今回は、アーティサン株式会社様のデザイン支援事例をご紹介します。
同社が運営する、バスの現在地や到着時刻を知らせる「バス予報」は、「あと何分で来るのか」「本当に来るのか」と不安を感じる場面で利用されるサービスです。だからこそ、利用者にとって必要な情報が直感的に伝わる体験が求められていました。
そこで弊社にご相談いただき、2023年から2025年にかけてユーザーテストを通じた課題整理とデザイン改善の方向性の可視化を行い、それに基づいたUIデザインのご支援を行いました。
本記事では、担当の数井様と大久保様に、今回の取り組みを通じて得られた気づきや成果についてお話を伺いました。
| クライアント情報/ご担当者様情報 | |
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目次
ご依頼前の課題と成果
<背景/課題>
「バス予報」は、バスの現在地や到着時刻を知らせるサービスとして運用されてきましたが、運用を続ける中で、UI/UXが洗練されておらず、画面全体に統一感がないという課題が明確になっていました。
利用者が「あと何分で来るのか」「本当に来るのか」と不安を感じる場面において、必要な情報を直感的に把握しづらく、特に初めて利用する方にとっては迷いやすい構造となっていました。こうした使いづらさは、利用体験の質に影響しサービス価値の低下が懸念されるため、感覚的な改善だけでなく、利用者視点の根拠をもとに、UI/UXを体系的に見直す必要性が高まっていました。
<パートナー選定理由>
UI/UXの見直しにあたり、自社の状況や規模感を踏まえ、柔軟に進め方を設計できるパートナーを求めていました。画一的な手法ではなく、対話を重ねながら最適な進め方を一緒に考えられる姿勢を重視していたことに加え、丁寧に向き合ってもらえる点も重要な判断基準でした。
えそら合同会社とは、複数回のやり取りを通じてコミュニケーションの相性や進め方への納得感を得られ、「一緒に進められそうだ」と感じられたことが決め手となり、プロジェクトパートナーとして選定いただきました。
<課題に対する成果>
ユーザーテストを通じて、これまで感覚的に捉えていたUI/UX上の課題を整理し、利用者が迷いやすいポイントや改善の優先度を明確にしました。その結果、トップ画面を中心とした導線設計の方向性が固まり、リニューアルに向けた判断を前に進めることができました。
また、第三者の視点によるフィードバックを社内で共有したことで、関係者間の共通認識が生まれ、改善方針に対する合意形成も円滑に進みました。利用者の不安を軽減する体験価値を、自治体やバス事業者に対しても具体的に伝えられる基盤が整い、自信をもって今後の改善を進められる基盤が構築されました。
プロジェクト概要
えそら合同会社 代表社員
喜多 竜二
えそら合同会社 デザイナー(人間中心設計専門家)
荒嶋 英幹

インタビュー
バス予報が描くミッションとサービスの全体像
– はじめに、お二人が普段どのような役割でバス予報に携わっていらっしゃるのか、ミッションや担当領域について教えてください。

数井様:当社のモビリティ事業である「バス予報」というサービスの営業責任者を務めています。営業を中心に、プロダクト改善やWebマーケティングなども横断的に担当しています。
大久保様:私は主に、数井のアシスタントとして、営業を中心に担当し、ご契約いただくお客様の契約手続きの窓口も担当しています。
– ありがとうございます。バス予報のサービスについて詳しく教えていただけますか。
数井様:バス予報は、バスロケーションシステム(以降「バスロケ」)としてバスの現在地を知らせるサービスです。
鉄道では「あと何分で来る」という情報が当たり前に表示されますが、バスの場合は都市部を除くと未整備な地域が多く、特に地方では駅前以外に案内がほとんどないケースもあります。そうした地域で、バス予報が「あと何分で来るのか」「何時ごろ到着するのか」という情報を利用者へ届けることで、バス利用を後押しする役割を果たしています。
バスの現在地を特定する位置情報の仕組みとしては、GPS端末などの機器をバスに搭載し、取得した位置情報をもとに運行状況を提供しています。この方式自体は他社でも用いられていますが、バスロケ専業の企業は決して多くありません。
その背景としては、バス業界全体が鉄道と比べて市場規模が比較的小さく、バスロケ市場はその中でも限定的な領域であることです。また、ダイヤ作成システムや音声案内システムなど、他のバス関連システムの一部としてバスロケを扱っている企業が多いのが実情です。
運行情報に慣れた方には分かりやすい一方で、初めての利用者には直感的に使いづらいケースも多いと感じる部分もあり、UI/UXの観点では、今後さらに改善の余地が残されている領域であると考えています。
だからこそ、バス予報では、より見やすく・より伝わりやすく・より使いやすいサービスとして、バスロケが持つ本来の価値を発揮できるようにしたいと思っています。
利用者の迷いから見えてきたUI改善の必要性
– サービスを運営する中で、UX面ではどのような点に課題を感じていましたか。
数井様:一番の課題は、UI/UX が洗練されておらず、全体として統一感がないことでした。
これまでサービスを運用する中で、UI/UXには改善の余地があると継続的に感じていたため、今回の改善で、そこに本格的に着手できたことは、とても嬉しく感じています。
– 今回の改善を通して、どのような利用者体験を目指していたのでしょうか。
数井様:利用者がストレスや不安を抱えることなく、すぐにバスの運行情報を把握できる体験を目指していました。
バスロケを開くのは多くの場合、「あと何分で来る?」「本当に来る?」と不安に思っているタイミングです。そうした時に画面が使いにくければ利用を断念してしまい、再利用の機会を損なう可能性もあります。
開いた瞬間に必要な情報がわかり、「何分後に来るのか」がすぐ理解できる。
その体験を利用者に提供できれば、次回以降も安心して使い続けてもらえると思っています。そうした利用者にとっての安心感や分かりやすさを実現したいと考えていました。
自社だけでは見えなかった改善の糸口
– 最初の接点は弊社のサービス紹介セミナーでした。その後ご相談に進まれましたが、当時はどのようなきっかけでセミナーに参加されたのでしょうか。
数井様:営業担当としてバスロケに携わっていく中で、長年UI/UX の改善は取り組みたいテーマの一つでした。
ただ、改善に取り組む前に、自分の感じている課題をより明確に整理し、主観だけで判断するのではなく、利用者視点での根拠をきちんと持ったうえで、どこに改善の余地があるのかを客観的に把握しておく必要があると考えていました。
そのため、まずは情報収集を目的に複数のセミナーを探し、その中の一つとしてえそらさんのサービス紹介セミナーに参加しました。
実際に話を聞く中で、社内で改善ポイントを整理するうえでも、専門家の視点から得られる知見が役に立つのではと感じました。「一度相談してみよう」と思ったのは、改善に向けた考え方をさらに深めるには、外部の知見を取り入れることが有効だと気づいたことが大きかったと思います。
‐ プロジェクトパートナーを選ぶ上で重視されていたポイントはどこでしたか。
数井様:こちらの状況や規模感に応じて、柔軟に向き合ってもらえるかという点を大切にしていました。
プロジェクトの進め方は企業によってスタイルが異なりますが、当社としては、対話しながら最適な進め方を一緒に考えていけるパートナーを求めていました。予算が折り合うことも大事ではありますが、丁寧に向き合ってくださる姿勢を重視していました。
‐ 最終的に、えそらを選んでいただいた決め手を教えてください。
数井様:何度かやり取りをする中で感じた「相性の良さ」が大きかったと思います。
UI/UXの領域は、基本的なプロセスや考え方には共通点も多いため、各社大きな差がつけづらいところはありましたが、コミュニケーションを重ねる中で最終的に「一緒に進められそうだ」と感じられたことが決め手になりました。

改善プロジェクトで見えてきた変化と手応え
えそら 喜多:もう2年以上前になりますが、2023年に最初のユーザーテストを実施させていただきました。御社ではおそらく初めての取り組みだったのではないかと思いますが、初めてユーザーテストをやってみて、率直にどのような感想を持たれましたか。
数井様:ユーザーテストに協力してくださった皆さんが率直にご意見をくださったことで、自分たちだけでは気づきにくい点も見えてきましたし、もともと感じていた課題についても改めて確認することができました。また、えそらさんから良い点・改善すべき点を整理していただけたのは、とても有意義な機会でした。
私は営業として日頃から外部のお客様と接していますが、開発チームはどうしても社内での業務が中心になるため、触れられる声の種類が異なります。その中で、えそらさんという外部の専門家からいただいたフィードバックは、社内で共通認識を持つうえでも大きな意味がありました。第三者の視点として示されたことで、より納得感を持って議論できたと感じています。
えそら 喜多:ありがとうございます。今回のユーザーテストの結果は、開発チームや運用チームの皆さんにもご覧いただいたとのことですが、実際に共有された際の反応はいかがでしたか。今回のようにユーザーテストという“根拠のあるフィードバック”を共有したことで、受け止め方の違いはありましたか。
数井様:そうですね。開発チームにとっても新たな視点での意見が得られたのは大きかったと思います。
もともと想定していた課題もあったので、「やっぱりそうだよね」という部分もありました。一方で開発チームとしては意図があって作った機能でも、利用者にはそれがうまく受け取られていない、意図が伝わっていなかった、そういった点にも気づきがあったように思います。
えそら 喜多:ユーザーテストでは、想定していた課題を確認できるだけでなく、これまで気づいていなかった点が見えてくることがあります。今回は最終的にリニューアルという判断に至りましたが、「どこまで変えるか」という点では悩まれた部分もあったのではないでしょうか。
そうした意思決定において、ユーザーテストで事前に課題を整理できていたことは、判断の後押しになりましたか?
数井様:さきほどもお話ししましたが、個人的には、以前から画面全体をより良くできる余地があると感じていました。ただ、自分の感覚だけで判断するのではなく、実際の利用者の方々がどのように捉えているのかを踏まえたうえで、改善の方向性を決めたいと考えていました。そうした意味で、ユーザーテストで得られた具体的な声や気づきは非常に参考になり、改善に向けた検討を進めるうえで大きな助けになったと思います。
えそら 喜多:大きなリニューアルを進める中で、社内での調整や意思決定に難しさを感じる場面もあったのではないでしょうか。
その中で印象に残っている点があれば、教えてください。
数井様:そうですね。関係者間で大切にしているものが違う分、意見の方向性にも差が出やすいと感じました。これまで積み重ねてきたものへの思いや、利用者から届く声を大切にしたいという意識がある一方で、多くの方にとってより使いやすい形にしていく視点も欠かせません。そのバランスを取ることが、社内の議論では特に難しかった部分だと思います。
そうした中で、第三者の視点として「こういう理由でこちらの方が分かりやすい」という整理をいただけたことは、議論を進めるうえでとても助けになりました。方向性を整えていく際の材料としても、第三者の意見を共有できたのは大きかったと感じています。
もちろん、これまでの取り組みや事情を踏まえながら進める必要もありましたので、コミュニケーションには慎重さも求められましたし、意見交換が熱を帯びる場面もあったと思いますが、真剣により良いものを目指しているからこそのプロセスだったと思っています。
えそら 喜多:まさにおっしゃる通りで、ユーザーテストでいただくフィードバックは、これまでの取り組みを否定するものではなく、むしろ“次に進むための材料”として活かしていただくことに意味があると考えています。限られた情報の中で最善を尽くされてきたからこそ、そこに新しい視点が加わることで、次のステップに進むための後押しになると感じています。
今回の改善が形になるまでのプロセスには、皆さまの積み重ねがあったからこそ実現した部分も大きいと受け止めていますし、その点をご一緒できたことをとてもありがたく思っています。
迷わず使える体験へ導いた画面刷新の要点
えそら 喜多:今回のリニューアルでは、見え方や操作感といったUIの部分も大きく変わり、全体としての印象がかなり変化したのではないかと思います。
日頃お客様にご説明される立場として、今回のデザインをご覧になったときに感じられた変化や、「ここが特に良かった」と思われた点はありましたか。
数井様:トップ画面を3つに割り切るという点や、下にスクロールせずに必要な情報が見えるようにする設計は、自分たちにはなかった発想だったのでとても参考になりました。
えそら 喜多:トップページについては、もともと要素の多い画面ではなかったのですが、さらにそこから本当に必要な情報だけに絞り込むことで、初めて使う方でも迷わない構成にしようと検討を進めました。
要素を絞るところも大変だったかと思いますが、そこをスムーズにご判断いただけたことで、全体の設計もより明確になった印象があります。
大久保さんはいかがですか。
大久保様:最初のページの「近くのバス停を探す」でしょうか。現在の画面では路線情報が文字だけで表示されているのですが、提案いただいた案では地図と路線の情報が一緒に表示されていて、視覚的に分かりやすくなっているところがすごく良いと思いました。
このページは特に大事な情報なのですが、現行のデザインではどうしても文字中心になっていたので、「絵で分かる」のはとても良いと感じました。それから、リニューアルとなると削りすぎてしまうのではないか、今と大きく変わりすぎてしまうのではという不安もあったのですが、そうした心配もなく、使いやすさが損なわれていない状態で整理されていて安心しました。
えそら 喜多:ありがとうございます。
トップページの中でも「近くのバス停を探す」は最も重要な導線でしたので、直感的に選んでいただけるよう、地図と路線情報を組み合わせた構成にしています。もともと地図から探す機能自体はあったのですが、それが画面上でうまく連動するように整理し直した点は、まさに今回の改善のポイントだったと感じています。
今回の改善では、ユーザーの声を丁寧に伺い、ユーザーテストで実際の使われ方を確認しながら、方針を立てて改善していく一連のプロセスを体験していただきました。
日頃は自然と届く声が中心になりがちですが、こちらから積極的に利用者の声を取りにいくことも大切だと考えています。こうした進め方は、今後の事業開発にどのように活かせそうですか。
数井様:そうですね。今回の進め方は、今後も確実に役立つと感じています。SaaSを提供する立場として、どの画面にもUXは必要ですし、一般の利用者だけでなく管理者もヘビーユーザーなので、むしろより丁寧に考えていく必要があります。
業界全体として、事業者側のUXは後回しになりがちで、使い勝手については利用者側の“慣れ”に委ねられている部分もあると感じています。そこも改善していきたいですし、新しい提案につなげられればと思っています。
今回のようにユーザーの声をしっかり聞いたり、必要な要素に絞り込んだりする考え方は、今後も必ず必要になるはずです。利用者画面もこれで終わりではなく、ユーザーからいただく反応を見ながら微調整していく場面もあると思います。
UI/UXについては、今後も常に意識しながら開発を進めていきたいと考えています。
ワイヤーフレームが変えた改善への期待感

– ワイヤーフレームを初めてご覧になった際の印象はいかがでしたか。
数井様:特にトップ画面を見たときに「これなら良くなりそうだ」という印象を持ちました。
内部だけで検討していると、どうしても「残したい要素を増やしてしまう」という状況になりがちですが、今回の案ではその点がしっかり整理されていました。
構成を思い切って絞り込むという発想も、自分たちだけではなかなか出てこないもので、非常に参考になりました。今後は「機能を増やしたくなる気持ち」をどうコントロールするかも課題だと感じています。
今までより一段階レベルアップしたものになる、という期待を持っています。
大久保様:見た瞬間に「すごい!プロのデザインだ」と感じました。
営業としてお客様にご説明する立場でも、このデザインなら自信を持って提案できますし、画面が整理されていて伝わりやすいと感じました。現行画面では説明が難しいと感じる部分もあったのですが、それがすっと解消されている印象でした。
利用者が迷わず使える体験へ
‐ 今回の改善を経て、利用者体験はどのような変化が期待できそうですか。
数井様:そうですね。理想としては、「使いやすくなった」「見やすくなった」といったことを利用者に意識させず、自然に使っていただける状態が一番良いと考えています。パッと見て分かり、そもそも迷うことがない、そうした体験を実現したいと思っています。
その点では、今回の改善によってこれまで以上にわかりやすく、安心してお使いいただける体験を提供できるのではないかと感じています。一方で、画面が大きく変わる部分もあるため、利用者の皆さまからどのような反応をいただけるかは、少し不安もありますが、それも含めてとても楽しみです。
今後は具体的なデザインの仕上げに入りますが、完成が非常に待ち遠しく、できるだけ早く新しい画面に移行したいです。
自治体と事業者に届ける新しい体験価値
‐ 今回の改善によって、自治体やバス事業者の皆さまにはどのような価値を提供でそうですか。
数井様:利用者の不安や不満をきちんと解消できるサービスをご提供できることは、自治体やバス事業者の皆さまにとって大きな価値になると感じています。特に、バスの到着を待つ場面では小さな不安が積み重なりやすく、そこを丁寧に支えることが重要です。
また、利用者の体験をここまで深く捉え、改善に取り組む姿勢そのものが、ご提案できる価値の一つだと思っています。今回の取り組みを通じて、より安心してご利用いただける環境づくりに一層貢献できればと考えています。
‐ 最後に、今後の展望について教えてください。
数井様:現在は路線バスを中心に情報を提供していますが、今後はより提供範囲を広げていきたいと考えています。「いつ車が来るかわからなくて困っている方」は、送迎サービスなどでも多く存在します。管理者側も利用者側も同じような課題を抱えているので、そのような場面にも価値を届けられるようにしていきたいです。
貴重なお話をいただきありがとうございました。
えそらLLCでは、200以上の事業支援から得た知見をベースとしたUXデザイン支援を強みとしております。UI、UXに課題がある方は、ぜひお問い合わせください。













