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ユーザーシナリオとは何か?新規事業を成功に導く作り方と検証の実践

「ユーザーシナリオって、具体的にどう作ればいいのかわからない」
「見よう見まねで作ってみたけれど、どう使えばいいのかわからない」

このような悩みに直面しているのではないでしょうか。

ユーザーシナリオとは、あるユーザーが目標を達成するまでの行動・思考・感情を時系列で詳細に記述したものです。

新規事業や新商品の開発時に有益な手法として注目されていますが、実際に作ろうとすると、「これで合っているのか?」「どこまで詳しく書けばいいのか?」と疑問だらけになってしまうことが多いものです。

作ったものの活用方法がわからず、結局使われずに終わってしまうケースも珍しくありません。

しかし、ユーザーシナリオは新規事業を成功に導くうえで、非常に重要な役割を担うツールです。

この記事では、ユーザーシナリオの基本から具体的な作成手順、そして活用法まで、体系的に解説します。

【この記事を読むと得られるメリット】

  • ユーザーシナリオとは何か、基本からわかる
  • 効果的なシナリオ作成の具体的手順が身につく
  • 作成後の検証方法と改善サイクルが理解できる

新規事業開発の確かな拠り所となる、“本当に使える” ユーザーシナリオの作り方を、ぜひ習得してください。

1. ユーザーシナリオとは何か?基本の知識

まずはユーザーシナリオとは何か、基本的な事項から確認していきましょう。

  1. ユーザーシナリオとは “ユーザーのストーリー” で体験を具体化する手法
  2. ユーザーシナリオのサンプル
  3. カスタマージャーニーやユースケースとの違い
  4. なぜ作るの?チームの認識を揃え開発のブレをなくすため
  5. ユーザーシナリオがとくに有効な5つのケース

1-1. ユーザーシナリオとは “ユーザーのストーリー” で体験を具体化する手法

「この機能、本当にこの順番でいいんだっけ?」
「ペルソナは決まったけど、そこからどう動くのか誰もイメージできていない……」

新規事業の開発でよく見られるのが、こんなシーンです。

チームメンバーそれぞれが、頭の中に違うユーザー像を描いたまま、開発を進めています。認識のズレは、やがて手戻りや仕様変更の嵐となって、プロジェクト全体を疲弊させてしまうのです。

このような問題を解決するのが、「ユーザーシナリオ」の役割です。

ユーザーシナリオとは、あるユーザーが目標を達成するまでの行動・思考・感情を時系列で詳細に記述したものです。架空の典型的なユーザー(ペルソナ)が、どのような状況で、何を考え、どのように行動して、最終的な目標に到達するかをストーリー形式で表現します。

優れたユーザーシナリオがひとつあれば、「ユーザーはここでこう感じるはずだから、この機能が必要です」というように、すべての議論がユーザー視点に立ち返ります。

ユーザーシナリオは、チームの無駄な対立をなくし、本当にユーザーに愛される製品を生み出すための、強力なツールとして機能するのです。

1-2. ユーザーシナリオのサンプル

「ユーザーシナリオってどんなものなのか、まず見たい」という方も多いと思いますので、サンプルを見てみましょう。

ユーザーを主人公とした物語として、「製品・サービスを使うことで、このようにゴールを達成することができた」というサクセスストーリーを、文章で書くのが基本的な作り方です。

以下は、オンライン商談システムのサービスサイトのために書かれたシナリオです。

出典:UXデザインにおけるシナリオとは?デザインレベルを引き上げる最も確実な方法のご紹介

後ほど詳しく解説しますが、以下の4点が基本要素となります。

(1)誰が(ペルソナ)
(2)どういう状況にいて(スタート)
(3)何をするために(ゴール)
(4)何を見て、何を考えて、どう行動するのか(プロセス)

1-3. カスタマージャーニーやユースケースとの違い

ユーザーシナリオに関して多い質問が「カスタマージャーニーや、ユースケースとの違いは何ですか?」というものです。

カスタマージャーニーは顧客の体験全体を俯瞰的に捉える手法、ユースケースはシステムとユーザーの相互作用を要件定義レベルで記述する手法、ユーザーシナリオは特定の場面での詳細な行動と心理を記述する手法という違いがあります。

【各手法の特徴と使い分け】

カスタマージャーニーマップ: 認知から購入、継続利用まで長期間(数週間〜数年)にわたる顧客体験の全体像を可視化します。 各フェーズでの感情変化やタッチポイントを整理し、事業戦略や部門横断的な議論に活用します。

ユーザーシナリオ: 特定の場面(数分〜数時間)での顧客の詳細な行動・思考・感情を記述します。 デザイン設計(画面設計やインターフェース設計など)の具体的な要件定義に活用し、 チームの共通理解を深めます。

ユースケース: システムの機能要件とユーザー・システム間の相互作用を定義します。 おもに開発者向けの技術仕様として活用されますが、感情や心理状態は含まれません。

補足として、ユーザーシナリオは、上記のようにデザインを具体化するとき以外に、コンセプトを具体化するときにも使われることがあります。

基本的には、全体戦略の議論にはカスタマージャーニーマップ、デザイン設計にはユーザーシナリオ、技術実装にはユースケースというように捉えておくとよいでしょう。

1-4. なぜ作るの?チームの認識を揃え開発のブレをなくすため

ユーザーシナリオを作成する最大の目的は、顧客理解と開発実装の間にある大きなギャップを埋めることです。

たとえば、「マーケティング部門が発見した顧客インサイトが、開発者に正確に伝わらず、結果として顧客の期待と異なる体験が生まれてしまう」といったケースを防ぐために、ユーザーシナリオが役立ちます。

なぜなら、ユーザーシナリオを作成すると、抽象的な顧客理解が具体的な行動レベルに落とし込まれ、チーム全体で共有できる形に変換されるからです。

【ユーザーシナリオが橋渡しする要素】

顧客理解の具体化: インタビューや観察から得られた深い洞察を、行動レベルまで具体化して記述します。 抽象的な「顧客が困っている」という情報を「どの場面で、なぜ、どのように困るのか」まで詳細に落とし込みます。

開発要件の明確化: 画面設計やインターフェース設計に必要な要素を明確に示します。 ユーザーがどの情報を見て、どう判断し、どのアクションを取るかが具体的に記述されるため、 開発者は迷うことなく設計を進められます。

機能仕様の意図説明: 機能要件だけでなく、その機能がなぜ必要なのか、どのような体験を実現するためのものかが明確になります。 開発者は技術的実装だけでなく、体験の質まで意識したものづくりができるようになります。

ユーザーシナリオがあれば、手戻りやコミュニケーションロスを大幅に削減できます。チーム全体が、同じ理解のもとで開発を進められるからです。

1-5. ユーザーシナリオがとくに有効な5つのケース

ユーザーシナリオはあらゆるサービスで有効ですが、とくにその効果が顕著に現れるケースがあります。

【シナリオが威力を発揮する5つのケース】

理解や実行が難しい場合: 複雑な手順や新しい概念の理解が求められ、混乱が生じやすいケースです。 段階的な理解促進と操作支援が必要になります(例:新しいグラフィックツールのインストールと初期設定)。

自己判断が難しい場合: 複数の選択肢から最適なものを選ぶ必要があるが、情報が多すぎて決定が難しいケースです。 判断基準の明確化と段階的絞り込みの設計が重要になります(例:家電製品のオンライン比較)。

継続することに意味がある場合: 一定期間、行動を続ける必要があり、モチベーションの維持が課題となるケースです。 習慣化を支援する仕組みの設計が欠かせません(例:フィットネスアプリでのトレーニングプログラム)。

既存の習慣と異なる場合: 新しい行動を取る必要があり、従来の習慣とのギャップにより抵抗感が生じるケースです。 移行を支える並行利用の期間の設計が重要です(例:ペーパーレス化のためのデジタルファイル管理システム導入)。

新しいことを学習する場合: 未知の領域に足を踏み入れ、新しい知識やスキルを習得する必要があるケースです。 段階的学習と実践機会の組み込みが成功の鍵となります(例:プログラミング言語のオンラインコース)。

上記に当てはまる新規事業を手がけている場合には、積極的にユーザーシナリオを活用してください。

2. ユーザーシナリオは三層構造でブレイクダウンする

「さっそくユーザーシナリオを作りたい」という方もいるかもしれませんが、その前にやるべきことがあります。

効果的な顧客体験を設計するには、抽象度の異なる3つの層(価値・体験・行動)を、上位から下位に向かってブレイクダウンすることが鍵となります。

ユーザーシナリオは、この3つの中で最も下位層ですから、いきなりユーザーシナリオから取り掛かっても失敗してしまうのです。

各層の取り組みを見ていきましょう。

  1. ストーリーボード(価値層):顧客の理想的な未来を描く
  2. カスタマージャーニー(体験層):価値実現までの体験フローを整理
  3. ユーザーシナリオ(行動層):具体的な行動と心理を詳述

2-1. ストーリーボード(価値層):顧客の理想的な未来を描く

三層構造の最上位に位置するストーリーボードは、顧客が最終的に得る価値と、その価値がもたらす変化を物語として描く手法です。

機能や仕様の説明ではなく、顧客の人生や仕事にどのようなポジティブな変化をもたらすかを明確にします。

【ストーリーボードの作成例】

出典:ストーリーボードを使ったUXデザインのためのアイデア発想法とは?

ストーリーボードは、「このサービスを使うと、顧客の生活や仕事がどう変わるのか?」を物語として表現し、チーム全体のビジョンを統一する役割を果たします。

たとえば「忙しい営業マンが効率的な資料作成ツールを使うことで、残業時間が減り、家族との時間を大切にできるようになる」といった具体的な変化を描きます。

抽象度は最も高い層になりますが、開発の方向性を決める非常に重要な指針となります。

詳しくは「ストーリーボードを使ったUXデザインのためのアイデア発想法とは?」にて解説していますので、あわせてご覧ください。

2-2. カスタマージャーニー(体験層):価値実現までの体験フローを整理

カスタマージャーニーは、ストーリーボードで描いた価値実現に向けて「顧客がどのような段階を経るか」を時系列で整理する手法です。中間層として、価値実現までのプロセスを体験の流れとして整理し、重要なタッチポイントを特定します。

認知→関心→検討→試用→導入→定着といった段階ごとに、顧客の状況や感情がどう変化するかを詳細に整理します。数日〜数カ月(場合によってはそれ以上)にわたる体験フローを可視化し、各フェーズでの課題や感情変化、必要なサポートも含めて設計するのが特徴です。

たとえば、「認知段階では不安が大きいため信頼できる情報源からの紹介が重要」「試用段階では操作の複雑さによる離脱を防ぐサポートが必要」といった具体的な設計指針を導き出します。

カスタマージャーニーでは、全体最適の観点から体験を設計するので、部分最適に陥ることを防げる利点があります。

詳しくは「カスタマージャーニーマップとは?活用のコツは”ジレンマ”の可視化にあり(ワークシート付)」にて解説していますので、あわせてご覧ください。

2-3. ユーザーシナリオ(行動層):具体的な行動と心理を詳述

ユーザーシナリオは、特定の利用場面において「何を見て、何を考え、どう行動するか」を具体的に記述する手法です。最下層として、設計対象となる体験の具体的な行動を詳細に記述します。

基本的には、数分から数時間という短時間での行動を詳述し、開発要件としても機能する状態まで具体化します。

「朝の通勤電車で田中さんがスマートフォンを取り出し、アプリを開いて今日のタスクを確認する。最初は操作に迷うが、直感的にわかるアイコンを見つけて安心し、タップして詳細画面に進む」といったレベルまで具体化します。

3層のうち、この行動層が最も具体的で、実装に直結する層です。開発者や企画者が実際に作業を進める際の明確な指針となり、勘や想像に頼らない設計につながります。

重要なのは、ユーザーシナリオはいきなり作るのではなく、「ストーリーボード」→「カスタマージャーニー」 → 「ユーザーシナリオ」と段階を経てブレイクダウンするという点です。

この中で最も難易度が高いのは、最上位層であるストーリーボードの作成です。そもそものビジネスの存在価値を左右する土台となります。

「ストーリーボードの作り方がわからない」という場合は、ぜひえそらLLCのカジュアル相談をご利用ください。

ストーリーボードは、えそらLLCが非常に重視しているツールです。経験豊富な専門家が、あなたの事業に最適なストーリーボード作成をサポートします。初回相談は無料で承っておりますので、お気軽にお声がけください。

通常の「お問い合わせ」はこちらから

3. 新規事業のためのユーザーシナリオの作り方 4ステップ

続いて、ユーザーシナリオを作成する流れを、4つのステップに分けて、見ていきましょう。前述のとおり、ストーリーボード→カスタマージャーニーの作成を行ってから進んでください。

「誰が」「どういう状況にいて」「何をするために」「どう行動するのか」という4つの要素を順序立てて明確にすると、実用性の高いユーザーシナリオを作れます。

  1. ステップ1:誰が(ペルソナ設定)
  2. ステップ2:どういう状況にいて(スタート地点と環境設定)
  3. ステップ3:何をするために(ゴール設定と動機の明確化)
  4. ステップ4:どう行動するのか(プロセス設計と心理変化の記述)

3-1. ステップ1:誰が(ペルソナ設定)

ユーザーシナリオの主人公となるペルソナを明確に設定します。ペルソナは架空の人物ですが、実際の顧客データやインタビューに基づいて作成することがポイントです。

単なる属性情報の羅列ではなく、その人の価値観、行動パターン、現在抱えている課題を具体的に描きましょう。

【ペルソナ設定の要素】

基本属性と背景: 年齢、職業、家族構成などの基本情報に加え、その人の生活環境や仕事環境を詳しく設定します。 どのような日常を送っているか、どのような制約の中で生活しているかを具体化します。

価値観と行動特性: 何を重視して判断するか、新しいものに対してどのような反応を示すかといった行動特性を設定します。 保守的か革新的か、慎重派か行動派かといった性格的な特徴も含めます。

現在の課題と不満: そのペルソナが現在どのような課題を抱えているか、 既存の解決手段に対してどのような不満を持っているかを明確にします。 これが新しいサービスを使う動機になります。

ペルソナ設定を行うと、シナリオ全体に一貫性が生まれます。「この人だったらこう考えるはず」「この人だったらこう行動するはず」という判断基準ができるため、リアリティのあるシナリオを作成できるのです。

3-2. ステップ2:どういう状況にいて(スタート地点と環境設定)

次に、ペルソナがシナリオを開始する時点での状況を、詳細に設定します。

どのような環境にいるのか、どのような心理状態なのか、何がきっかけでサービスを利用しようと思ったのかを明確にします。

ここで重要なのは、ペルソナが「何を見るか」という視覚的・環境的な要素も含めて設定することです。

【スタート地点と環境設定の要素】

物理的環境と情報接触: いつ、どこで、何を使ってサービスを利用するかを詳細に設定します。 朝の通勤時間にスマートフォンで、夜の自宅でパソコンで、といった具体的な状況を想定し、 その時に目にする画面や情報も含めて描写します。

心理状態と動機: なぜそのタイミングでサービスを利用しようと思ったのか、 どのような感情や問題意識を持っているかを明確にします。 たとえば、急ぎの用事があるのか、じっくり検討したいのかによって行動パターンが変わります。

前提知識と経験: そのペルソナがどの程度の知識や経験を持っているかを設定します。 初心者なのか経験者なのか、類似サービスを使ったことがあるかないかによって、 情報の提示方法や操作の複雑さを調整する必要があります。

このスタート地点の設定によって、「なぜその人がそのタイミングでサービスを利用するのか?」という動機が明確になります。後続の行動の妥当性につながるポイントです。

3-3. ステップ3:何をするために(ゴール設定と動機の明確化)

続いて、ペルソナが最終的に達成したい目標を、具体的で測定可能な形で設定します。

ここでは、最終ゴールだけでなく、そこに至るまでの中間ゴールも設定します。段階的な目標を明確にすると、シナリオの構造が整理されます。

【ゴール設定の要素】

最終ゴールの明確化: ペルソナが最終的に達成したい状態を具体的に設定します。 「効率よく仕事を進めたい」ではなく「毎日1時間早く帰宅できるようになりたい」といったように、 測定可能で具体的な目標にします。

中間ゴールの設定: 最終ゴールに至るまでの段階的な目標も設定します。 「まずは使い方を理解する」「次に基本機能を習得する」「さらに応用機能を活用する」といった段階を明確にします。

成功指標の定義: 各ゴールが達成されたかどうかを判断する指標を設定します。 定量的な指標(時間短縮、コスト削減など)と定性的な指標(満足度、安心感など)の両方を含めます。

このゴール設定により、シナリオの方向性が定まります。漠然とした「使いやすいサービス」ではなく、「この状況でこのゴールを達成するために最適化されたサービス」として設計できるようになります。

3-4. ステップ4:どう行動するのか(プロセス設計と心理変化の記述)

最後に、設定したゴールに向けて、ペルソナがどのような順序で行動するかの具体的な流れを作成します。

この段階では「何を見て、何を考え、どう行動するか」の3点セットを意識して、各ステップでのペルソナの思考や感情を詳細に記述します。

行動の原動力となるのは心理の変化であり、それがなければ「なぜその行動が生まれるのか」が説明できません。心理を組み込んだシナリオこそが、行動の再現性を高める有効なツールになるのです。

【プロセス設計と心理記述の要素】

何を見るかの記述: ペルソナがその瞬間に目にする画面、情報、周囲の状況を具体的に描写します。 「スマートフォンの画面に表示されたアプリのアイコン一覧を見て」「画面上部に『新規登録』のボタンを発見し」 といったレベルまで詳細に記述します。

何を考えるかの記述: 各場面でペルソナがどのような心理状態にあり、どう考えているかを詳しく記述します。 「最初は操作方法がわからず不安になったが、シンプルなデザインを見て安心し、試してみようと思った」 といった内面の変化を時系列で追います。

どう行動するかの記述: 心理変化に基づいた具体的なアクションを順序立てて記述します。 「ためらいながらも『新規登録』ボタンをタップし、表示されたフォームに必要事項を入力していく」 といった具体的な操作と、その背景にある感情も含めて描写します。

このプロセス設計によって、開発者や企画者が顧客の心理を深く理解できるようになります。機能要件だけでなく、なぜその機能が必要なのか、どのような体験を実現するためのものかが明確になるため、より効果的な実装が可能になるのです。

4. 作ったユーザーシナリオを活用する方法

ユーザーシナリオは作成して終わりではありません。シナリオはあくまで仮説にすぎないため、実際の顧客行動を通じて検証し、継続的に改善していくことで真の価値を発揮します。

  1. プロトタイプによる実体験検証が必須
  2. 想定外結果の原因を正しく切り分ける
  3. 開発チームの共通理解の形成に活用する

4-1. プロトタイプによる実体験検証が必須

シナリオの検証で最も重要なのは、実際の体験を通じた検証です。

シナリオをターゲットとなる顧客に物語として読んでもらっても、正しい検証にはなりません。

それは、人の心理は、実際の体験を通じて初めて動くからです。読み物を見せて「あなたはこう思いますか?」と尋ねても、正しい反応は得られません。

正しい検証方法は、シナリオをもとに作ったプロトタイプやプロダクトを実際に使ってもらい、そのときにシナリオ通りの心理状態や行動が生まれるかを観察することです。

プロトタイプの精度は高くなくても構いませんが、シナリオで想定した体験の流れは再現できるレベルまで作り込む必要があります。

この実体験検証によって、シナリオの妥当性を客観的に評価できます。

4-2. 想定外結果の原因を正しく切り分ける

検証の結果、想定と異なる行動や反応が見られた場合、その原因を正しく特定することが重要です。

原因は大きく分けて「シナリオそのものの誤り」と「設計がシナリオを再現できていない不備」の2つがあります。

シナリオの誤りとは、顧客の心理や行動パターンの読み違いで、「こう考えるだろう」「こう行動するだろう」という予測が外れている状態です。一方、設計の不備とは、シナリオで想定した体験を、実現できていない状態を指します。

この切り分けを間違えると改善の方向性も誤ってしまうため、詳細なインタビューや行動観察を通じて、丁寧に原因を特定してください。

正しく原因を切り分けた結果、シナリオの誤りなら顧客理解を深めて書き直し、設計の不備なら実装方法を修正するなど、適切に改善しましょう。

4-3. 開発チームの共通理解の形成に活用する

ユーザーシナリオは、開発チーム全体の共通理解を形成するための強力なツールとして、積極的に活用しましょう。

ユーザーシナリオには、抽象的な「顧客のため」という方針ではなく、具体的な顧客の姿と行動が描かれています。

チームメンバーそれぞれが、同じ顧客像を思い浮かべながら作業を進められる意義は、非常に大きなものです。

開発者は機能要件だけでなく体験の質まで意識したものづくりができるようになり、企画者は顧客の心理に基づいた仕様策定ができるようになります。

設計の判断に迷った際も、シナリオに立ち返ることで適切な解決策が見つかります。定期的にシナリオを参照しながら開発を進めていけば、チーム全体が顧客視点を維持し続けられるのです。

5. まとめ

本記事では「ユーザーシナリオ」をテーマに解説しました。要点をまとめておきましょう。

最初にユーザーシナリオの基本として以下を解説しました。

  1. ユーザーシナリオとは “ユーザーのストーリー” で体験を具体化する手法
  2. カスタマージャーニーやユースケースとの違いを理解する
  3. チームの認識を揃え開発のブレをなくすために作成する意義がある

ユーザーシナリオは三層構造でブレイクダウンして作成しましょう。

  1. ストーリーボード(価値層):顧客の理想的な未来を描く
  2. カスタマージャーニー(体験層):価値実現までの体験フローを整理
  3. ユーザーシナリオ(行動層):具体的な行動と心理を詳述

新規事業のためのユーザーシナリオの作り方を4ステップで解説しました。

  1. 誰が(ペルソナ設定)
  2. どういう状況にいて(スタート地点と環境設定)
  3. 何をするために(ゴール設定と動機の明確化)
  4. どう行動するのか(プロセス設計と心理変化の記述)

作ったユーザーシナリオを活用する方法は以下のとおりです。

  1. プロトタイプによる実体験検証が必須
  2. 想定外結果の原因を正しく切り分ける
  3. 開発チームの共通理解の形成に活用する

ユーザーシナリオは、顧客の心理と行動を深く理解し、それを開発チーム全体で共有するための強力なツールです。しっかり活用して、新規事業の成功確率を高めていきましょう。

監修者

喜多 竜二

えそら合同会社 代表社員/HCD-Net認定人間中心設計専門家

2009年にUXデザインを専門とする「えそら合同会社」を設立、これまでに新規事業をはじめとする200を超える事業を支援してきた。自身は人をより良く理解するための認知心理学を専門とし、生活者に対する共感を出発点としたアイデア創出に力を入れている。東京大学工学部卒業、シドニー工科大学大学院修了。

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