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カスタマージャーニーマップとは?活用のコツは”ジレンマ”の可視化にあり(ワークシート付)

カスタマージャーニーマップとは?UXデザインにおける活用のコツは"ジレンマ"の可視化にあり

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UXデザインと従来のデザインの違いは、1)モノからコトへ、2)生活者と向き合う、3)仕組みをつくるという3つの視点にあるということを 以前の記事 に書きました。これからUXデザインを導入しようと考えているチームが、これらの視点をデザイン活動に取り入れるにはどうすれば良いのでしょうか。

本日は、一つの製品・サービスに関わる顧客の体験を俯瞰的に眺め、デザインするツールである「カスタマージャーニーマップ」の基礎と、実務における活用のコツをご紹介します。

1. UXデザインにおけるカスタマージャーニーマップの基本

2020年現在、カスタマージャーニーマップはよく知られるツールとなりました。情報の入手には事欠きませんが、改めてその基礎を整理しておきましょう。

1-1. カスタマージャーニーマップとは

カスタマージャーニーマップは、一つの製品・サービスを利用する顧客が、様々な接点を横断してどのような体験をしているのかを、時系列に沿って一枚絵で表現したものです。

  • 製品・サービスを利用している瞬間だけでなく、その前後にまで時系列を広げて見る
  • 一つの接点だけでなく、全ての接点を横断的に見る

という特徴があり、ある一瞬や特定の接点における体験をどうするかではなく、顧客との長期に渡る関わりの中で、一貫して満足のいく体験を生み出すためにはどうすれば良いかという着想を得ることができます。

1-2. カスタマージャーニーマップのサンプル

カスタマージャーニーマップは一枚絵で表されます。1枚にまとめることで、体験を俯瞰するという視点が保たれ、部分最適ではなく、全体としてどこに問題やチャンスがあるのかという分析がしやすくなります。

Rail Europe Experience Map by adaptive path
出典:Adaptive Path

Linda’s Journey Map by USA.gov
出典:USA.gov

カスタマージャーニーマップには様々なバリエーションが存在しますが、共通する骨組みはおおよそ以下の4点です。上記2つの例も、これら4つを要素として含んでいます。

  1. ペルソナ(誰が、何をしようとしているのか)
  2. 行動(大まかなステージ、その中で何をしているのか)
  3. 心理(各ステージにおけるニーズ、期待/不安)
  4. 発見点(問題点/チャンス、解くべき問い/アイデアなど)
カスタマージャーニーマップの基本構成

UXデザインが取り扱う「体験」は、極めて個人的、主観的、感覚的で、扱いづらい印象があるかもしれませんが、多くの人に共通する行動や心理、そしてそれらを生み出す背景を、パターンとして捉えることができれば、デザインできるというのが、背後にある重要な考え方です。

※ 「ポイント2. 生活者と向き合う」を参照

1-3. いつカスタマージャーニーマップを作るのか

カスタマージャーニーマップを作るタイミングの一つは、顧客の現状をよく理解したいとき(As-Is)です。企業と顧客との関わりは以前よりも複雑化していて、顧客側で何が起きているのか、企業側から見えづらくなっています。カスタマージャーニーマップにより顧客体験を視覚化することによって、顧客が直面している問題やチャンスを洗い出すことができるようになります。

もう一つは、顧客体験を良くしていくための施策を検討したいとき(To-Be)です。顧客の体験は点ではなく、線であり、どこか1箇所に綻びがあるだけで「良くない製品・サービスだ」と全体を評価されてしまいます。体験の一部を良くするのではなく、一貫して満足のいく体験を提供する意識が重要です。カスタマージャーニーマップで顧客体験を俯瞰することによって、全体の中で何が重要かを正しく判断できるようになります。

なお、カスタマージャーニーマップは、現状理解や施策立案のための着想を得るためのツールであって、顧客体験を精緻に設計するためのツールではないことに注意しましょう。

2. カスタマージャーニーマップの利点

現状理解や施策立案のためということであれば、当然、カスタマージャーニーマップだけが有効な施策というわけではないでしょう。他の施策と比較いただくために、ここではカスタマージャーニーマップならではの利点を解説します。違いを理解したうえで、うまく使い分けてください。

2-1. 顧客視点を持つきっかけに(個人として)

私たちは普段、自らの業務としてやっていることや、企業の中で行われている活動はよく目にしますが、それらが顧客の側からどう見えているのかをイメージすることは簡単ではありません。顧客と直に会って話をする機会が少ないWebサイトやアプリなどのデジタルプロダクトを提供しているチームはなおさらでしょう。

カスタマージャーニーマップは顧客が主語になります。これにより私たちは、顧客が何を考え、どう行動するのかを軸に分析、発想できるようになります。

2-2. 自部署の役割と問題が見える(部署として)

昨今、顧客との関わりが複雑化、高度化するにつれ、専門性を持ったチームが手分けして顧客対応に当たることが多くなっています。マーケティング、セールス、開発、コールセンターなど。同じ顧客を相手にしているはずなのに、お互いにやっていることをよく知らず、必ずしも上手く連携ができているとは言えない状態に陥っていませんか。

カスタマージャーニーマップは、部署やチャネルといった企業側の事情をいったん忘れて、複数の接点を横断する顧客の一連の体験を俯瞰します。これにより、自部署の役割を再認識したり、自部署だけを見ていては気づきにくい情報の分断や一貫性の問題に気づいたりできるようになります。

2-3. 他部署との連携がスムーズに(会社として)

「どうすれば、お客様に一貫して満足いただける体験を提供できるだろうか」

カスタマージャーニーマップを作成するために集められた各部署のメンバーは、上記の問いを解くために、現状を分析したり、アイデアを発想したりして、解決方法を考え抜きます。もちろん簡単に解ける問いではありません。この過程(ある意味で、苦しみと言って良いでしょう)を共有することが、チーム全体の顧客理解を深め、共通のゴールのために団結して戦うチームワークを生み出します。カスタマージャーニーマップを作成する最大の利点といっても過言ではないでしょう。

3. カスタマージャーニーマップ作成の5ステップ(ワークシート付)

カスタマージャーニーマップには様々なバリエーションが存在し、作り方も一様ではありませんが、ここでは、初めての方でも進めやすい基本的なステップをご紹介します。

ステップに沿ったワークシート(エクセル)とサンプルをご用意しました。ご活用ください。

カスタマージャーニーマップ作成ワークシート

3-1. 何のためにつくるのか

まず、カスタマージャーニーマップを作る目的を整理します。あなたの製品・サービスに関わる顧客の体験を俯瞰することで、どのようなビジネス課題を解決しようとしているのでしょうか?

  • 例:製品をもっとリピート購入してもらいたい
  • 例:サービスの解約率を下げたい
  • 例:チームとしての顧客理解度を高めたい
  • 例:部署間でゴールを共有したい

そのうえで、カスタマージャーニーマップの照準を定めます。現状理解までで良いのか、施策立案まで踏み込んでやるのかによって、出口が変わります。

<現状理解のとき(As-Is)>
顧客がいまどのような体験をしていて、どこに問題があるかを発見することが狙いとなります。加えて、自分たちが顧客の何を知っていて、何を知らないのかを自覚することも大切です。現状理解や施策立案の土台として確認しておくべき仮説が見つかった場合は、調査課題として残しておき、改めてリサーチをかけて検証しましょう。
→ 現状理解:問題の発見、調査課題の整理

<施策立案のとき(To-Be)>
アイデアをいきなり出すのではなく、どうしてその問題を解決するのが難しいのか(簡単であれば、問題として表出しないはずですよね)という理由を一段、掘り下げておくと良いでしょう。対処療法的な問題解決ではなく、本質的な解決を目指すのであれば、問題が発生してしまう構造を理解したうえで、正しい問いを立てなければなりません。
→ 施策立案:解くべき問いの発見、アイデアの発想

具体例として、「会社サイトを経由して、新規の受注を増やしていきたいと考えているUXデザイン会社」を想定し、実際にカスタマージャーニーマップを書いてみることにします。

カスタマージャーニーマップを作成する目的
『会社サイト経由での新規の受注を増やす』

カスタマージャーニーマップの照準
以下の状況にあることを想定し、『現状理解→施策立案』の順に進めます。
・顧客企業が現在どのような体験をしているのか、情報が整理できているわけではない
・どのような施策を強化していけば良いのかを洗い出したい
(ただし、解くべき問いを出すところまで)

3-2. 誰の体験か

ペルソナ(誰が、何をしようとしているのか)

誰が、何をしようとしているときの体験なのかを定義します。いわゆるペルソナに相当する情報です。手元にペルソナが複数ある場合は、どのペルソナかを定義します。ペルソナがない場合は、ブレストベースで構いませんので、代用として以下3つの情報を書き出してください。

  • 目的:何をしようとしているのか、何のための体験なのか
    (例:良い会社に就職する)
  • ニーズ=目的までの一連の体験において、満足や成功に強く関わってくるもの
    (例:東京のデザイン業界事情を知りたい)
  • コンテキスト=そのニーズを生み出す状況や影響を与えているもの
    (例:地方の美大生、親元を離れて仕送りをもらっている)

誰の体験か、大枠としては「UXデザイン会社を探している顧客企業の担当者」になりますが、もう少し具体的な設定があった方が考えやすいでしょう。手元にペルソナがないという想定で簡単に定義します。

顧客の目的
『自社が運営するサービスサイトのリニューアルを依頼できるUXデザイン会社を探す』
ここをもう少し広めにとるならば、「サービスサイトのリニューアルで成果を出す」くらいのレベル感となります。この場合は、UXデザインが成果を出す手段として最適かを判断するところから始まります。

顧客のニーズ
『良いUXデザイン会社に出会いたい』
ざっくりとしていますが、難しいのは「良いUXデザイン会社とは何か」を定義する作業と、その定義にマッチした会社を探す作業を、同時にやりこなさなければならない点です。

顧客のコンテキスト
『リニューアル担当者』
どの会社に依頼するのか、候補リストを作るように言われているとします。担当として、何を根拠にその会社を選定したのか、上司に説明をしなければなりません。

『デザイン会社への外注経験なし』
過去にデザイン会社との取引経験がある担当者さんであれば、どういう会社が”良いデザイン会社”なのか、検討がつくかもしれませんが、今回はあえて厳しい条件を設定します。

『サイトリニューアルを担当した経験なし』
1画面のデザインを変えるといった簡単なプロジェクトではないため、サイトリニューアルの経験があるかどうかは、今後の見通しを立てる力に大きく影響します。これも、厳し目の条件を設定しておきます。

3-3. どのような行動か

行動(大まかなステージ、その中で何をしているのか)

顧客が目的を達成するまでの体験の全体像を、大まかなステージに分けます。まずは、5つの動詞『○○する(例:問い合わせる)』で表現してみてください。なぜ、5つなのか、特に理由はありません。最適な粒度を最初から定義しておくことはできないので、最初は少な目に考えてみて、必要に応じて分解していくと良いでしょう。また、ステージを考える際、以下の2点に注意してください。

  • 製品・サービスの利用の前後、繰り返し、時間経過による変化など、時間的な視野を広く
  • 競合や代替手段、デバイスやチャネルの横断など、環境的な視野を広く

次に、ステージを詳細化します。ここでもまずは、3つの接点+動詞『○○で○○する(例:会社サイトで実績を調べる)』で表現してみてください。細かい行動を網羅するのではなく、「顧客の心理に大きな変化が起きそうな箇所の解像度を上げる」という意識で取り組みましょう。

ステージを検討する際、細かい行動を洗い出してグルーピングしていく方法と、大づかみで定義してみて後から調整する方法とが考えられますが、後者の方が圧倒的に早いです。ここでは、大づかみに以下5つのステージを設定することにします。

1. リニューアルが決まる
2. パートナー会社を探す
3. お問い合わせする
4. 提案を受ける
5. パートナー会社を決める

次に、各ステージを詳細化します。特に正解があるわけではありませんので、思いつく重要そうな行動を並べておき、必要に応じて後で調整します。

1. リニューアルが決まる
 1-1. プロジェクトの要件を決める(体制、期間、スコープ、予算、外注有無など)
 1-2. UXデザインの採否を検討する

2. パートナー会社を探す
 2-1. ネットで検索する
 2-2.「会社サイト」を閲覧する
 2-3. 良さそうな会社かを判断して候補に残す

3. お問い合わせする
 3-1. 候補の「会社サイト」を再確認する
 3-2. 声をかける会社を絞る
 3-3.「フォーム」からお問い合わせする

4. 提案を受ける
 4-1. 提案を依頼する
 4-2. 提案が揃ったら比較する
 4-3. 発注先を絞る

5. パートナー会社を決める
 5-1. 会社の決裁を仰ぐ
 5-2. 発注先が正式に決まる
 5-3. 結果を通知する

3-4. そこにどんな心理があるのか

心理(各ステージにおけるニーズ、期待/不安)

ステージごとに、顧客の心を占める思考や感情を書き出します。ニーズとして認識されているものがありそうなときは、顧客のセリフとして『◯◯したい/してもらいたい(例:失敗しないコツを知りたい)』と表現します。ニーズ未満の疑問や迷いは質問形式にします。ここが一つの山場となります。以下の点を意識すると良いでしょう。

  • ステージ内の行動を起こす/変える、促進する/抑制する思考や感情とは何かを考え、重要だと思われるものから記載していく
  • 可能な限り、リサーチデータにもとづくファクトを記載する
    それが難しい場合は、後で見分けがつくように事実と仮説を書き分ける

気持ちのポジネガを曲線で描く方法をよく目にしますが、大まかな傾向を把握できるという利点はあるものの、それを読み解いてチャンスにつなげることは(個人的に)難しいことが多いです。曲線を描く前に、各ステージでの顧客の気持ちを、言葉で書き出してみることをおすすめします。

どんなニーズがあるのか見当がつかないときは、”最悪の体験”を考えてみましょう。ステージごとに顧客が遭遇しうる”最悪の体験”を考えてみて、それを最悪と思うのはなぜか、最悪の体験を避けたいという思いを言葉にするとどうなるかを考えると、ニーズを抽出しやすくなります。

ニーズを考えやすくするため、ステージごとに”最悪の体験”を考えてみます。

1. リニューアルが決まる
顧客企業にとって最悪なのは、UXデザインがベストな選択肢ではないにも関わらず、間違った理解や期待値でそれを採用してしまうこと、あるいはその逆である
 ↓↓↓
「UXデザインをやってみたのは良いけど、万一、成果が出なかったら最悪だよね」
 ↓↓↓
『UXデザインを導入すべきか知りたい』

2. パートナー会社を探す
顧客企業にとって最悪なのは、検索キーワードが違っていた、ピンと来なかったなどの偶然で時間をかけたわりに、本当に実力のある会社を見逃してしまうことである
 ↓↓↓
「時間かけて調べたのに、ただの偶然で良い会社を見落としたら最悪だよね」
 ↓↓↓
『良い会社を見落とさないようにしたい』

3. お問い合わせする
顧客企業にとって最悪なのは、自社の要件にマッチした会社を選びそこねること、まったく条件にあわない会社を選択肢に入れてしまい時間を無駄にすること
 ↓↓↓
「何となく選んだけど、実力がない、条件にあわない会社ばかりだったら最悪だよね」
 ↓↓↓
『ベストな選択肢を揃えて相談したい』

4. 提案を受ける
顧客企業にとって最悪なのは、結局、どの会社が一番良いのか確信が持てないまま、必ずしも実力を反映していない基準で会社を妥協で選定してしまうことである
 ↓↓↓
「安かろう悪かろうだったり、高いのに成果も出せない会社だったりしたら最悪だよね」
 ↓↓↓
『一番成果を出してくれる会社を選びたい』

5. パートナー会社を決める
顧客企業にとって最悪なのは、ベストと思える会社が見つかったのに、社内を説得することができず、別会社を選ぶことになってしまうことである
 ↓↓↓
「せっかく良い会社が見つかったのに、鶴の一声でひっくり返されたら最悪だよね」
 ↓↓↓
『この会社がベストだと説得したい』

3-5. 何が発見できたのか

発見点(問題点/チャンス、解くべき問い/アイデアなど)

<現状理解のとき>
顧客のニーズが満たされていないところはどこか、それはなぜかを分析します。もし、その理由にあたるジレンマの構造を壊すことができれば、そこに大きなチャンスが生まれます。

1)未検証のニーズがないかを確認する
 そのうち重要なものはどれか(調査課題として書き出しておき、検証に回す)
2)ニーズへの対応状況を分析する
 そのニーズに対して何を提供できているか、十分に満足してもらえているか
3)ジレンマを可視化する
 そのニーズを満たすことが難しい理由を言語化する

<施策立案のとき>
どうすれば顧客に満足してもらえそうか、アイデアを発想します。アイデアそのものよりも、正しい問いを見つけられるかどうかが勝負の分かれ目になります。

1)問いを立てる
 どうすれば(ジレンマ)にも関わらず、(ニーズ)を満たすことができそうか?
2)アイデアを発想する

ジレンマを可視化しつつ、いくつかの問いを立てるところまでやってみます。いったん手堅い問いにとどめますが、実務でこれをやるときは、もう少し思い切った問い(例えば、提案というプロセス自体をなくすような)を立ててみても良いでしょう。

1. リニューアルが決まる
「UXデザインを導入すべきか知りたい」を叶えるのが難しいのは、
 ・サイトリニューアルで成果を出すための選択肢は、UXデザイン以外にも存在する
 ・UXデザインの採否を含めての意思決定が必要だが、その判断には専門的な知見が必要
 ・専門的な知見がないからこそ外注しようとしているわけであって、自ら判断できない

 ↓↓↓
どうすれば、知見がなくても、UXデザインの採否を正しく判断できるだろうか?

2. パートナー会社を探す
「良い会社を見落とさないようにしたい」を叶えるのが難しいのは、
 ・検索サイトで探す場合、上位から順番に見ていくことになるが、全部は見切れない
 ・検索結果を絞ろうとしても「UXデザイン」以外のキーワードが思いつかない
 ・一社ずつ見ていくが、何を基準に良い会社かを判断すれば良いのかわからない

 ↓↓↓
どうすれば、要件が言語化できていなくても、良い会社の見落としをなくせるだろうか?

3. お問い合わせする
「ベストな選択肢を揃えて相談したい」を叶えるのが難しいのは、
 ・UXデザイン会社のサイトを見ても、情報の有無や切り口がバラバラで比較しづらい
 ・同質の会社を比較するのが正解か、選択肢の多様性を確保するのが正解か
 ・詳細は各社に直接聞かないとわからないが、全社に声をかけるわけにはいかない
 ・相談前に入手できる不完全な情報で、相談する会社を選ばないといけない

 ↓↓↓
どうすれば、相談前に入手できる情報で、選択肢を最適化できるだろうか?

4. 提案を受ける
「一番成果を出してくれる会社を選びたい」を叶えるのが難しいのは、
 ・UXデザインは”進め方”の提案になることが多く、各社の違いが見出しづらい
 ・本当の実力や相性は一緒に仕事をしないとわからないが、その前に選ぶ必要がある
 ・理解できる(=上司に説明可能な)違いが、期間と金額だけになりがち

 ↓↓↓
どうすれば、プロジェクト開始前に、実力や相性を正しく推し量れるだろうか?

5. パートナー会社を決める
「この会社がベストだと説得したい」を叶えるのが難しいのは、
 ・自分たちさえ判断に苦しんだのに、今度は上司を説得しないといけない立場に変わる
 ・どこの会社が成果を出せそうか、という最も本質的なところが一番説明しづらい
 ・商談やプレゼン時に感じた、言語化できない信頼感を再現することは不可能

 ↓↓↓
どうすれば、提案時に不在だった上司に、この会社がベストだと説得できるだろうか?

4. コツは “ジレンマ” の可視化

カスタマージャーニーマップを使って施策を検討するときのコツは、何かしらの問題が起きている原因を構造的に捉えることによって、正しい問いを導き出すところ(3-5で青字にしたところ)にあります。もし、問題が簡単なものであれば、すでに解決されていて表出することはありません。それが、今日に至るまで解決できていないということは、ジレンマを代表とする構造的な原因が存在するはずです。

4-1. チャンスの源泉としての「選択のジレンマ」

例えば、「新築の注文住宅を購入する」というカスタマージャーニーマップを作っていたとして、「予算を決める」というステージがあったとします。顧客の心理として「できるだけ安く買いたい」というニーズがあることは容易に想像できますが、その解決は単純ではありません。注文住宅を選ぶ顧客のもう一つの心理として「できるだけ理想の家を建てたい」という両立できないニーズがあるからです。

背後にあるのは「安い家は理想から遠く、理想の家は高い」という構造であり、どちらのニーズを選んでも不利益が発生するため、選べないという状況=ジレンマに陥ります。もし、このジレンマを生み出す構造を壊すことができれば、大きなチャンスが生まれます。

4-2. チャンスの源泉としての「決定のストレス」

もう一つ例を挙げましょう。先ほどと同じカスタマージャーニーマップで「購入を決定する」というステージを考えます。購入の決定は、いろいろと情報を集めて検討をしてきた最後に来るものなので、ある程度、腹は決まっているはずですが、「大きな買い物なのでこれで良いのか不安」という感情は拭い去れません。おおよそ全ての顧客に自然発生的に湧き上がってくる感情です。 「買う」「買わない」という2つの選択肢が生み出すジレンマとも言えますが、このタイミングになると、ローンが通らなかったなど外的な要因がない限り、自分の意志で「買わない」を選択することはないでしょう。つまり、これは選択によるストレスが生む感情ではなく、「後戻りのできない大きな意思決定」によるストレスです。この構造を壊すことで、やはり大きなチャンスが生まれます。

コツは "ジレンマ" の可視化

5. カスタマージャーニーマップの導入にあたってのFAQ

5-1. カスタマージャーニーマップの作成に誰を巻き込む?

カスタマージャーニーマップは、個人的な思考ツールとしても有用ですが、顧客の体験を様々な接点を横断して見ていき、現状理解・施策立案するところに特徴があるため、フルに活用するならば各部署の関係者を巻き込む形で作成すべきです。特に、仮説ベースで作成を進める場合は、リアリティを高めるため、窓口担当、営業職員、コールセンタースタッフなどできるだけ顧客との接点がある人にも参加してもらうと良いでしょう。

下記にカスタマージャーニーマップの成功要因を聞いたアンケート結果が掲載されていますが、1位は「共同作業で作られ、シェアされる場合(37%)」。カスタマージャーニーマップは、ドキュメントそのものよりも、これを作成する過程で「どうすれば、お客様に一貫して満足いただける体験を提供できるだろうか」という問いに対する答えを、考え抜くところにこそ価値があります。この難問に立ち向かうべく、各部署の叡智を結集しましょう。

(日本語訳:https://u-site.jp/alertbox/journey-mapping-ux-practitioners

5-2. リサーチからやるべき?最速で作成する方法は?

カスタマージャーニーマップは、顧客の現状理解や施策立案の土台となるものなので、単なる想像ではなく、ファクトを記載すべきです。よって、原則として、”リサーチしてから作成した方が良い”ということになりますが、現実的にはその余裕がない方も多いでしょう。

私としては、まず仮説ベースでのカスタマージャーニーマップを描くことをおすすめしています。それによって、自分たちが顧客の何を知っていて、何を知らないのかに気づくことができます。現状理解や施策立案の根拠になる重要な仮説が見つかった場合は、その部分をリサーチで追検証すれば良いということになり、スピード&効率が格段に上がります。

なお、カスタマージャーニーマップを作成する練習は30分もあれば終わります。興味ある方は、下記を参考に、早速やってみてください。

5-3. ペルソナが複数ある場合、カスタマージャーニーマップを作り分けるべき?

通常、ペルソナは複数設定していると思います。その場合、ペルソナごとにカスタマージャーニーマップを描き分けるべきなのでしょうか。

教科書的には、描き分けるべきだという回答になりそうですが、複数枚になることで全体感を把握しづらくなること、作成の手間が大幅に増えることなどから、実務的には、一律にペルソナごとに描き分けるべきだとまでは言えないというのが私の見解です。カスタマージャーニーマップを思考ツールと捉え、俯瞰的な視点を保つことを優先する場合、1枚にまとめた方が良いこともあり得ます。

例えば、Q&Aサイトを使うユーザーの体験を描くとき、質問者、回答者は異なるペルソナになりますが、別々の紙に体験を描き分けてしまうと、両者の間で行われているコミュニケーションが見えなくなるため、その場合は1枚にまとめて描いた方が良いでしょう。ケースバイケースで、どちらが適しているかを判断してください。

5-4. 情報が多すぎて1枚に収まらない…どれくらい詳細まで書き込めば良いの?

カスタマージャーニーマップを作るとき、経験的に、情報が足りなくて困ることは少なく、たくさんあり過ぎる情報のうちどれを書き込めば良いのかで悩むことの方が多くあります。だからと言って、顧客体験の全体を俯瞰できるという良さが消えてしまうので、何ページにも及ぶ壮大なカスタマージャーニーマップを作ってはいけません。

ポイントは、顧客の体験において重要だと思う情報を選んで記載する目利きです。答えはないので、カスタマージャーニーマップの作成に参加しているメンバー間で話し合い、直感的に判断していきましょう。何が重要かを話し合うこと自体にも、大きな意義があります。

5-5. どう運用するのが正解?更新の頻度は?

カスタマージャーニーマップは、顧客との長期に渡る関わりの中で、一貫して満足のいく体験を生み出すためにはどうすれば良いかを、高い視点で思考するためのツールです。これをベースに施策の方向性を考えていきますので、その後いつでも、施策に携わるメンバーが参照して意図を確認できるようにしておきましょう。施策の実行中は壁に掲示するなど、お好みで工夫してください。

なお、カスタマージャーニーマップを日々更新していくという考え方はあまりおすすめしません。カスタマージャーニーマップは思考ツールであり、ドキュメントを常に最新に保っていることよりも、それを作成する過程をチームが共有することの方が重要です。施策の方向性を検討し直すときや、体制が変わってチームメンバーが入れ替わったときなどに、カスタマージャーニーマップをゼロから作り直すという意識(実際には、過去のバージョンをベースにするので、作成にかかる時間は大幅に短縮されます)で良いのではないでしょうか。

6. まとめ:顧客体験を考える第一歩として

カスタマージャーニーマップは、顧客体験を考えるうえでの重要な視野と視点を与えてくれるツールです。これを作成する過程で、チーム全体の顧客理解を深めることもできますので、まだ一度も作ったことがないという方は、ぜひ作ってみてください。

カスタマージャーニーマップの導入で困っている方はご相談に乗りますので、ぜひお問い合わせください。

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この記事を書いた人

喜多 竜二

えそら合同会社 代表社員/HCD-Net認定人間中心設計専門家

2009年にUXデザインコンサルティングを専門とする「えそら合同会社」を設立、これまでに新規事業をはじめとする100を超える事業を支援してきた。自身は行動観察をはじめとするエスノグラフィを専門とし、生活者に対する共感を出発点としたユニークなアイデア発想の場づくりや、UXデザインの組織導入に力を入れている。東京大学工学部卒業、シドニー工科大学大学院修了。

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