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新規事業アイデアが出ないのは当たり前──誰もが通る壁を越える3つのヒント

「新規事業アイデアが出ない…」と悩むのは、あなただけではありません。

実際のところ、筋の良い新規事業アイデアは簡単に出ないのが当たり前です。なぜなら、売れるアイデアとは次のような”前人未到”の発想だからです。

  • まだ誰も気づいていなかった課題を解決するもの
  • 気づいてはいたが誰も解けなかった課題を解決するもの  
  • 既存の解き方を超えて、これまでの誰よりもうまく解決するもの  

フレームワークを使えばアイデアの数は増やせますが、それは誰もが思いつけるレベルにとどまりがちです。もしそれだけで良いアイデアが見つかるのであれば、きっと既に何かのサービスや商品として形になっているでしょう。  

この記事では、新規事業において『良いアイデアが出ない』と感じるとき、どんな状況に陥っているのか、そしてその行き詰まりをどう乗り越えればよいのかを具体的に解説していきます。

1.良い新規事業アイデアが出ない時のよくあるケース

新規事業で「アイデアが出ない」と感じているとき、その悩みの正体は「何も思いつかない」ことだけではありません。

実際には、いくつかの異なるパターンが存在します。

たとえば、事業領域が決まらずに考えが広がりすぎている場合もあれば、アイデアはいくつかあるのに自信が持てず、前に進めないというケースもあります。
中には、一度決めたアイデアに確信が持てず、迷い続けてしまう人もいるでしょう。

つまり「アイデアが出ない」とは、単に“思いつかない”状態ではなく、思考や判断の整理ができていない状態なのです。

この章では、そうした「良いアイデアが出ない」状態を4つのタイプに整理しながら、あなたが今どの段階で立ち止まっているのかを一緒に見極めていきましょう。

1-1. 事業領域が決まっていない

新規事業の初期段階で最も多いのが、「どの領域で勝負すべきか決められない」という悩みです。
複数の事業領域に対してそれぞれいくつかのアイデアはあるものの、どこにフォーカスすべきかが定まらず、思考が前に進まなくなってしまう。そんな状況に陥るチームは少なくありません。

なぜこの状態になるかというと、事業領域を選ぶための“判断軸”が曖昧なまま進んでいるからです。
たとえば、金融業界の企業で「保険」「証券」「投資」「相続」など複数の候補が並び、上層部からは「自由に考えていい」と言われているケース。
一見すると自由度が高そうですが、方向性を定める基準がないために、逆にどれも決め手に欠けてしまいます。社内調整も難航し、「どれが正しいのか」わからないまま議論だけが続いてしまうのです。

ここで重要なのは、事業領域を“決める”ことが目的ではないということで、大切なのは、「なぜその領域なのか」を説明できる基準と仮説を持つことです。

顧客課題の深さ、既存プレイヤーの未解決領域、自社が活かせる資産、この3つを軸に、まずは仮の方向性を定めてみるのが良いでしょう。

  • 顧客課題の深さ:顧客がどれだけ強い痛みや不満を抱えているか。
  • 未解決領域:既存のサービスで満たされていないニーズがあるか。
  • 自社資産との親和性:自社がその課題解決にどれだけユニークな力を発揮できるか。

これらの観点で一度仮決めしてみると、アイデアは一気に具体的になります。
判断を恐れて考え続けるよりも、仮説を立てて検証するプロセスに進むことが、停滞を脱する第一歩になるのです。

1-2. 良いアイデアが1つも浮かんでこない

新規事業を任されたとき、真っ先にぶつかる壁が「良さそうなアイデアがまったく浮かばない」という状況です。

頭の中では何となく方向性を考えていても、「これだ」と思える案が出てこず、気づけば時間ばかりが過ぎていく。そんな焦りを感じたことはありませんか?

多くの場合、この状態の原因は「アイデアを出さなきゃ」というプレッシャーに意識が向きすぎていることです。

つまり、“良いアイデア”を出そうとするあまり、アイデアの基礎となる課題理解や顧客の具体像を深掘りできていないのです。

たとえば「保険の見直し」というテーマを与えられたときに、「AIが最適なプランを提案するサービス」など、どこかで聞いたことのある案しか出てこない。そんな経験をした方も多いでしょう。

それは発想力の問題ではなく、インプットの解像度が低いからです。顧客がどんなタイミングで保険を見直すのか、どんな心理的ハードルを感じているのか。そうしたリアルな情報がない状態では、出てくる発想も表面的になってしまいます。

この段階でやるべきことは、「良いアイデア」を出すことではなく、“良い問い”を立てることです。

つまり、「顧客はどんなときに困っているのか」「なぜ既存のサービスでは解決できていないのか」という問いを設定し、その答えを探す中でアイデアが自然と生まれていくようにするのです。

行き詰まりを感じたときこそ、

  • 顧客の声を直接聞いてみる
  • 現場や口コミなど“生の行動”に触れる
  • 自分たちが「なぜそのテーマに関心を持ったのか」を振り返る

こうしたシンプルな行動が、発想を動かすきっかけになります。
良いアイデアを出す」よりも前に、「良い問いを持つ」ことから始めましょう。

1-3. 良さそうなアイデアがいくつかあるが、決定打がなく一つに絞れない

「アイデアは出たけれど、どれも決め手に欠けて選べない」。

この段階に入ると、チームの議論は一見活発に見えますが、実際には前に進めなくなりがちです。
なぜなら、どのアイデアも“そこそこ良さそう”に見える一方で、「なぜこれがベストなのか」を説明できない状態だからです。

よくあるのは、「保険の知識が楽しく身につく」「見直しのきっかけに気づける」「将来の安心度が可視化される」など、方向性の異なる案が複数並んでいるケースです。

どれも魅力的に感じますが、選ぶ基準がないままでは「勘で決めるしかない」と不安になり、結局どれも選べないまま時間だけが過ぎていきます。

このような状態を抜け出すには、“良いアイデア”を探すのではなく、“解くべき問い”を明確にすることが重要です。

つまり、「私たちは誰の、どんな課題を、どのように解こうとしているのか」を言語化すること。
この“問いの精度”が上がれば、自然と取るべき方向も見えてきます。

具体的には、次の3つのステップで整理してみると良いでしょう。

  1. 顧客像を具体化する:誰にとっての価値かを一人称で描いてみる。
  2. 課題の本質を言語化する:その人が何に困っているのか、なぜ既存の方法では解決できないのかを掘る。
  3. 価値仮説を明確にする:「その課題に対して、私たちはどんな新しい価値を提供できるのか」を定義するく

この整理を行うと、「どのアイデアが最も本質的な課題を解いているか」が見えてきます。
決め手とは、派手な発想のことではなく“解くべき問い”に最も誠実に向き合っている案のことなのです。

1-4. 手元のアイデアに自信が持てない

新規事業の初期では、「一応アイデアはあるけれど、本当にこれでいいのか?」と迷う瞬間が必ず訪れます。
チームで検討を重ねてようやく1つに絞ったものの、どこか確信が持てず、進めるたびに不安がよぎる……そんな状態です。

多くの場合、その不安の正体は「他にもっと良いアイデアがあるのでは?」という迷いです。
しかし実は、この迷いこそが“良い兆候”でもあります。
なぜなら、新規事業において最初から完璧なアイデアなど存在しないからです。

本当に大切なのは、最初の案を「正しい」と信じることではなく、「検証しながら磨いていく」姿勢を持つことです。

たとえば、「保険の見直しのきっかけに気づける」サービスを考えたチームがあったとします。
顧客インタビューでは悪くない反応が得られているものの、「手応えがない」「刺さりきらない」と感じる。
このときに「やっぱりダメかもしれない」と引き返すのではなく、「どの部分がピンとこなかったのか」「どうすればもっと響くか」を探ることが重要です。
この“違和感”こそが、仮説を磨くための手がかりになります。

つまり、自信のなさ=不確実性のサインであり、それを確かめるのが次のステップなのです。
顧客に見せて反応を確かめる、別の表現で伝えてみる、少人数でも検証してみる、そうした“確かめる行動”を取ることで、徐々に確信が形づくられていきます。

「迷いがあるからこそ、学びがある」。
新規事業とは、確信をもって始めるものではなく、確信をつくっていくプロセスです。
焦らず、検証を積み重ねながら「これならいける」と思える瞬間を育てていきましょう。

2. 良いアイデアが出てこない5つの理由

「どうして、良いアイデアが出てこないのだろう?」

新規事業に取り組む人なら、誰もが一度はそう感じたことがあるのではないでしょうか。
実は、“アイデアが出ない”という現象の裏には、いくつかの典型的なパターンが存在します。
それは決して、あなたの発想力や創造性が欠けているからではありません。考え方の順序や、取り組み方の前提がずれているだけなのです。

たとえば、漠然としたままアイデアを出そうとしていたり、ブレインストーミングを“アイデアを生む場”だと誤解していたり、あるいは、曖昧なアイデアを評価できずに止まってしまったり、チーム内だけで正解を探そうとしていたり……。

こうした進め方のズレが、結果的に「どれもピンとこない」「何を基準に選べばいいかわからない」という状態を生み出してしまいます。

この章では、良いアイデアが出てこない5つの理由を具体的に整理します。
「なぜ行き詰まるのか」を正しく理解することで、次に何を変えればいいのかが見えてくるはずです。

あなたのチームの“思考の止まり方”を一緒に見直していきましょう。

2-1. アイデアを漠然と考えようとしているから

良いアイデアが出てこないとき、多くの人がやってしまうのが「とりあえず考えてみる」というやり方です。
しかし、頭の中でなんとなく考えているだけでは、どれだけ時間をかけても“ぼんやりした発想”しか出てきません。
なぜなら、漠然としたインプットからは、漠然としたアウトプットしか生まれないからです。

たとえば、上司から「Z世代向けに何か考えてみて」「金融×子育ての領域で何かできないか」と言われたとします。
一見、自由度がありそうですが、テーマが広すぎると焦点が定まらず、「どこから考えればいいのか」がわからなくなってしまいます。
この状態では、頭の中で過去に見聞きしたアイデア、つまり既存の発想ばかりがリピート再生され、結果的に「どこかで聞いたことがある案」しか出てこないのです。

ここで重要なのは、「頭の中ではなく、現場で考える」という発想への切り替えです。
つまり、机上でアイデアをひねり出そうとするのではなく顧客の行動や言葉、迷いに触れることから始めるということ。
実際に顧客の生活の場に足を運び、観察したり話を聞いたりすることで、アイデアのもとになる“具体的な視点”が生まれます。

たとえば、金融サービスを検討しているチームが店舗を訪れ、顧客の手続きの様子を見てみると、「書類記入が複雑すぎて何度もやり直している」という小さな課題を発見できるかもしれません。
これは机の上では絶対に思いつかない発想です。こうした“リアルな課題”に出会うことで、アイデアは一気に具体性を帯びていきます。

つまり、発想の出発点は「考える」ではなく「見る」「聞く」「感じる」こと。
頭の中をいくら整理しても、現場のリアリティがなければ意味がありません。

良いアイデアを生む第一歩は、現場に出て1つの課題を見つけることから始まるのです。

2-2. ブレインストーミングでアイデアを出そうとしているから

「みんなでブレストをやれば、きっといいアイデアが出るはず」
そう信じて、ホワイトボードの前に集まった経験はありませんか?

しかし実際には、ブレストを重ねてもピンとくるアイデアが出ず、終わったあとに「今日も収穫なしだったな…」と感じることが多いのではないでしょうか。

それもそのはずです。
ブレストは“アイデアを生み出す場”ではなく、“問いを磨くための場”だからです。
多くのチームは、ブレストを「アイデアを大量に出すこと」が目的だと捉えていますが、本質的には違います。
本当に有効なブレストとは、出てきたアイデアをもとに「なぜそう思うのか」「その裏にどんな課題があるのか」を掘り下げ、どんな問いを立てるべきかを見つけていくプロセスなのです。

たとえば、最初のブレストで「保険の見直しをもっと気軽に」「家族で話せる金融サービスを」などの案が出たとします。
ここで重要なのは、そのアイデアを“採用するかどうか”ではなく、「なぜそう感じたのか」を議論することです。

「保険を見直したいけれど、どこから手をつければいいかわからない」「金融の話題は家族で話しにくい」
そうした“背景の課題”が見えてくると、次に立てるべき問いがより明確になります。

つまり、良いアイデアとは、磨かれた問いの副産物です。
「問い→アイデア→検証→問い…」という往復運動を繰り返すことで、徐々に本質的な発想へと近づいていきます。

ブレストで大切なのは、数ではなく“深さ”です。
たくさんの案を出すよりも、1つのアイデアの背後にある課題や価値を丁寧に言語化すること
そうすることで、単なる思いつきではない、“解くべき問いから生まれるアイデア”が形になっていきます。

2-3. アイデアが漠然としていて良し悪しを評価できずに止まってしまうから

「アイデアは出たけれど、なんだか評価できない」
そんな状態に陥ったことはありませんか?これは、多くのチームが共通して抱える停滞のパターンです。
原因はシンプルで、アイデアの具体度が低すぎて、そもそも評価できるレベルに達していないことにあります。

たとえば、ブレストのメモに「保険を楽しく学べるアプリ」とだけ書かれていたとします。
一見わかりやすいようですが、人によって思い浮かべるイメージはまったく異なります。
ある人は「ゲーム感覚で学べるアプリ」を想像し、別の人は「動画で学ぶ教材アプリ」を思い浮かべるかもしれません。
このように、イメージが共有されていない状態で議論しても、「面白そう」「地味だね」といった印象論に終始し、議論がかみ合わなくなってしまいます。

評価できるアイデアとは、誰が・どんな状況で・どのように価値を得るのかが具体的に描かれているものです。
それを整理するために有効なのが、「ストーリーで表現する」というアプローチです。
つまり、1人の顧客を主人公にして、「どんな場面で」「どんな課題にぶつかり」「それをどう解決するのか」という流れをストーリーとして描くのです。

このストーリー化の作業によって、

  • アイデアが解決しようとしている課題が明確になる
  • チーム全員が同じイメージを共有できる
  • 評価の基準が「好き嫌い」ではなく「課題を解けているか」に変わる

という効果が生まれます。

こうして初めて、「このアイデアは有効か?」「どこを改善すべきか?」といった建設的な議論が可能になります。

アイデアは、曖昧なままでは進みません。
“ふせん一枚の発想”を、具体的な顧客体験のストーリーに変換すること。
それが、アイデアを磨くための第一歩です。

2-4. 自分たちだけで評価しようとして、アイデアが進まないから

新規事業の現場でよく見られるのが、「チーム内で議論を重ねても、結論が出ない」という状況です。
なぜそうなるのかというと、自分たちだけで“良いアイデア”を決めようとしているからです。
つまり、評価の基準がチームの中だけに閉じてしまっているのです。

たとえば、チームの全員が「これは絶対ウケる!」と一致して盛り上がったアイデアが、いざユーザーに見せてみると、思ったほど反応が良くないなど、そんな経験はありませんか?
これは珍しいことではなく、むしろ多くの新規事業チームが通る“勘違いの壁”です。
なぜなら、どれだけ自信があっても、そのアイデアを買うのは顧客だからです。

つまり、アイデアの良し悪しを決めるのは、あなたでも上司でもなく顧客です。
にもかかわらず、自分たちだけで議論を重ねていても、いつまで経っても答えは出ません。
顧客が「欲しい」「使いたい」「お金を払ってでも解決したい」と感じる瞬間を見極めるには、実際に顧客の声や反応に触れるしかありません。

ここで大切なのは、最初から完璧なリサーチを目指す必要はないということ。
完成度の高いプロトタイプを作らなくても、ストーリーボードを見せるだけで十分です。
「どんな場面でこれを使いたいと思うか」「いまのやり方では何が不便か」など、顧客との対話を通じて得られる気づきは、どんなブレストよりも価値があります。

アイデアを磨くとは、机の上で考えることではなく、顧客と一緒に確かめていくことです。
外の世界に一度でも触れれば、次に取るべき方向が自然と見えてきます。
「私たちは正しいか?」ではなく、「顧客にとって価値があるか?」という視点に立ち返る。
それだけで、アイデアは一気に動き出します。

2-5. キラリと光るアイデアが出てくると思っているから

多くの人が新規事業のアイデアを考えるとき、心のどこかで「いつか“これだ!”という閃きが降ってくるはず」と期待しています。

けれど現実は、その“キラリと光るアイデア”は、最初からはほとんど存在しません。
むしろ、最初はどれも地味で、手応えのないものばかりです。

良いアイデアとは、最初から光っているものではなく、磨かれて光るものです。
最初の段階では誰も注目しなかったような小さな気づきが、顧客理解を重ねる中で「これが本当に解くべき課題だ」と確信に変わり、そこから価値が立ち上がっていく。
多くの成功した事業は、そうした地味な原石から始まっています。

たとえば、「何かすごいサービスをつくろう」と意気込んでブレストを重ねても、どの案も物足りなく感じて進まない。
これは、“最初から完成されたアイデア”を探していることが原因です。
完璧な答えを探すよりも、「少し気になる」「顧客が困っていそう」と思える、小さな仮説を拾い上げ、検証を通して磨いていくこと が何より大切です。

重要なのは、“アイデアを探す”のではなく、“育てる”という発想を持つこと。
最初は曖昧で粗削りでも、顧客との対話を重ねるうちに「本当に価値があるもの」に変わっていきます。
だからこそ、光るアイデアを待つのではなく、原石を拾って磨く姿勢が求められるのです。

良いアイデアは、探すものではなく、見つけて育てるもの。
あなたの手の中にある“まだ光っていない小さな種”こそが、未来の事業の核になるかもしれません。

3. 新規事業アイデアが出ない状況を打破する3ステップ

ここまで見てきたように、「良いアイデアが出ない」という悩みの裏側には、思考の順序や進め方のズレが隠れています。
ですが、安心してください。これは才能やセンスの問題ではなく、プロセスの問題です。
つまり、正しい順番で行動すれば、誰でも着実に“良いアイデア”を生み出すサイクルを回せるようになります。

良いアイデアとは、突然ひらめくものではなく、 顧客理解を通じて徐々に育っていくものです。
①「現場での課題の観察」②「ストーリーボードによる仮説の可視化」③「顧客との対話」、この3つのステップを繰り返すことで、曖昧だった発想が少しずつ形になり、「これだ」と思える問いに近づいていきます。

この章では、「アイデアが出ない」状況を打破し、チームの思考を再び前に進めるための具体的な3ステップを紹介します。

停滞を抜け出す鍵は、“考える”ことよりも“確かめる”こと。
一緒に、動きながら磨くプロセスを見ていきましょう。

3-1. 現場に行き、顧客の課題を『1つ』発見する

新規事業のアイデア出しで最初にやるべきことは、 “考えること”ではなく“実際に見に行くこと”です。
どれだけ会議室で議論を重ねても、机上の空論では「リアルな課題」にたどり着くことはできません。
まずは現場に出て、顧客の行動・言葉・ため息など、そうした“生の情報”に触れることから始めましょう。

なぜ現場が重要なのか。それは、漠然としたインプットからは、漠然としたアイデアしか生まれないからです。
一方で、実際の顧客の行動を目の当たりにすると、想像していた課題と現実の課題がまったく違うことに気づきます。
たとえば、金融系サービスを検討していたチームが店舗を訪れ、顧客の手続きの様子を観察したところ、
「書類の記入が複雑すぎて、何度も窓口でやり直している」という課題を発見しました。
この気づきがきっかけとなり、「オンラインで事前に入力できる仕組み」という具体的な発想へとつながったのです。

ここで大切なのは、「大きな課題を見つけよう」と意気込まないこと。
最初の目的は、“課題を1つだけ見つける”ことです。
1つの小さな課題を深く観察し、その背景や文脈を理解することで、次の発想の糸口が自然に見えてきます。

現場での観察を通じて見えてくるのは、顧客の「不満」だけではありません。
そこには「工夫」「妥協」「あきらめ」といった、人のリアルな行動の理由が隠れています。
それを掘り下げていくと、「なぜ困っているのか」「どんなときに助かると感じるのか」という解像度の高い問いが浮かび上がります。

つまり、発想の出発点は“課題探し”です。
現場に足を運び、心から「これを解きたい」と思える課題を1つ見つける。
それが、良いアイデアを生み出す最初の一歩になります。

3-2. ストーリーボードを『2枚』描く

現場で課題を1つ見つけたら、次にやるべきことはストーリーボードを描くことです。
ストーリーボードとは、「課題 → 解決策 → 価値」を1枚の流れで可視化するツールです。
ポイントは、ここで何十枚も描く必要はなく、方向性の異なる2枚で十分だということです。

参考:ストーリーボードを使ったUXデザインのためのアイデア発想法とは?

なぜ2枚なのかというと、「どの方向性に可能性があるか」を早い段階で確かめるためです。
1枚だけだと視野が狭くなり、逆に5枚以上あると焦点がぼやけてしまう。
2枚という数は、“比較して考える”のにちょうどいいバランスなのです。

たとえば、先ほどの「書類記入が複雑すぎる」という課題に対して、
1つは「オンラインで事前に入力できるアプリ」、もう1つは「窓口で代行サポートを行う訪問サービス」というように、異なるアプローチの2案を描き出します。
ここで大切なのは、どちらが正しいかを決めることではありません。
「この2つをもとに顧客と対話できる状態をつくる」ことが目的です。

ストーリーボードを描くことで、チーム内で共有できるイメージが格段にクリアになります。
ふせんや箇条書きのアイデアとは違い、顧客の行動と感情の流れが具体的に見えるからです。

その結果、

  • チーム全員が同じイメージで議論できる
  • 顧客インタビューで的確な質問ができる
  • 検証の焦点が明確になる

といった効果が生まれます。

重要なのは、“完璧なアイデアを選ぶ”ことではなく、顧客との対話を引き出せるだけの具体性をもった2案を形にすること。
その2枚が、次のステップ、顧客に確かめるフェーズへの橋渡しになります。

3-3. ターゲットとなる顧客「3人」に見せる

2枚のストーリーボードができたら、次にやるべきことはターゲットとなる顧客に見せることです。
ここで重要なのは、調査対象を何十人も集める必要はないということ。
まずは、3人で十分です。

なぜ3人かというと、少人数でも反応の傾向や“パターン”が見え始めるからです。
1人だけだと個人の嗜好に左右されすぎますが、3人の話を聞くと、「この反応は特定個人ではなく構造的な課題かもしれない」と見えてきます。
つまり、3人というのは“次に進むための仮説を得る”のにちょうど良い数なのです。

ここでの目的は、アイデアを採用してもらうことではなく、顧客の反応の中から再現性のある気づきを得ることです。
たとえば、「事前入力アプリ」のストーリーボードを見せた際に、ある顧客が「平日は役所に行けないから助かる」と言ったとします。
その言葉の裏には、「平日昼間に手続きができない層」という新しいターゲットの存在が示唆されます。
一方で、「そんなに手続きの頻度は高くないから不要」と否定された場合も、それは「利用頻度の少ない層には価値を感じにくい」という学びになるのです。

こうした“反応の背後にある理由”を掘り下げることで、単なる好悪の声ではなく、価値判断の構造が見えてきます。そしてそれこそが、次の問い「どんな課題を、誰に、どんな形で届けるべきか」を磨くヒントになります。

大切なのは、顧客に「どちらがいいと思いますか?」と聞くのではなく、
「なぜそう感じたのか」「どんな場面で役立ちそうか(あるいはそうでないか)」を聞くこと。
反応そのものよりも、その背後の“なぜ”を理解することが、アイデアを一段階進化させる鍵になります。

3人のリアルな声を通して、“顧客の文脈”が少しずつ立ち上がってきたら、
それはもう次のステップ「問いの再構築」へと進めるサインです。

3-4. 第三者にファシリテーションしてもらう

ここまでの3ステップ、①「現場での課題の観察」②「ストーリーボードによる仮説の可視化」③「顧客との対話」、これらを繰り返すことで、確実にアイデアは磨かれていきます。

しかし、実際にチームで進めてみると、「何を深掘ればいいのか分からない」「議論がすぐに横滑りしてしまう」といった壁にぶつかることも多いのではないでしょうか。

それは自然なことです。なぜなら、顧客理解のプロセスはシンプルに見えて、実はとても繊細だからです。

どこまでが“課題”で、どこからが“解決策”なのか。どの顧客の声に注目すべきで、どれをノイズとして扱うべきか。この判断をチーム内だけで行うのは、思った以上に難しいのです。

そこで有効なのが、第三者によるファシリテーションです。外部の視点が入ることで、チームの思考の癖や前提が客観的に整理され、「本当に今確かめるべき論点」がクリアになります。

ファシリテーターは、曖昧なアイデアの中から「課題」「価値」「解決策」という3つの要素を抽出し、
それらを顧客体験として必要十分な形に可視化していく役割を担います。

たとえば、顧客インタビューをどう設計するか、どんな質問をすれば本音を引き出せるか。
また、インタビュー後にどんな観点で学びを整理し、次の仮説につなげるか。
こうしたプロセスを中立的な立場でリードしてもらうことで、顧客理解の精度が一気に上がるのです。

そして何より、第三者がいることでチームの心理的負担も軽くなります。
「正しい進め方が分からない」「誰もブレーキを踏めない」という状態を防ぎ、冷静に思考を整理しながら前に進めるようになります。

もし今、アイデア出しや顧客理解のプロセスが停滞しているなら、外部のファシリテーションを取り入れることは決して“逃げ”ではなく、“加速の手段”です。

専門的な伴走者とともにサイクルを回すことで、あなたのチームが“迷いながら進む”段階から、“確信を持って磨く”段階へと進化していくはずです。

4. まとめ

「新規事業のアイデアが出ない」という悩みは、決して珍しいことではありません。
多くのチームがこの壁にぶつかり、そこで立ち止まってしまいます。しかし、それは“発想力の問題”ではなく、“進め方の問題”です。

良いアイデアは、突然降ってくるものではありません。
現場に出て顧客と向き合い、課題を観察し、仮説を形にして、確かめる。この地道なサイクルを通して、少しずつ育っていくものです。

もし今、「何も思いつかない」「自信が持てない」と感じているなら、それは“まだ課題に出会っていないだけ”かもしれません。

アイデアを探すよりも、顧客の現実に近づくことに時間を使ってみてください。そこには、あなたが本当に解くべき「問い」が隠れています。

そして、その問いが見えてくれば、自然とアイデアは湧き上がります。
やるべきことは明確です。

  1. 現場で、リアルな課題を1つ見つける
  2. それをストーリーにして可視化する
  3. 顧客と対話して、次の問いを磨く

この3つを回すことで、チームの思考は確実に前に進みます。

もし、それでも行き詰まりを感じるときは、第三者の力を借りることを恐れないでください。
えそらLLCでは、顧客理解を中心にしたアイデア検証のファシリテーションを行っています。

  • アイデアの出し方を整理したい
  • 手元の案をレビューしてほしい
  • どこから検証を始めればいいかわからない

そんな時は、どうぞお気軽にご相談ください。


新規事業の成功は、“正しい問い”を立てることから始まります。
あなたのチームがその一歩を踏み出せるよう、貴社のパートナーとして伴走します。

監修者

喜多 竜二

えそら合同会社 代表社員/HCD-Net認定人間中心設計専門家

2009年にUXデザインを専門とする「えそら合同会社」を設立、これまでに新規事業をはじめとする200を超える事業を支援してきた。自身は人をより良く理解するための認知心理学を専門とし、生活者に対する共感を出発点としたアイデア創出に力を入れている。東京大学工学部卒業、シドニー工科大学大学院修了。

この記事を書いた人

加藤 佳子

マーケター/ディレクター

当社代表秘書を経て、現在は社内のマーケティング&セールス活動全般を担当。ゼロからマーケティング体制の立ち上げに従事する。 UXデザインの観点からも「よりよい顧客体験の追求」をモットーに、接点を持たせていただいたお客様に、よりよいコンテンツをお届けできるよう日々活動しています。

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