優れたUXをデザインするために、ユーザー体験への理解を深める「ユーザーテスト(ユーザビリティテスト)」は、有効な手段のひとつです。ただ、テストを実施するにあたり、何を準備して、どのように進めればよいかと迷われている方もいらっしゃるのではないでしょうか。
今回は、ユーザーテストの進め方について目的の設定からモニターの募集方法、テスト後の分析までの流れを、ポイントを交えながら解説します。ユーザーテストを検討されている方は、ぜひご覧ください。

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目次
ユーザーテストとは
ユーザーテストとは、ターゲットとなる一般の方に、実際に起こり得る利用シーンに沿って商品やサービスを使ってもらう様子を観察して問題点を発見する、定性調査手法の一種です。
Webのユーザーテストにおいては主に、新規のWebサイト立ち上げにおける0→1のUI/UXを考えるときや、既存のUI/UXを改善するときなどに行われます。テストに協力してくださるユーザー(モニター)が操作するシーンを目の前で観察しながら、迷ったり戸惑ったりした部分を記録し、「なぜ迷ったのか」をヒアリングして、課題となる事項であればブラッシュアップして改善につなげることが可能です
ユーザーテストの進め方
ユーザーテストの流れは、その目的や商品・サービスによっても異なりますが、おおまかな流れは以下の通りです。
(1)テストの目的を決めてタスクを設計する
「ユーザーテストで何を検証するのか」という目的を明確にするとともに、ユーザーテストで実施するタスクを設計します。また、そのタスクに対してユーザーがどのような行動をとるべきかについて仮説を立てておきます。
(2)モニターを集める
ユーザーテストに協力してもらうモニターを募集します。ターゲットユーザーの属性やニーズに適したモニターを集めることがポイントです。
(3)ユーザーテストを実施する
あらかじめ設計したタスクにのっとり、テストを実施します。
(4)検証結果を分析する
ユーザーテストの結果とあらかじめ考えておいた仮説を比較し、乖離のあった部分を明確にして検証します。
それぞれの項目について、詳しく解説しましょう。
STEP1:目的を設定する
まずは、ユーザーテストを実施する目的を決めるところから始めます。ユーザーテストで、どのような問題点を明らかにするのか、ポイントを挙げていきながら、テストの目的を設定します。
どのような意図を伝えたいのか
事業者側の意図する内容がユーザーに正しく伝わらなければ、ユーザーは適切な行動を起こしてくれません。意図を正しく伝えるうえで、そもそもWebサイトを通じて「何を成し遂げたいか」を改めて確認することが大切です。その振り返りをすることで、ユーザーテストの目的や内容がぶれず、その後の改善方針を明確に立てやすくなります。
問題点の発見
ユーザーテストでポイントになると思われる問題点について、あらかじめピックアップすることも大切です。実際に操作をしてみて「使いにくい部分はないか」「ここを改善すれば使いやすくなるのではないか」など、ユーザーが迷いそうな部分を把握することで、この後に紹介するタスクを設計しやすくなります。
【動画配信アプリUI/UX改善プロジェクトでの目的例】
■ 調査目的
はじめて『●●●●(注:サービス名)』を利用するユーザーに、アプリを使っていただく様子を観察、インタビューすることで、基礎的なユーザビリティ上の問題点を明らかにし、リニューアルにおけるユーザー側のポイントを洗い出します。
■ 調査課題
先行して行った行動データ分析(ボリュームゾーン)、アンケート(ボトルネック)をもとに優先度が高いと判断された、以下2つのタスクを対象に検証します。
- 動画を閲覧する(コンテンツ軸でのナビゲーション)
- その他のコンテンツをさがす(作品軸でのナビゲーション)
STEP2:ユーザーの行動を想定する
ユーザーテストでは、モニターが何らかの目標をもってタスクを進めていきます。そのときに、デザイン側の意図としてどのような行動を取ってもらうことが理想なのか、仮説を立てておくことが重要です。 事前に仮説を立てておけば、仮説から外れたときの発見がしやすくなり、その都度モニターに外れた原因の追究することで、問題点の洗い出しや分析がしやすくなります。
目的に沿ったタスクの設定
ユーザーテストは、「モニターにタスクの実行を依頼して、その様子を観察する」ものです。そのため、モニターに実行してもらうタスクの設計が、重要になってきます。 「あなたはお子さんのためにプレゼントを買おうとしている」といったスタート地点の状況設定と「プレゼントを購入してください」といったゴールを定義し、テストで実施するタスクを選定しましょう。
想定される動きを書き出す
タスクの設定とあわせて、想定されるモニターの行動を書き出し、行動予測としてまとめます。
タスクの作成で注意しなければいけないことは、モニターが独力でタスクを達成するように、細かな指示までは書かないこと。「ここをクリックする」「○○と入力する」といった操作を誘導する内容だと、ユーザーテストの精度が下がり目的を果たしにくくなります。ユーザーテストは、モニターが操作するうえで「何を感じたか」が重要ですから、自由に行動できるようなタスクを作成することがポイントです。
【動画配信アプリUI/UX改善プロジェクトでのタスク例】
■ タスク1
あなたは●●●●●(番組名)が好きで、テレビ放送を見ているだけだと手に入らないコンテンツもいろいろと探したいと思っています。
→ 興味があるコンテンツを探してください
■ タスク2
あなたは●●●●●(番組名)が好きで、毎週●曜日AM9:00からのテレビ放送を楽しみにしています。しかし、この日曜日はAM11:30に起床してしまい見逃してしまいました。
→ 見逃した回を視聴してください
STEP3:モニターを集める
ユーザーテストに協力していただくモニターを集める際には、ターゲットとなるユーザー像を明らかにすることが大切です。テストの目的にもよりますが、年齢や性別などの属性でモニターを集める場合もあれば、年齢・性別を問わずニーズを重視して集める場合もあります。必要な人数も含めて、ユーザーテストに適した協力者を集めましょう。
ターゲットを検討する
モニターを選定するにあたり、ターゲットユーザーを明確にする作業が必要です。自社の商品やサービスを使ってもらいたい人として興味関心の度合いや知識レベルといった視点から選ぶのがユーザーテストの基本です。
「そのWebサイトを利用するのはどんな人なのか?」「どのような課題やニーズがあり、どんな手段で訪れるのか」など、ターゲットユーザー像を明らかにし、適任者を選定することが大切です。
【動画配信アプリUI/UX改善プロジェクトでのターゲット条件例】
■ 調査参加者
●●●●(注:サービス名)のターゲットユーザー 5人
<必須条件>
・●●●●●作品に興味があり、お金を払って視聴している人
※ただし、既存ユーザーおよびコア過ぎるファンはなるべく避ける(判別できる範囲で)
※子供に見せているが自分は見ていないといった人は避ける
<任意条件>
・地域:指定なし
・年齢:20代〜30代を中心にバランス良く
・性別:バランス良く
※情報としては取得しておき、後で参考にしながら選ぶ
テスト完了までの流れを設定する
ユーザーテストの日程を検討して、当日のスケジュールを検討します。あわせて、必要な機材や撮影用のカメラ、謝礼を準備するとともに、当日の進行担当者、観察担当者、必要に応じてオブザーバーやガイドなどのスケジュールも調整しましょう。
最近はオンラインで実施するユーザーテストが増えていますが、モニターにテスト会場まで足を運んでもらう場合には、交通費についても検討しましょう。

自社で集めるか、業者を使って集めるか
ターゲットや日程が決まったら、モニター募集を開始します。知り合いや身内に協力してもらえるのであればコストを抑えられますが、求めるターゲットユーザーに該当しなければユーザーテストの意味がありません。外部の専門会社に依頼して集めてもらうとコストはかかりますが、条件にマッチする人材が集まりますからテストの精度が高まります。
参考:pivo(ピボ)
インタビューの準備
テスト中は、モニターに対して進行担当者がタスクを提示しながら進めます。その際、基本的には、タスクの実行中にモニターが迷ったところで「なぜ迷ったのか」とヒアリングをしていきますが、あらかじめ質問事項を作成しておくと便利です。実行するタスクから想定される質問項目を洗い出し、1つのタスクに対して3問くらい用意しておくとよいでしょう。
質問事項は、モニターが自由に回答できるような問いにすることがポイントです。「このサービスを利用したいですか?」という質問だと「はい・いいえ」で終わってしまいますが、「なぜ、このサービスを利用したいのですか?」と聞けば、その理由を含めてユーザーが考えていること、抱える本質的な課題なども話してもらえるでしょう。
STEP4:当日の動き・心構え
ユーザーテストの当日は、事前に用意した流れにしたがって、進めていきます。しかしいきなり本番では、あなた自身が緊張し、モニターの方も緊張してしまいます。パソコンやスマートフォンなどのデバイス、撮影用のカメラ、ICレコーダーなど、必要な機材をセッティングしたうえで事前にリハーサルを行いましょう。
モニターの行動を観察するのがユーザーテストの目的のひとつですから、観察担当者は、一人ひとりのモニターの行動をしっかり確認する必要があります。タスクをお願いした後は、動きが止まっても様子を見守り、質問を受けてもまずは「〇〇さんはどう思いますか?」と相手の考えを先に聞きましょう。
また、事前の予想から外れたところがあれば、何が起きたかという事実だけメモをとり、「独力でタスクを完了できたか」「途中で迷ったり、つまずいたりしなかったか」「最終的に満足して使ってもらえたか」など、つぶさにチェックしていきます。

STEP5:インタビュー後の分析
テストを終えたら、モニターからヒアリングした内容をまとめて、分析や評価を行います。設定した仮説と比べながらテストの結果を振り返り、ユーザー心理や改善すべきポイントなどの発見点をまとめましょう。
ある問題に何人が遭遇したかではなく、その原因に再現性がありそうかを見抜くことがポイントです。 課題は細かい内容も含めると、たくさん見つかるでしょう。一つひとつを解決することも大切ですが、重要な課題に優先順位をつけて対処していくことで、その後の改善計画が立てやすくなります。
課題のマッピング
分析した課題の解決策を考える際に、優先順位をつけることで、効率よく改善が進められます。例えば、課題を解決することで「ユーザーにとってのメリットが大きいか、小さいか」、解決するために「対応工数が大きいか、小さいか」という二軸などで課題をマッピングすると、どの課題をいち早く対処すべきかがわかりやすくなります。
メリットが大きく工数が小さいものは改善に向けていち早く着手できますし、メリットが小さいのに工数が大きければ改めて検討する必要があるでしょう。開発担当者や営業担当者など、さまざまな立場の人が集まって検討しながら優先順位を決めましょう。
マッピングで、重要課題を見つける→定例分析フレームワークの順で進めると、効率が良くなります。
定性分析フレームワーク
改善点をどう見極めるのか、を進めるにあたり、事実→評価→原因→改善策の順に考えることをおすすめいたします。
よくある例としては「ユーザーが見つけづらそうだった」というメモを取った場合、これは事実ではなく見ていた方の評価になり、事実としては「ユーザーがクリックしたり戻ったりを3回繰り返した」となります。
【動画配信アプリUI/UX改善プロジェクトでの分析例】
事実:■■■■■(作品名)に関連するコンテンツを探そうと「オリジナル」カテゴリー内の⼀覧を眺めるが⾒つからず、「ちょっとわからないな」と⾔ってトップに戻った。
↓
評価:興味のあるコンテンツが⾒つからない。あるいは、このサービス内にそのようなコンテンツが存在していると思わなくなる。
↓
原因:作品に関連するコンテンツが、種類(動画、ニュース、ファン投稿…)ごとに散乱していて、動画カテゴリーで探した後、ニュースカテゴリーに戻って探し直さなければならない。
↓
改善案:作品ごとに、関連するすべてのコンテンツを集約したハブとなるページを作る。
ユーザーテストを実施するメリットのひとつが、アクセス解析などの定量分析では見えなかった課題やニーズを発見したり、モニターへのヒアリングで得た意見から改善のヒントを得られたりすることができる点です。
数字だけを見て試行錯誤しても、改善されない課題はあります。そうした課題を、ユーザーテストを通じて適切な改善施策を実施できる点が、大きなメリットといえるでしょう。
まとめ
UXをデザインする際には、ユーザー体験に対する理解を深めることが大切です。そのひとつの手法が、「ユーザーテスト」です。Googleアナリティクスなどの定量分析だけではわからないユーザーの行動や心理までを把握することで、ユーザビリティに長けたコンテンツの制作や改善につなげられます。
また、テストの準備を進める際に、Webサイトの目的やターゲットユーザーの把握といった基本的な部分を再確認できますから、現状を改めて考え直すきっかけにもつながります。
定量分析を実施しているが改善が見られないなどのお悩みを持っている方は、定性分析のひとつであるユーザーテストを検討してみてはいかがでしょうか。
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