今回は、株式会社ゼンリンデータコム様の新規事業開発をご支援した事例をご紹介します。
同社では、新たな領域でのサービス創出に向けて仮説検討を進める中で、検討している価値が本当にユーザーにフィットしているのかという点に確信を持ちきれず、次の意思決定に踏み切れない状況にありました。 そこで弊社にご相談をいただき、2025年7月から約1ヶ月間にわたり、ストーリーボードを用いた顧客理解と仮説検証の伴走支援を実施しました。
本記事では、担当者の皆さまに、短期間での検証を通じて得られた気づきや意思決定の変化についてお話しいただきます。
| クライアント情報/ご担当者様情報 | |
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目次
ご依頼前の課題と成果
<背景/課題>
新規サービスの検討を進める中で、アイデアの可能性を感じていた一方、仮説がユーザー課題にどこまでフィットしているのか確信を持てない状況でした。その中で「モックを作って評価すべきか」「作る前にできる検証はあるのか」と議論が続いていましたが、判断軸が定まらないまま進めることに不安もあり、こうした背景から専門的な知見を持つ支援が必要だと感じ、外部パートナーを検討することになりました。
<パートナー選定理由>
重視していたのは、成果が一過性で終わらず、チームの再現可能な力として残ることでした。初回相談で、えそらから「何を作るか」よりも「どこに課題があるか」を丁寧に分解し、MVPありきの発想に囚われず”目的に沿った検証方法”という視点を提示されたことが視野を広げるきっかけに。曖昧だった判断の物差しが整理され、この領域で伴走しながら力を発揮してくれるパートナーだと感じられたことが大きな決め手でした。
<課題に対する成果>
ストーリーボードを用いた検証により、仮説を可視化しながらユーザーと対話するプロセスが確立しました。曖昧だった前提や狙いが明確になり、「何を作るべきか」を迷わず判断できるようになりました。また、1ヶ月の伴走後には自走して別テーマの検証を行えるまでに成長し、チームとしての判断力も大きく向上しました。社内ではストーリーボードの活用が広がるなど、実践可能な顧客理解の文化が芽生え始めています。
プロジェクト概要
えそら合同会社 代表社員
喜多 竜二

インタビュー
調査で掴んだ手応えを確信に変えていくために必要なこと
– まず初めにチームのミッションを教えて下さい。
大垣様:私と高橋が所属しているのは、一般消費者向けのサービスを企画・運用している部門です。
新規事業を専門に扱う部門は別にありますが、私たちのミッションは、既存のお客様に向けたサービスをどう改善し、どう価値を届けていくかを日々考えながら、サービス全体を運用していくことにあります。
サービス開発にアドバイザーという形で参加してもらった出口は、会社全体で新規事業を検討する部門に所属しており、立ち上げ経験が豊富なことから今回参加してもらいました。

– 初めてお会いしたのは、弊社が主催するカジュアル相談でした。相談会にお申し込みいただいた当時、どのような課題がありましたか。
出口様:当初は、私たち3名で 特定の領域で新たな価値提供ができないかを検討しよう というところからスタートしました。自社のアセットをその領域でも活かせる可能性は感じていたものの、親会社ではすでに関連する取り組みが進んでいた一方で、当社としてはまだこれから理解を深めていく段階でした。そのため、まずは対象となる領域を広く探索し、どのような方向性が考え得るのかを整理するところからスタートしました。
ヒアリングや定量調査を重ね、「これはいけそうだ」というテーマ自体は見つかっていたのですが、本当にユーザーの課題にフィットしているのか、より解像度を高めて確認したいという思いが強くなっていきました。プロトタイプを作って評価すべきなのか、あるいは作る前にもできる検証手段があるのか、そこを判断する材料が不足しており、専門的な知見を持つ外部の会社に協力をお願いしたほうが良いのではないかと考え、パートナー候補を探し始めたのがきっかけです。
そうした中で、以前新規事業チームにいたメンバーに相談してみたところ、えそらさんの名前が挙がってきました。他にも候補はいくつかありましたが、その中でもえそらさんが特に気になり、まずはカジュアル相談に申し込ませていただきました。
MVPありきの考え方を変えてくれた一言
– 外部パートナーを検討される際に、どのようなポイントを重視されていましたか。
出口様:私自身が重視していたのは、「今回お願いする取り組みが、チーム全体の力になるかどうか」という点でした。私が永続的に実務を担うわけではないからこそ、このプロジェクトの経験や成果が、次のサービスづくりの基盤としてチームの中に残っていくことを期待していました。
初回のカジュアル相談でお話しした際、えそらさんからは“何を作るか”よりも“どこに課題があるのか”を丁寧に聞き取っていただき、その姿勢から「このプロジェクトがチームの成長につながりそうだ」という感触を強く持ちました。最終的な決め手は、そこにしっかり向き合ってくれるパートナーだと感じられたことでした。
大垣様:私と高橋も最初の相談会に同席していたのですが、私たちが抱えていた課題を丁寧に聞いていただいたのがとても印象に残っています。
当時、私たちは「まずモックを作る」という前提で進めようとしていましたが、その目的や適切な進め方までは整理し切れていませんでした。
えそらさんとの対話では、私たちが抱えている“本当のつまずき”の部分に丁寧に向き合っていただき、「今の段階で何を確認すべきか」「どこから手を付けるべきか」を一緒に考えていただけたのが印象的でした。形式的な提案ではなく、私たちの状況に合わせて伴走してくれる姿勢が心強く、依頼を決める大きな要因になりました。
出口様:たしかに、あの時は私たち自身がMVPありきの考え方になっていましたよね。そこに対して、えそらさんから「MVPでなくても目的は達成できるのでは?」と指摘を受けたことで、視点が大きく変わりました。
高橋様:私たちのテーマは、これまでの経験だけでは判断軸が持ちにくい領域でした。開発メンバーも同じチームにいるため、「作って検証する」ことにコストをかける意義が常に問われ、慎重にならざるを得ない部分もありました。
ただ、私たちの経験だけでは十分な判断の“ものさし”を持てておらず、この領域をどう整理していけば良いのか悩んでいたのも事実でした。今後チームを強くしていくためには、考え方そのものにアプローチしてもらえるパートナーが必要だと感じていた中で、えそらさんからは「MVPは手段であり目的ではない」という視点をいただき、そもそも“何を基準に判断すべきか”を整理する必要性に気づくことができました。進め方だけでなく、考え方の部分まで一緒に整えていける感覚があり、その点が依頼につながったと感じています。
解像度が一気に上昇したストーリーボードを使った検証
えそら 喜多:今回のプロジェクトの中で特徴的だったのが、ストーリーボードを活用した検証でした。
私たちは日常的に使い込んでいる手法なのですが、すべての企業が同じように使っているわけではなく、一般的なアプローチとは言い切れない部分もあります。
最初に「4コマのような形式で仮説を可視化します」とご説明した際も、実際にはイメージしづらかったのではと感じていました。
今回ストーリーボードを使って検証を進めていく方法をご提案させていただきましたが、最初にこの手法を聞いたとき、率直にどんな印象をお持ちでしたか?

大垣様:ストーリーボードが4コマ形式であることは理解していましたが、実際にどう作成し、それをユーザーに見せたときにどういった反応が得られるのか、当初は全くイメージできていませんでした。
ただ、完成度の高いプロトタイプをいきなり作り込んで評価するよりも、より気軽に取り組め、ユーザーにも答えていただきやすい方法だと感じました。
えそら 喜多:今回、実際にストーリーボードを描いていただき、それをユーザーに見せ、アウトプットする。この一連のプロセスを経験されてみて、この手法に対する印象はいかがでしたでしょうか。

大垣様:4コマに落とし込むまでの整理のプロセスが非常に重要だと感じました。
フォーマットに沿って進める中で、「ユーザーは何に困っているのか」「どこが本質なのか」が文字として整理され、可視化できていなかった部分に気づくことができました。
可視化することで、これまで見えていなかった点や不足している点、逆に不要な点まで自然と明確になり、「ここは省いてよい」「ここは重視すべき」といった判断がしやすくなりました。
結果として、自分たちがどういうサービスをつくりたいか、何を届けたいかがより明確になりました。
えそら 喜多:そこはまさに、検証において非常に重要な点だと思っています。
モノがない段階でアイデアを口頭で説明しても、受け手によってイメージがバラバラになってしまい、「いいですね」と言われても、どの部分を指しているのかが把握しにくいんです。ストーリーボードのように一度可視化することで、「どの場面でどんな価値を想定しているか」のイメージをお互いに揃えることができます。
実際にユーザーに見ていただいた際も、その可視化によって反応が明確になっていた印象があります。ユーザーとの対話の中で、印象に残っている出来事や、「ここは確信につながった」と感じられた点があれば教えてください。
大垣様:ストーリーボードを用いてインタビューしたことで、自分たちだけで行っていたときよりも明確な回答が得られました。
共感できる点・違和感のある点をはっきり示していただけましたし、想定どおりの反応もあれば、想定外の意見もあって、それが大きな学びになりました。
可視化されたストーリーボードがあることで、ユーザーも「どこに対して答えればいいか」が分かり、曖昧さの少ない反応が得られたと感じています。
えそら 喜多:今回のプロジェクトは、開発に進む前の非常に重要な意思決定フェーズでした。
約1ヶ月という限られた時間の中で、皆さんがどの方向に進むべきかを判断する必要がありました。ストーリーボードによる仮説の可視化やユーザーとの対話によって、迷いが整理されたり、確信が得られたりした場面もあったのではと思っています。
この1ヶ月の取り組みが、どのように意思決定に役立ったと感じていますか。
大垣様:当初は、設定している課題が本当に自分たちのものなのかが曖昧で、ユーザーが困っているのか、価値を感じてくれるのかも明確ではありませんでした。ストーリーボードを使ったインタビューを通じて、ユーザーがどこに価値を感じ、どの部分に課題があるかが明確になり、なにを作るべきか が整理されました。
また、プロジェクト後に自分たちだけでストーリーボードを使った検証の一連の流れを再実施したことで、新たな気づきも得られ、「この方向で進んで大丈夫だ」という確信を持てるようになりました。
えそら 喜多: 今回のアイデアは当初、 “効率化を目指すもの”という大きな方向性でしたが、ストーリーボードとユーザーの言葉を通じて、どこに価値があり、どこを磨くべきかが明確になっていったのは非常に大きいと感じています。
1ヶ月で成果が現れた自走型チームへの変化
– 今回のプロジェクトを振り返ってみて、「このプロジェクトをやってよかった」と感じた点を教えてください。
大垣様:ストーリーボードを使った一連のインタビューの流れを体験し、そのやり方を身につけられたことが非常に良かったと感じています。
提供いただいたフォーマットは整理が行き届いていて、自分たちだけでは作れないものでした。
今後のプロジェクトでも“使えるツール”として役立つと感じています。
高橋様: 私は主に全体を見守る立場でしたが、今回のプロジェクトで決定的に違うと感じたのは、不要なものを徹底的に削れたことです。
本当に必要な部分以外を徹底的に削ぎ落とすという経験は、どれだけ開発メンバーと議論してもなかなかできることではありません。
提供価値として必要な部分がしっかり研ぎ澄まされ、「どこに注力すべきか」が明確になっただけでなく、「なぜ作らないのか」まで明確になった点は非常に大きかったです。
この後の仕様検討でも、「これは必要」「これは不要」といった判断が格段に早くなると思いますし、ユーザーに届ける上でも「これは先に作っておくべき」「これは後で良い」といった整理が明確になったことが、これまでのプロジェクトの中でも一番すごいと感じたポイントでした。
削るための判断軸(=削る“理学”)をどう作ればいいのか、ずっと考えていましたが、通常は機能が増えていく方向に進みがちな中で、今回は明確に“削る方向”に動いたことに驚きました。
今、かたちになり始めているアウトプットも楽しみです。
出口様:この1ヶ月で、まずチームが“自分事として”動き始めたことが良かった点です。
また、ストーリーボードのフォーマットが別部門でも使われ始めるなど広がりも生まれました。
ただ、やはり完成度や解像度は全く違います。
えそらさんからアドバイスを受け、案をレビューいただき、試行錯誤しながら積み重ねる中で生まれる解像度には、自分たちだけで到達するのは難しいと感じています。
それでも、フォーマットを使って取り組むこと自体には確かな価値があり、やらない場合とは圧倒的に違う結果が得られる。今回改めて、そう実感しました。
社内へ広がる顧客理解の実践と今後の展望
– 開発フェーズに進んだ今、開発チームとのコミュニケーションに変化はありましたか。
大垣様:そうですね。開発側から「これはどうするのか?」と確認を受けた際に、こちらが明確に答えられるようになっていることが大きい と感じています。 その背景には、インタビューや調査の結果を私たち自身がしっかり理解し、それを踏まえて会話できていることがあります。
また、開発メンバーにも「こういう検証をしている」という前提を共有しているため、共通認識が増えてコミュニケーションが以前より円滑になっていると感じています。
– 今回行った顧客理解の取り組みを、今後どのように社内で展開していきたいですか。
高橋様:今回のストーリーボードは、今後もさまざまな場面で活用できる“使いやすい型”になると思っています。企画・開発経験者であっても、価値の伝え方を整理するフォーマットを持っているわけではありません。
4コマで流れを整理するには相手のフローを理解している必要がありますし、理解できなければインタビューや現場確認が必要になる。そうしてフローを理解し、自分たちのやりたいことを当てはめていくだけでも、以前より明確な判断軸が生まれると感じています。
また、1つのプロジェクトだけでなく、1機能ごとの検討、新しい改善案の検討、既存ユーザーへの提供価値の再確認など、さまざまな場面で使える手法だと考えています。一方で、最終的に「これで良いのか」を判断する場面は必ず出てきます。内容や規模によっては、再びえそらさんに伴走いただき、相談しながら仕上げていくフェーズも必要だと思っていますので、またご相談させていただきたいです。
貴重なお話をありがとうございました!
えそらLLCでは、新規事業における伴走支援を行なっております。顧客理解をベースとした新規事業開発にご興味のある方は、ぜひお問い合わせください。













