察しておきます。

3-1. 事業開発の初期ほど情報が少なく、漠然としているから

アイデア検証がスタートする事業開発の初期フェーズは、手元の情報がほぼゼロの状態から始まります。また、検証したいアイデア自体も漠然としていて、手にとれるプロダクトがあるわけでもないため、あなたが考えているアイデアをきちんと相手に伝えることも簡単ではありません。すると、ありがちな失敗として、

具体的なイメージがわかず、人によって解釈がぶれる
→ 聞き手と話し手が別のことをイメージして話をしていることにお互い気づかない
→ 何となく良い、悪いという印象論になりがち
→ 話を深ぼることができず、アイデアの何が悪いのか特定できない

となり、正しく学ぶことができません。このように情報が十分に揃わない中で、重要な判断をしていかなければならない期間が、事業開発の初期に続きます。

事業開発の初期ほど予測難易度が高い

3-2. 前提としての問いが間違っていることに気づかないから

アイデアは、課題、価値、解決策の3要素の組み合わせ(下図)から成ります。このうち特に重要なのは、解決策(=How)の前提となる、課題/価値(=Before/After)の組み合わせで、私はこれを「解くべき問い」と呼んでいます。この問いが間違っていると、どんな斬新な解決策を考えたとしても「人がほしがるもの」にはなりません。

アイデアを検証するときには、このことをよく理解したうえで、アイデアが肯定/否定される理由が、問いにあるのか、答えにあるのかを特定しなければ、正しく修正したり、改善したりすることができません。

アイデアは、課題、価値、解決策の3要素の組み合わせ

3-3. アイデアを否定する声を無意識に受け付けなくなるから

ターゲットとの対話を通して、アイデアの良し悪しを公平に判断することは簡単ではありません。人間の特性である認知バイアスからは誰も逃れることができないからです。そして、あくまでも私の経験的にですが、皮肉なことに優秀なチームであればあるほど、以下のような傾向が強くなるように見受けられます。

  • 無意識のうちに自分たちにとって都合の良い意見だけを拾ってしまう
    (例:否定意見を「理解力のない人たちの取るに足らない意見」として切り捨てる)
  • 質問をしているつもりが、いつの間にか ”売り込み” や “説得” になっている
    (例:ターゲットの誤った認識を「実はそうじゃないんですよ」と正してしまう)

結果的に、正しく学ぶ機会を失い、先入観だけが強まっていく負のスパイラルに落ちていきます。こうなったチームは聞く耳を持たなくなってしまうため、軌道修正することが非常に困難になります。アイデアは、捨てるときが一番難しいと言われる所以です。

4. 新規事業におけるアイデア検証のポイント

前章で挙げた新規事業におけるアイデア検証が難しい理由を裏返すことによって、ポイントが見えてきます。ここで整理しておきましょう。

  1. アイデアが出てきたら、すぐに検証をスタートする
    (手戻りのリスクを避ける)
  2. アイデアを可視化し、具体的なフィードバックを得られるように
    (事業開発の初期における情報不足を補う)
  3. アイデアの3要素を捉え、問いが悪いのか、答えが悪いのかを明確に
    (解くべき問いの誤りに気づく)
  4. アイデアの評価は気にせず、肯定/否定の違いを理解するように
    (認知バイアスを避ける)
  5. アイデアは説明するのではなく、体験してもらう
    (売り込みや説得を避ける)

これらのうち、2、3、5は、私が普段から各所でおすすめしているアイデア発想&検証フレームワークである「ストーリーボード」ですっきりと解決することができます。ストーリーボードについては、以下で詳細に解説していますので、参考にしてください。

5. アイデア検証のためのユーザーインタビューの実践

さて、いよいよユーザーインタビューの進め方に入ります。実際は、事業開発のフェーズやアイデアの中身によっても進め方が変わりますが、ここでは、アイデア検証の始めから使える汎用的な方法について、ポイントを解説していきます。

より具体的に、ステップ・バイ・ステップで整理した資料も作成しましたので、必要な方は下記よりダウンロードしてください。

5-1. アイデアを可視化する方法を選ぶ

アイデアが漠然としているフェーズであってもできるだけ具体的なフィードバックを得るには、アイデアを何らかの形で可視化して、ターゲットに体験してもらえるようにすることがポイントになります。それには、売り込みや説得を避けられるというメリットもあります。

アイデアを可視化する方法は複数あり、用途やフェーズによって使い分けることになりますが、本記事では、アイデア検証の始めから使え、最も手軽に扱える「ストーリーボード」を使ったユーザーインタビューを取り扱います。

  • アイデアとして受け入れてもらえるのか(疑似体験型)
    → ストーリーボード、チラシ、LP、デモ動画、クラウドファンディングなど
  • お金を払うほどの価値を感じてもらえるのか(実体験型)
    → MVP(価値を感じることができる最小限のプロダクト)

5-2. アイデアを可視化する

ストーリーボードは、あなたの事業アイデアが実現したときに、製品・サービスを通してユーザーがどのような体験をするのかを、一つのストーリーとして描写したものです。

ストーリーボードの構成

私がおすすめする4コマ漫画形式のストーリーボードでは、課題、価値、解決策のアイデア3要素を、以下ようにコマに割り当てます。(3-2章でご紹介した「解くべき問い」は、①コマ目と④コマ目の組み合わせとして表現されます)

  • ①コマ目:何が問題で(課題)
  • ②〜③コマ目:それをどうやって解決して(解決策)
  • ④コマ目:結果、どうなった(価値)

ストーリーボードの詳しい作り方は、下記を参考にしてください。なお、イラストが描けない方は、いらすとや などをうまく活用すると良いでしょう。

5-3. 誰に話を聞けば良いのか

アイデア検証のためのユーザーインタビューで話を聞くべき相手は、ターゲットすなわちあなたがその事業アイデアによって解決しようとしている課題を抱えている人です。

アイデア検証を始めたばかりの頃は、例えば「クレジットカードのポイントを上手にためたい」「店舗までレンタカーを借りに行くのが面倒だ」くらいのざっくりとした課題に共感してくれる人と話をすることになるでしょう。そして、事業開発のフェーズが進むにつれて条件が具体化していき、最終的には、その課題の解決を切望している人=コアターゲットを探し当てることになります。

  • 検証を始めたばかり:解決しようとしている課題を抱えている人
    (例:「クレジットカードのポイントを上手にためたい」という課題に共感する人)
  • 検証が進んでいくと:その課題の解決を切望している人
    (最初はどのような人たちなのかわからない)

逆に、事業開発のフェーズが進んでいるにも関わらず、コアターゲットの条件が言語化できていない場合は、ターゲットの理解が不十分である可能性が高いと言えます。

5-4. 何人に話を聞けば良いのか

狙っている市場の新規性や同質性、事業開発チームのインタビュースキルによっても大きく変わってきますが、ストーリーボードを使ったアイデア検証では「最低15人」を目安にしましょう。より一般的には、「ある人がどうして買ってくれるのか、または買ってくれないのかの境界線を明らかにすることによって、この事業アイデアに時間とお金を投資しても大丈夫だという確信が得られるまで何人でも」という言い方になります。

私の経験的に、対話する人数によって、見える景色が以下のように変わっていきます。

  • 5人:アイデアに問題があれば、5人でも再現性のある否定理由が見つかることが多い
  • 10人:筋が良い場合、10人中1〜2人には熱い反応をもらえることが多い
  • 15人:筋が良い場合、このあたりで肯定理由にパターンが見える

もちろん、15人に聞けばそれで十分ということはなく、新しい学びがなくなるまで、ターゲットとの対話は続けていくべきです。また、ストーリーボードからMVPによる検証に進んだ場合は、検証したい内容が変わるはずなので、それに応じた人数を選んでください。

5-5. どうやって人を集めるのか

アイデア検証の進み具合によって、人の集め方も変わります。

アイデア検証を始めたばかりの頃は、ターゲットがはっきりしないまま手探りで進む状況が続きます。この段階で必要なのは、ざっくりとした課題に共感してくれる人に次々と会って、探りを入れていくことです。マッチングの精度が良いに越したことはありませんが、それよりも「早く、手軽に会える」ことの方が重要です。

  • 検証を始めたばかり:早く、手軽に会えることを重視
    → BtoC:知り合いの紹介、SNSでの募集、スキルマーケットでの募集…
    → BtoB:営業の紹介、セミナー、ビジネスマッチングアプリ…

弊社にて、上記のいずれにも該当しないBtoC向けの募集ツールを無料で提供しています。ご興味がある方は、以下のサービスサイトをご覧ください。

参考:pivo(ピボ)

アイデア検証が進んでいき、対話したいターゲットの条件が具体化するにつれて、該当する人になかなか会えなくなってきます。この段階で必要なのは、特定の条件を兼ね備えた人にピンポイントで会って、理解を深めていくことです。検証を始めたばかりの頃とは違って、「マッチングの精度」が重要になってきます。

  • 検証が進んでいくと:マッチングの精度を重視
    → 共通:これまでに会った人の中から、LPでの募集、リクルーティング会社に依頼…

5-6. 何を聞くのか

ストーリーボードを使ってアイデア検証をする場合、ユーザーインタビューの質問は非常にシンプルになります。3-2章でご紹介したアイデアの3要素ごとに、確認していきます。

1)本当にそれに悩んでいるのか(課題の確認)

ストーリーボード1コマ目

ストーリーボードの①コマ目を見せて、課題への共感を確認します。課題の有無だけでなく、それをどれくらい深刻な問題と捉えているか、どうして簡単には解決できないのか、をあわせて確認すると良いでしょう。

  • Q. 直近でこのシーンと同じような経験をしたことがありますか?
  • Q. この問題を解決するためにどんなことをしましたか?

これらは課題の検証と言うよりは、プロファイリングのために行う質問です。どのような課題があるのかを探索するインタビュー(課題インタビューとも呼ばれます)は、アイデア発想の前に済ませることが多いので、本記事では取り扱いません。

2)本当にそのような未来を切望するのか(価値の検証)

ストーリーボード4コマ目

ストーリーボードの④コマ目を見せて、価値を検証します。どれくらい価値を感じるかという絶対評価は難しいので、何が変化することに喜びを感じるのか(Before/Afterの比較)、2案ある場合はどちらにより喜びを感じるのか(A案/B案の比較)など、相対評価として確認すると良いでしょう。

  • Q. こういう体験ができたとして、どこが嬉しいですか?
  • Q.(2案ある場合)どちらがより嬉しいですか?

3)本当にその悩みを解決できるのか(解決策の検証)

ストーリーボード全体

ストーリーボードの全体を見せて、解決策を検証します。その解決策があれば、④コマ目に描かれた未来が起きそうだと思えるか、自分でもそれを使いこなせそうかという観点で、あえて突っ込んでもらうと良いでしょう。

  • Q. 上手く出来すぎなところ、無理があると思うところは?
  • Q. このサービスを使いたいですか?

最後に総合的な評価を聞きます。アイデア検証を始めたばかりの頃は特に、使いたい/使いたくないのどちらの回答であっても気にする必要はありません。それよりも、アイデアが肯定/否定される理由を探って、学びを得ることを重視してください。

5-7. 何をどこまで学べば良いのか

アイデア検証のためのユーザーインタビューにおいて、事業開発チームの経験が少ないうちは、十分に学べたかどうかを判別するのは簡単ではないかもしれませんが、正しく学べると以下のようなことを実感できますので、参考にしてみてください。

1人のターゲットから正しく学べたとき

その人がアイデアに肯定的だった場合は「なぜ、このアイデアでなければならないのか」、否定的だった場合は「なぜ、このアイデアではダメなのか」という理由が、アイデアの3要素である課題、価値、解決策のどこにあるかを特定できています。そして、そういう考え方になる文脈を、本人の具体的なエピソードとともに語れるようになります。

  • アイデアの肯定/否定理由が、課題、価値、解決策のどこにあるのか特定できている
  • そういう考え方になる文脈を、具体的なエピソードとともに語れる

全体として正しく学べたとき

複数人のターゲットからの学びが重なることによって、アイデアを肯定/否定する理由と、それを生み出す文脈のパターンや構造が見えてきます。これにより、誰に何がどうして売れるのかを明確に語れるようになります。

  • アイデアの肯定/否定理由と、それを生み出す文脈のパターンや構造が見える
  • 誰に何がどうして売れるのかを明確に語れる

こうなれば、次のフェーズに進んで良いと、自信を持って言えるようになるでしょう。

本記事と一緒に使うのがオススメ

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6. 新規事業のアイデア検証に関するFAQ

新規事業のアイデア検証やユーザーインタビューに関してよくあるご質問にお答えします。

6-1. アイデア検証はいつ始めて、いつ終えるものですか?

芽の出ないアイデアを育て続けてしまうことを避けるためにも、事業アイデアが出てきたら、できるだけ早く検証をスタートすると良いでしょう。本記事でもご紹介したストーリーボードを使ったユーザーインタビューであれば、プロトタイプの開発を待つことなく、今すぐに学び始めることができるでしょう。

一方、アイデア検証自体に終わりはありません。事業開発の初期フェーズは、本記事でもご紹介したようなアイデアの「コンセプト」に関わる検証を行います。そして、事業開発のフェーズが進むにつれて、アイデアを具体化した「機能・コンテンツ」や「デザイン」の検証の厚みが増していくことになるでしょう。

6-2. 新規事業のアイデア検証は誰が担当するべきですか?

事業開発の初期フェーズは、担当を決めずにチーム全員で取り組むことをおすすめします。事業の立ち上げにあたって、ターゲットを理解していなくても良いメンバーは一人もいないはずですし、何より『自分たちが幸せにすべき顧客』に会って話をすることは、新規事業の意義を自分ごと化するのに役立つはずです。

一方、事業開発のフェーズが進んで関与する人が増えてくると、全員参加が現実的ではなくなってきます。その場合は、事業や施策の方向性を決めるコアメンバーを中心にします。正解のない難しい判断を求められるメンバーにとって、ターゲットとの対話は意思決定の重要なよりどころになってくれるでしょう。

6-3. ユーザーインタビューに呼ぶ相手が見つからない…

事業開発チームはプロダクトを作るだけでなく、ターゲットに会える仕組みも同時に構築しなければなりません。5-4章で、ストーリーボードを使ったユーザーインタビューの人数は15人が目安と書きましたが、これは多少なりとも課題に共感してくれた15人であって、この人たちに出会うためにはより多くの母数が必要になります。

人のつてをたどる紹介はよく機能しますが、すぐに枯渇します。テクノロジーを活用した方法として、BtoCであればSNS、BtoBならオンラインセミナーを経由した募集は、量も確保しやすく、私の経験的にかなり使える印象です。弊社でもBtoC向けの募集ツールを無料で提供していますので、ご興味がある方は、以下のサービスサイトをご覧ください。

参考:pivo

6-4. どうすれば、売り込みや誘導を避けられますか?

ユーザーインタビューの大半は「聞く」ことですが、こちらから「話す」ときに意図しない情報が伝わってしまうことがあるので注意が必要です。例えば、

一般に、公立の学校では○○○していると考えられがちですが、
私たちの調べでは実に8割が◇◇◇でして…

このように、アイデアの説明がプレゼンになっているケース。特に、話が上手い方が司会をされているときに見られる傾向です。結果として、相手の考えを誘導してしまったり、自分の意見を言いづらいといった空気を生んだりしてしまいます。

これを避けるには、アイデアをこちらから説明するのではなく、書いてあるものを読んでもらう(一緒に読み合わせる)か、手渡して体験してもらうようにすると良いでしょう。この点で、ストーリーボードはとても上手く機能するはずです。

6-5. 出てきた少数意見をどう取り扱えば良いですか?

少数かどうかはあまり気にしません。ユーザーインタビューは定性調査ですので、それを何人が言ったかではなく、その発言に再現性がありそうかを見抜かなければなりません。例えば、以下のような発言があったとして、

中学受験をさせようと思っていないからこれは要らない
 否定理由(A)             評価(B)

このとき、もし以下2つが成り立つのであれば、再現性のある理由で否定されたと結論づけることができます。

  • 否定理由と評価の間に再現性のあるロジックが存在するか(Aならば常にB)
  • 否定理由そのものに再現性があるか(Aと考える人は多い)

蛇足ですが、再現性の吟味をすることなく、「10人中7人が『ほしい』と答えたので、アイデアの有用性が証明されました」などと結論づけるのは、正しい意思決定を阻害することになるので(あなたが経営陣の目を欺こうと思っているのでなければ…)やめましょう。

7. まとめ:対話を通して “早く賢く” 学ぼう

事業アイデアの良し悪しは、アンケートのようにわかりやすい数字になって現れてくれるわけではありません。ユーザーインタビューを通したターゲットに対する深い理解をもとに、洞察する力が求められます。

より詳しく学びたい方のために、顧客インタビューについての無料セミナーも毎月開催しています。気になる方はぜひご参加ください!

自信を持ってアイデア検証を進められるようになりたいと思った方はご相談に乗りますので、お問い合わせください。

この記事を書いた人

喜多 竜二

えそら合同会社 代表社員/HCD-Net認定人間中心設計専門家

2009年にUXデザインコンサルティングを専門とする「えそら合同会社」を設立、これまでに新規事業をはじめとする100を超える事業を支援してきた。自身は行動観察をはじめとするエスノグラフィを専門とし、生活者に対する共感を出発点としたユニークなアイデア発想の場づくりや、UXデザインの組織導入に力を入れている。東京大学工学部卒業、シドニー工科大学大学院修了。

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