
【必携】新規事業開発に役立つ7つのフレームワークを厳選してご紹介(テンプレート付き)
今日から使える!新規事業立ち上げフレームワーク集
新規事業開発のスタートで迷わないために、わたしたちが普段から利用しているフレームワークを厳選してご紹介しています。新規事業開発をより効率的に進めるため、ぜひご活用ください。
新規事業を立ち上げたり、既存ビジネスを見直したりする際、多くの企業が直面するのが「事業モデルをどのように設計するか」という課題です。関係者の意見が食い違ったり、全体像が不明確なためにプロジェクトが停滞することも少なくありません。こうした課題を解決するための強力なツールが、「ビジネスモデルキャンバス」です。
ビジネスモデルキャンバスは、事業全体を視覚的に整理し、顧客価値や収益構造を明確にするフレームワークです。その汎用性の高さから、スタートアップから大企業まで幅広く活用されています。本記事では、ビジネスモデルキャンバスの基本から構成要素、活用事例、そして具体的な作成手順までを丁寧に解説します。この記事を通じて、事業の成功に向けた確かな知識を手に入れましょう。
目次
ビジネスモデルキャンバスとは?
ビジネスモデルキャンバスは、新規事業の設計や既存ビジネスの改善を行う際に欠かせないフレームワークです。事業全体を視覚的に整理し、チーム間での認識を共有するために用いられます。本章では、ビジネスモデルキャンバスの定義と、その誕生の背景について詳しく解説します。
ビジネスモデルキャンバスの定義
ビジネスモデルキャンバスとは、事業の構造を9つの要素に分解し、1枚の図にまとめることで全体像を視覚化するツールです。顧客セグメントや価値提案といった顧客視点の要素から、収益の流れやコスト構造といった財務的要素までを網羅しています。
このフレームワークは、次のような利点をもたらします。
- 事業全体の俯瞰: チーム全員が同じ視点を持つことができる。
- 課題発見の促進: ビジネスモデルの弱点を容易に特定できる。
- 迅速な意思決定: シンプルに全体を説明できるため、スピーディな判断が可能。
特に、新規事業の立ち上げや市場環境が不確実な場合に効果を発揮します。
起源と背景:どのように誕生したのか?

ビジネスモデルキャンバスは、スイスの経営学者アレックス・オスターワルダー博士が2004年の博士論文『ビジネスモデル・オントロジー』で提唱したフレームワークを基礎としています。この論文では、事業の全体像を視覚的かつ構造的に把握する手法が示されました。2010年には、これを基にした実践的なツール『ビジネスモデル・ジェネレーション』(日本語版は2012年)が出版され、現在のビジネスモデルキャンバスが確立されました。
ビジネスモデルキャンバスの目的とメリット
ビジネスモデルキャンバスは、単なる図表以上の役割を果たします。事業全体を視覚的に整理することで、チームや関係者が一丸となって認識を共有し、効果的な意思決定を行うためのツールです。この節では、ビジネスモデルキャンバスの目的と、それを活用することで得られる主なメリットについて解説します。
ビジネスモデルキャンバスの目的
ビジネスモデルキャンバスの主な目的は、事業の全体像を「一目で理解できる形にする」ことです。具体的には、次の3つの場面で大きな効果を発揮します。
- 新規事業の設計
新しい事業アイデアを具体化し、ターゲット顧客や収益構造など、ビジネスモデルの基盤を迅速に構築するために活用されます。 - 関係者間の認識共有
キャンバスを用いることで、事業全体を可視化し、チームメンバーや外部関係者との認識のずれを防ぎます。 - 事業の改善・再設計
既存事業を見直し、課題を特定し、必要な改善点を明確化するツールとしても有用です。
ビジネスモデルキャンバスを使うメリット
ビジネスモデルキャンバスの活用によって得られる具体的なメリットを以下に挙げます。
- ビジネスの全体像を把握できる
9つの要素を1枚の図に整理するため、複雑な事業モデルも俯瞰して理解できるようになります。 - 関係者間の認識を合わせる
共通のフレームワークを用いることで、チームや外部パートナー間での認識を統一し、意思決定を迅速化できます。 - 顧客ニーズに寄り添った戦略設計が可能
顧客セグメントや価値提案を明確にすることで、顧客ニーズに基づいた商品やサービスを提供する戦略を構築できます。 - 課題の特定と解決が容易になる
視覚的に整理されたキャンバスを見れば、どの要素に弱点があるのかが明確になり、効果的な改善策を立案できます。
これらのメリットを最大限に引き出すことで、ビジネスモデルキャンバスは単なる「整理ツール」を超えた、事業成功への戦略的な武器となります。
ビジネスモデルキャンバスの9つの構成要素
ビジネスモデルキャンバスは、事業を9つの要素に分解して整理するフレームワークです。これらの要素は、事業の全体像を把握し、各部分を効率よく設計・改善するために不可欠なものです。それぞれの要素について詳しく解説します。

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【1】顧客セグメント(CS: Customer Segments)
顧客セグメントは、事業がターゲットとする顧客層や市場を指します。どの顧客が価値を享受し、収益に貢献するかを明確にする必要があります。
具体的なポイント:
- 顧客層の特徴(年齢層、ライフスタイル、職業など)を整理。
- 売上の中心となるセグメントを特定。
【2】価値提案(VP: Value Propositions)
価値提案は、事業が顧客に提供する価値そのものを指します。顧客の課題を解決し、ニーズを満たす独自の特徴が含まれます。
具体的なポイント:
- 顧客の課題やニーズを明確にし、それに応えるソリューションを設計。
- 他社にはない独自の価値を特定。
【3】チャネル(CH: Channels)
チャネルは、事業が顧客に価値を届けるための手段です。製品やサービスが顧客に届くプロセスを整理します。
具体的なポイント:
- 販売経路や流通方法を特定。
- 物理的チャネル(店舗)またはデジタルチャネル(オンライン)を考慮。
【4】顧客との関係(CR: Customer Relationships)
顧客との関係は、顧客とどのようにコミュニケーションを図り、関係を維持するかを示します。顧客ロイヤルティを高める戦略が重要です。
具体的なポイント:
- 顧客サポートや継続利用の仕組みを設計。
- 自動化されたサービスか、個別対応かを選択。
【5】収益の流れ(RS: Revenue Streams)
収益の流れは、事業がどのように収益を得るかを示す要素です。
具体的なポイント:
- 主な収益モデル(サブスクリプション、単品販売など)を特定。
- 顧客ごとに異なる収益の流れを分析。
【6】主要リソース(KR: Key Resources)
主要リソースは、事業運営に必要な重要な資源や資産を指します。
具体的なポイント:
- 人的資源(人材)、物的資源(施設、設備)、知的資源(特許、ブランド)を整理。
- 競争優位性に寄与する資源を特定。
【7】主要活動(KA: Key Activities)
主要活動は、事業を運営するために必要な具体的な業務やプロセスを示します。
具体的なポイント:
- 製品開発やマーケティング活動を特定。
- 優先すべき業務に焦点を当てる。
【8】主要パートナー(KP: Key Partners)
主要パートナーは、事業成功に必要な外部の協力者や提携先を指します。
具体的なポイント:
- サプライヤーや提携企業を特定。
- パートナーとの関係を設計。
【9】コスト構造(CS: Cost Structure)
コスト構造は、事業運営にかかる主なコストや支出を明確にします。
具体的なポイント:
- 固定費と変動費を区分。
- 収益に大きな影響を与えるコスト要素を特定。
これら9つの要素が互いに連携することで、ビジネスモデル全体が完成します。次の章では、ビジネスモデルキャンバスの作り方とポイントについて詳しく見ていきます。
ビジネスモデルキャンバスの作り方とポイント
ビジネスモデルキャンバスは、9つの構成要素を1枚に整理するシンプルなツールですが、効果的に作成するためにはいくつかのポイントがあります。本章では、初心者でもスムーズに作成できる手順を解説するとともに、作成時のコツを紹介します。
作成手順(初心者向けステップ解説)
- キャンバスを用意する
オンラインツール(例: Miro、Lucidchart)や紙とペンを使ってキャンバスを準備します。9つの要素が記載できるテンプレートを利用すると便利です。 - 中央の「価値提案」から記入を始める
キャンバスの中心に位置する「価値提案」は事業の核となる部分です。
・「顧客が解決したい課題は何か?」
・「どのような価値を提供するか?」
これらを考慮しながら記入します。 - 顧客セグメントを明確にする
次に、「誰に価値を提供するのか?」を特定します。ターゲット顧客を具体的に描きましょう。 - チャネルと顧客との関係を整理する
価値を届ける手段(チャネル)と、顧客との関係構築方法を記入します。
例: ECサイトで販売し、カスタマーサポートを通じて関係を維持する。 - 収益の流れとコスト構造を記入する
・どのように収益を得るのか(収益の流れ)。
・事業運営に必要なコスト(コスト構造)。
数字を具体的に記載することで、モデルの現実性が高まります。 - 主要リソース、主要活動、主要パートナーを埋める
必要なリソースや活動、外部パートナーを記載します。
例: ソフトウェア開発にはエンジニア、マーケティングには広告代理店が必要。 - 全体を見直し、調整する
すべての要素が記入されたら、整合性を確認します。一部を修正する際には他の要素への影響も考慮してください。
効果的な作成ポイント
- 簡潔にまとめる
ビジネスモデルキャンバスは視覚的なツールであるため、シンプルさが重要です。一目で理解できる内容にするため、箇条書きや短いフレーズを活用します。 - 全ての要素を埋める
どの要素も欠かさず記入することが重要です。特に「収益の流れ」や「コスト構造」は後回しになりがちですが、これらはモデル全体を成立させる基盤です。 - 定期的に更新する
ビジネス環境や顧客ニーズは常に変化します。定期的な見直しと更新を行い、現状に適応することが必要です。 - チームで作成する
複数の視点を取り入れるために、チーム全員で意見を出し合いながら作成しましょう。これにより、抜け漏れを防ぎ、より現実的なモデルを構築できます。 - 実際のデータを基に記入する
仮説ではなく、可能な限り実際のデータを用いることで、精度の高いビジネスモデルが完成します。
ビジネスモデルキャンバスの活用方法とフレームワークとの併用
ビジネスモデルキャンバスは、単独で使用するだけでなく、他のフレームワークと組み合わせることでさらに効果を高めることができます。この節では、ビジネスモデルキャンバスの具体的な活用方法と、他のフレームワークとの併用について解説します。
活用方法:どのように使うか?
- 新規事業の立ち上げ
新しい事業のコンセプトを明確化し、必要な要素を整理するために使用します。仮説検証を繰り返しながら、より洗練されたビジネスモデルを構築できます。 - 既存事業の見直し
現在の事業モデルを視覚化することで、改善が必要な部分や潜在的な弱点を特定します。
例えば、「収益の流れ」に課題があれば、新たな収益源を検討するきっかけとなります。 - チーム間のコミュニケーション促進
チーム内で認識を揃えるためのツールとして活用します。キャンバスを基に議論を行うことで、共通のビジョンを持ちながら意思決定をスムーズに進められます。
フレームワークとの併用例
バリュープロポジションキャンバスとの併用
バリュープロポジションキャンバスは、ビジネスモデルキャンバスの「顧客セグメント」と「価値提案」の部分をさらに深掘りするフレームワークです。
具体的な使い方:
- 顧客が抱える課題や欲求を整理。
- 製品やサービスが提供する価値を明確化し、顧客ニーズに的確に応える戦略を設計。
アンゾフの成長マトリクスとの併用
アンゾフの成長マトリクスは、事業の成長戦略を「市場浸透」「新市場開拓」「製品開発」「事業多角化」に分類します。
具体的な使い方:
- 「価値提案」や「チャネル」の項目を検討する際に活用。
- 成長戦略を選択するための議論の基礎として使用。
その他のフレームワークとの併用
SWOT分析: 強み・弱みを明確にし、キャンバスの要素を補強。
PEST分析: 外部環境の変化を把握し、ビジネスモデルを調整。
活用のポイント
- 目的に応じた組み合わせを選ぶ
各フレームワークの強みと弱みを理解し、必要に応じてビジネスモデルキャンバスと組み合わせます。 - 継続的なアップデートを行う
併用フレームワークの結果をビジネスモデルキャンバスに反映させ、モデルを進化させます。
ビジネスモデルキャンバスの事例紹介

ビジネスモデルキャンバスがどのように活用されるのか、具体的な事例を見ることで理解が深まります。この節では、Netflix、Uber、Airbnbという3つの成功事例を取り上げ、それぞれのビジネスモデルをどのようにキャンバスで整理できるかを解説します。
Netflixの事例
Netflixは、動画ストリーミングサービスを提供し、エンターテインメント業界に革命を起こしました。その成功要因をビジネスモデルキャンバスで整理すると以下のようになります。
Netflixは顧客の利便性を追求し、従来のレンタルDVD業界を置き換える新たなエコシステムを構築しました。
Uberの事例
Uberは、ライドシェアリング市場を開拓し、移動手段の在り方を変えました。そのビジネスモデルをビジネスモデルキャンバスで整理すると以下のようになります。
Uberは、運送業界の固定概念を打ち破り、資産を保有せずに世界規模で移動手段を提供するユニークなモデルを確立しました。
Airbnbの事例
Airbnbは、個人の部屋や家を宿泊施設として提供するマーケットプレイスを作り上げ、宿泊業界に革新をもたらしました。
Airbnbは、「宿泊施設を持たない宿泊業者」として、新たな市場を作り出しました。
ビジネスモデルキャンバスの注意点と限界
ビジネスモデルキャンバスは強力なツールですが、万能ではありません。適切に活用しなければ、効果を最大限に発揮できない場合があります。この節では、ビジネスモデルキャンバスの使用時に注意すべき点や限界、そしてそれらを克服する方法について解説します。
「使えない」と言われる理由とその対策
以下は、ビジネスモデルキャンバスが「使えない」と批判される主な理由と、それに対する対策です。
- 具体性に欠ける
ビジネスモデルキャンバスは全体を大枠で整理するツールであり、詳細な戦略や施策には踏み込むことができません。
対策: 他のフレームワーク(例: SWOT分析やバリュープロポジションキャンバス)を併用して具体性を補完する。 - 仮説に基づく内容が多い
初期段階では仮説に基づいた情報を記入するため、そのまま放置すると現実と乖離することがあります。
対策: 記入後に仮説検証を行い、実データを基に更新する習慣を確立する。
変化に対応しにくい
市場や顧客ニーズの変化に追随できないキャンバスが放置されるケースがあります。
対策: 定期的な見直しと更新を行い、状況に応じて内容を適応させる。
ビジネスモデルキャンバスとリーンキャンバスの違い
ビジネスモデルキャンバスは、新規事業から既存事業まで幅広く活用されるフレームワークです。一方で、スタートアップや早期段階のビジネスモデル設計に特化した「リーンキャンバス」としばしば比較されます。本章では、リーンキャンバスの概要と両者の違い、そして適切な使い分け方について解説します。
リーンキャンバスとは?
リーンキャンバスは、起業家アッシュ・マウリャ氏が2010年に考案した、ビジネスモデルを一枚の図で可視化するフレームワークです。このツールは、スタートアップの迅速な仮説検証と事業モデルの構築を支援するために開発されました。マウリャ氏の書籍『Running Lean』で詳細が説明されており、その起源は、エリック・リース氏が提唱したリーンスタートアップ(2008年発表)の思想に基づいています。さらに、リーンスタートアップの基盤となるトヨタ生産方式(TPS)の『無駄をなくす』概念からも影響を受けています。
主な特徴:
- 顧客の課題解決に特化: 顧客が抱える問題(課題)とその解決策を重視。
- シンプルで迅速: 限られた時間とリソースで仮説を検証。
- スタートアップ向け: 不確実性が高い環境で、ビジネスモデルの適合性を見極める。
ビジネスモデルキャンバスとの比較ポイント
以下の表は、両者の主な違いを整理したものです。
ビジネスモデルキャンバス | リーンキャンバス | |
主な対象 | 新規事業から既存事業まで幅広く対応 | スタートアップや初期段階の事業に特化 |
焦点 | 事業全体の構造(全体像) | 顧客の課題とその解決策 |
構成要素の違い | 価値提案、チャネル、顧客との関係など事業全体を網羅 | 課題、解決策、重要指標などスタートアップに特化 |
適用シーン | ビジネスモデル全体を俯瞰する場面 | アイデア検証や仮説テストの場面 |
どちらを使うべきか?適切な選び方
ビジネスモデルキャンバスは、企業活動全体を視覚化し、長期的な戦略だけでなく、短期的な改善や新規事業の設計にも活用できます。一方、リーンキャンバスは顧客の課題とその解決策に焦点を当てており、『圧倒的な優位性』など、スタートアップ特有の視点を取り入れた構成になっています。
ビジネスモデルキャンバスが向いているケース:
- 新規事業の設計や既存事業の見直し。
- 関係者と全体像を共有し、戦略を議論する必要がある場合。
- ビジネスの構造を俯瞰して整理する場面。
リーンキャンバスが向いているケース:
- 不確実性の高い環境での仮説検証。
- 顧客の課題解決を迅速に検討する必要がある場合。
- MVP(実用最小限の製品)の開発プロセス。
まとめ:ビジネスモデルキャンバスを活用して事業を成功に導くために
ビジネスモデルキャンバスは、事業全体をシンプルかつ視覚的に整理するための強力なフレームワークです。本記事では、基本的な構成要素から具体的な作成手順、活用方法、そして注意点までを解説しました。このツールを効果的に活用することで、事業の成功確率を高めることが可能です。
本記事で学んだ内容を活用し、事業を次のステージに引き上げるための第一歩を踏み出してください!

【必携】新規事業開発に役立つ7つのフレームワークを厳選してご紹介(テンプレート付き)
今日から使える!新規事業立ち上げフレームワーク集
新規事業開発のスタートで迷わないために、わたしたちが普段から利用しているフレームワークを厳選してご紹介しています。新規事業開発をより効率的に進めるため、ぜひご活用ください。

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