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新規事業を成功させるために必要な2つの視点(えそら10周年インタビュー)

新規事業を成功させるために必要な2つの視点(えそら10周年インタビュー)

企業が新規事業を立ち上げる際によりどころとすべきものは何か。最も重要なのは、それを求める人々が何を考え、日常生活のどのような場面でそれを使うのかという生活者に対する深い理解なのではないか。

えそら合同会社は「人間中心設計」という考え方のもと、生活者への共感を出発点にしたアイデア発想によって、これまでにない体験をもたらす新規事業を創り出すデザインコンサルティング会社。

どこまでも生活者視点に立ったデザインの力で世の中に新しい価値を生み出す同社の喜多代表に、新規事業開発に対する想いについて聞いた。

※本記事は、ニッポンの社長に掲載されたインタビュー記事に加筆修正を加えたものです。

成功する新規事業アイデアを生み出す おすすめの7ステップ

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えそら合同会社ってどんな会社

―御社の事業内容を教えてください。

スタートアップから大手まで、様々な企業さまにおける新規事業の立ち上げを、人間中心のデザインアプローチでご支援しています。これまで、放送、IT、セキュリティ、旅行、交通、住宅、冠婚葬祭、転職、保険、金融、美容、医療、行政など、業種を問わず100を超える事業に携わってきました。それらの多くが「何をつくれば良いか、そこから一緒に考えてほしい」というご相談から始まっています。

直近の例ですと、教育領域における「IoT製品を中心に据えた新しいサービスの企画」や、ヘルスケア領域における「AIを活用した新規事業機会の探索」など。近年は、既存領域の問題解決や改善だけでなく、新しい市場の創出をねらうようなご依頼が増えていますね。

新規事業開発で、私たちが特に難しいと感じるのが『どうすれば人がほしがる製品・サービスを生み出せるのか』です。この課題にデザイン会社として10年間、向き合う中で、1)問いを探索する、2)アイデアを育てるという2つの視点が重要であることが見えてきました。これらに対応できるフレームワークとノウハウを持っていることが、私たちの強みになっています。

1)問いを探索する=“答え”の探索の前に、“問い”を探索する
2)アイデアを育てる=アイデアは“ひらめく”のではなく、“育てる”

問いが間違っていると
正しいアイデアは出てこない

―御社の強みである「問いを探索する」とはどういうことでしょうか?

ここで言う“問い”とは事業が解決すべき生活者の課題のことです。新規事業と言えば、「素晴らしいアイデアを出さなきゃ」と考えがちですが、まず超えなければならないハードルはそこではありません。

一つ具体例をお話します。ある企業さまと、子どもの家庭学習を支援する新サービスを検討していました。夕飯の支度が始まって忙しい時間帯、小学校から帰ってきてずっとYouTubeを観ている子どもに「早く宿題やりなさい!」とガミガミ言うママの姿。目に浮かびますよね。

チームが持っていた当初の問いは、「どうすれば、ママの“ガミガミ”を取り除いてあげられるだろうか」というものでした。“ガミガミ”をなくすには、例えば、子どもが自律的に勉強する“魔法の杖”があれば良さそうですが、どうもそのようなアイデアの受けが悪い。ママたちの話を聞いていると「まだ子どもが小さい今は、私が勉強を見てあげなきゃ」という強い心理が見え隠れします。“ガミガミ”は自分が果たすべき大切な仕事であって、それを失うこと、お金で代替することに少なからぬ違和感を感じていたわけです。

ママたちとの対話を通じて、チームは、「どうすれば、ママの“ガミガミ”を(なくすのではなく)親子の嬉しい会話に変えられるか」という真の『解くべき問い』にたどり着きました。問いが変われば、解決策も180°変わります。問いが間違っていれば、正しい解決策は出てきません。アイデアをがんばって発想しようとする前に、『解くべき問い』を探索し、見極めることが重要です。

・問いとは、事業が解決すべき生活者の課題のこと
・前提となる問いが間違っていると、いくらがんばっても“正しい”アイデアは出てこない
・アイデア発想の前に『解くべき問い』を探索しよう

―具体的には、どのようにして、そのような『解くべき問い』を見つけるのでしょうか?

私たちのデザイン活動は、「生活者を知ること」から全てが始まります。案件によって様々な手法を使い分けますが、『行動観察』は私たちが最もよく使う手法の一つで、「デザイン対象となる体験が発生している現場に足を運び、そこで起きていることを観察する」シンプルだけれども奥の深いリサーチ手法です。

例えば、クライアントさまから、子育て中のママさんを対象にした新規事業の企画を依頼されたとします。私たちはおそらく、実際のママさんたちのご自宅にお伺いして、1日のリアルな生活を観察することから活動を開始するでしょう。そして、日常の行為の裏にある意識・無意識を明らかにし、何がそれらを生み出しているのか、まわりの環境を含めて体感しながら理解を深めていきます。先ほどお話した“ガミガミ”の例でもそうだったように、その理解はときに、当事者であるママさん自身、気づいていない習慣や、うまく言葉にできない感情にも及ぶでしょう。

行動観察=デザイン対象となる体験が発生している現場に足を運び、そこで起きていることを観察する

誰かにとってうれしい体験をデザインするには、その人の現状を知り、ニーズを把握するだけでは十分ではありません。そのニーズを満たすことがなぜ難しいのか?そこにあるジレンマや言葉ではうまく言い表せない心理とは何か?それらの背景を含めて総合的に理解することで、はじめて解決の糸口が見えてきます。そのために私たちが行うのが『行動観察』です。

・ニーズを発見するだけでは、それを“解く”ことができない
・そのニーズが簡単には満たせない理由、そこにある制約やジレンマの構造を理解することが重要
・そのために、体験が発生している現場に足を運び、そこで起きていることを観察する

―少し遠回りのようにも聞こえますが、御社はなぜ『行動観察』に着目したのでしょうか?

新規事業開発と似た文脈を持つスタートアップが失敗する原因の1位は、「No market need(誰もそれをほしがっていなかった)」だと言われているのをご存知でしょうか。(The Top 20 Reasons Startups Fail(CBINSIGHTS)

これは生活者を軽視して事業開発をしている会社が多いという単純な話ではありません。逆に、生活者ニーズを捉えるために真面目に活動していたとしても、この罠にはまる会社が多くあるということを示唆しています。

事実、新規事業開発の現場では、生活者に「何がほしいか」や「何に困っているか」を尋ねるアンケートのようなリサーチは、ほとんど機能しなくなりました。モノやサービスが溢れている今の時代、生活者は特に困っていない、あるいは気づいていないので、答えようがないからです。あるいは、そのような方法を使って簡単に集められるニーズは、既に誰かが解決していることでしょう。

生活者の「ほしい」という顕在化したニーズが見えづらくなっている今だからこそ、聞くのではなく、観る。そして、そこで得たインスピレーションをもとに発想する。多くの人がまだ気づいていないような新しい価値を提案する事業アイデアを生み出す入り口として、『行動観察』は非常に有効ですし、むしろかなりの近道になるのではと感じています。

事業アイデアを磨き込むポイントは
早期に賢く“失敗”すること

―もう一つの御社の強みである「アイデアを育てる」についても教えてください。

前述した『解くべき問い』をもとにブレストすれば優れたアイデアが出てくる、というようにリニアに進めば良いのですが、現実はそう簡単ではありません。初期のブレストは問いの“解像度”が低く、出てくるアイデアも漠然としたものになりがちです。その状態で、何回ブレストを繰り返しても、具体性のある優れたアイデアはなかなか出てきません。

必要なのは、問いそのものに対する理解度を高めることです。特に初期のブレストは、答えを出す場ではなく、問いを磨く場であることを意識します。出てきたアイデア自体ではなく、「アイデアが取り除く生活者の痛みは何か」「これまでになかったどのような価値を生み出しているのか」に注目し、そもそもの『解くべき問い』とは何だったのかに立ち戻ります。問いの解像度を高める⇔アイデア発想する、このサイクルを繰り返すことで、自然とアイデアが磨かれていきます。

・初期のブレストは、答えを出す場ではなく、問いを磨く場である
・出てくるアイデアそのものではなく、アイデアが解決する悩み、生み出す価値とは何かに注目する
・解くべき問いの解像度を高めることで、自然とアイデアが磨かれていく

このサイクルを回す中での最大のポイントは、できる限り早い段階でアイデアを生活者に見せて、賢く失敗する=学びを得ることです。私たちの経験上、これが相当に難しく、事業開発の早い段階であればあるほど学びが大きくなるとわかってはいますが、「アイデアは具体化しないと良し悪しを正しく評価できない。ところがどのアイデアを具体化するかを決めるためには先に評価をしなければならない」というジレンマに陥ります。

―アイデアを早く評価するというものに「プロトタイピング」がありますね。

はい、その通りです。デザイン思考で言う「作りながら考える」ですが、これに苦戦している新規事業開発チームも多く、いつの間にか「作ってから考える」になっているケースをよく目にします。ちゃんと理解をして実践すれば、これ以上ない強力な手法なのですが、これだけ失敗例を見聞きするということは、手法の側にも改良の余地があるのかもしれません。

プロトタイピングがうまくいかない理由:
・無限の選択肢のうちどれを作るべきか、は教えてくれない
・考えなくなる(とりあえず、最小限の何かを作ってみてから…となりがち)
・2)を自覚していても立ち止まれなくなり、作ることが目的化する
・いったん作り始めると、アイデアを否定する事実を、無意識的に受け付けなくなる

―そのように困難を極める早期のアイデア検証を、御社ではどう行っているのでしょうか?

漫画を描いて生活者に見せます。これは、『ストーリーボーディング』と呼ばれる手法です。プロトタイピングの本質は、その商品・サービスがもたらす未来を具体的にイメージしてもらえる“何か”を生活者に見せて、アイデアをリアルに評価してもらう点にあります。その“何か”は、「未来を具体的にイメージできる」「すぐに作れる」ものであれば何でも良く、プログラミングされたものである必要はありません。

漫画によるアイデア検証(ストーリーボーディング):
1)アイデアによって実現される未来を短い漫画にして生活者に見せる
2)漫画の主人公としてアイデアを疑似体験してもらう
3)アイデアが解決する悩みに共感するか、手に入る未来が嬉しいものになっているかを聞く

ストーリーボードとして表現されたアイデアの例

この方法は、私たちの経験上、非常に良く機能することがわかっています。ターゲットユーザーを主人公にした未来を描写するため、「その体験によって、誰がどう喜ぶのか」という体験が生み出す価値にフォーカスしやすくなります。また、読み手は自分と主人公を重ね合わせ、「それが実現されたら嬉しいのか」をイメージできるため、リアリティのある評価が可能になります。

また、コストや時間がかからないのも大きな利点です。私たちは、事業開発のごく初期の段階からリリースされるまで、あるいはリリースされた後も、新しいアイデアが出るたびに漫画を描き、生活者からの学びを得るサイクルをひたすら繰り返すことで、「No market need(誰もそれをほしがっていなかった)」のワナに立ち向かっています。

新規事業の立ち上げを通して
世の中に価値ある体験を生み出したい

―御社のそのようなユニークな視点はどのようにして生まれたのですか?

私たちは2009年に“リサーチ会社”としてスタートしていまして、必ずしも企画が得意なメンバーを集めた会社ではない、というところが一つあるかもしれません。どうすれば、偶然のひらめきや個人の引き出しに頼ることなく、私たちのような“凡人”が優れたアイデアを生み出せるようになるのか。チームのアイデア発想力をマネジメントするための再現性の高い仕組みを試行錯誤しながら作り上げてきました。初期はかなり苦労しましたし、今もまだ学びの途中ではあるのですが、そういった実戦経験を積んでこられたことが、私たちの強みにつながっているのかなと思います。

―今後どのような新たな事業展開を考えていますか?

今年、私たちは設立10年という節目を迎えました。これまでは自社のノウハウを、サービスとしてご提供してきましたが、今後は、誰もが簡単に使えるツールとしてもご提供していきたいと考えています。第一弾として、具体的なモノがない事業開発の初期段階でもアイデアを高精度にテストできるツールを開発中です。

―具体的にはどのようなサービスになる予定ですか?

先ほどのお話にも出てきたストーリーボーディングがヒントになりますが、手持ちのアイデアによって実現される未来を4コマ漫画として可視化し、ターゲットとなる市場のリアルな反応を見られる仕組みをつなげることで、アイデアの評価を自動化します。1行のコードも書かずに、「No market need(誰もそれをほしがっていなかった)」という最大のリスクを最小化します。

「新しい事業アイデアのイメージはあるんだけど、このまま進めていって実際に売れるものになるのか不安…」「手持ちの事業アイデアではターゲットに刺さらないというところまではわかったんだけど、どこをどう改良すれば良いのか…」と感じている事業開発チームが、“早期に賢く失敗すること”を支援するツールを目指します。

―今後のビジョンを教えてください。

私たちが目指すのは「未来のものがたりをデザインする」会社です。企業さまにおける新規事業の立ち上げをご支援することを通して、これからも世の中に価値ある新しい体験を生み出していきたいですね。

この記事を書いた人

喜多 竜二

えそら合同会社 代表社員/HCD-Net認定人間中心設計専門家

2009年にUXデザインコンサルティングを専門とする「えそら合同会社」を設立、これまでに新規事業をはじめとする100を超える事業を支援してきた。自身は行動観察をはじめとするエスノグラフィを専門とし、生活者に対する共感を出発点としたユニークなアイデア発想の場づくりや、UXデザインの組織導入に力を入れている。東京大学工学部卒業、シドニー工科大学大学院修了。

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