コロナショックによって、これまで進めていたプロジェクトが止まってしまった、あるいは新しいプロジェクトを開始できないという状況の方も多いと思います。また、外出自粛が続く中でプロジェクトもオンラインを中心に活動することが増え、思ったように進められない状況をもどかしく感じている方もいるのではないでしょうか。
特にデザインプロジェクトをパートナーに依頼している方、もしくはこれから依頼しようと考えている方は、オンラインだと対面でやっていた時のようにうまく進まない/進むのだろうかという不安をお持ちだと思います。
なぜデザインプロジェクジェクトは、オンラインで進めるのが難しいイメージがあるのでしょうか。その原因と対策について解説します。
デザインプロジェクトだけでなく、一般的なオンラインコミュニケーションに起きがちな問題とその対処法についてまとめた記事は以下をご覧ください。
目次
デザインプロジェクトは意思決定の連続
デザインプロジェクトは、様々な課題の中から優先順位の高いものを選んだり、問題解決のための仮説を生み出したり、ビジネス上のメリットデメリットを踏まえてアイデアを選んだりと、基本的には意思決定の連続です。全プロセスを通して様々な意思決定が行われますが、大きく2種類のタイプに分けることができます。
- 総合的な判断(収束的):
デザインのフォーカス(優先順位、目的など)の決定、アウトプットに対する最終判断など - コラボレーション(発散的):
チーム全体の知識や意見を総動員し、生活者を理解したりアイデアを発想したりするなど
デザインプロジェクトでは、この2種類の意思決定が繰り返し行われることになります。
上に挙げた「総合的な判断」では、正しい判断を行うために、プロジェクトメンバーそれぞれが前提や今議論されていることを、正しく理解する必要があります。また一方で「コラボレーション」の場合は、プロジェクトメンバー全員が議論に参加できることや、アイデアを出しやすいような、正しい場作りが必要です。
つまり、意思決定を行う上で、プロジェクトメンバー同士のコミュニケーションが非常に重要になってきますが、これまでは主に、定例会議やレビュー会、ワークショップなど、対面での打ち合わせを通してコミュニケーションがとられてきたかと思います。
これがオンラインに置き換わった時に、うまく行かないということが起きてしまうのは、オンラインが持つ性質が、プロジェクト内のコミュニケーションに問題を引き起こすことが原因と言えるでしょう。
オンラインというシーンが持つ性質と問題
具体的に、どのようなオンラインの性質が、どんなコミュニケーションの問題を引き起こすのでしょうか。特に起きやすいものを見てみたいと思います。
性質1:顔の表情や仕草が読み取りにくい
相手がちゃんと理解できているのか、納得感があるのかなど、気持ちを読み取りづらい
発生する問題:
場の空気を掴みづらくなり、相手がフォローを必要としていることに気づきにくくなり、正しい理解を得られていないまま話が進んでしまうといった状況が発生しやすくなります。
性質2:通信環境の影響を受ける
遅延によって聞き取れなかった部分を想像しながら会話を進めるといった状況が起きやすい
発生する問題:
想像による解釈や理解が行われることになるため、意外と「わかったつもり」になっていたり、認識の相違が発生したりしやすくなります。
性質3:「話者は1人」という空気
誰かが話している途中、どこでカットインしてよいかを読みづらく、疑問点があっても発言しにくい
発生する問題:
意見や疑問があっても適切なタイミングを逃して後回しになりがちです。結局忘れたり時間がなくなったりで発言できないままとなってしまい、納得感が得られないという状況が発生しやすくなります。
性質4:相手は今何を見ているのか分からない
対面で言うところの「お手元の資料」がオンラインでは無いため、同じものを見て会話しているとは限らない
発生する問題:
前提となる情報が異なったり、視覚による補完が無い状態で会話が進んだりすることで、各々が異なる解釈や勘違いを起こし、正しい理解ができていないかもしれません。
性質5:自分の机の上で会話が始まる
物理的に会議室などへの移動が発生せず、普段の机の上で議論をしなければならない
発生する問題:
環境の変化が伴わないことでモードの切り替えが難しく、これから意思決定を行うという状況に気持ちが追いつかない場合があります。
このように、オンラインという状況がコミュニケーションの質に様々な影響を与えます。デザインプロジェクトにおいては、オンラインゆえにコミュニケーションの問題が起きやすいということは意識したほうが良いでしょう。
オンラインでデザインプロジェクトを進めるためのポイント
オンラインであることによって引き起こされるコミュニケーションの問題を回避するために、どのような工夫ができるでしょうか。「総合的な判断」と「コラボレーション」で共通のポイントとそうでないものがありますが、大きく以下の4つを意識することが重要です。
並べてみるとどれも、オンラインでは重要性が増すというだけで、対面の場合でも意識したいことではあります。
①ツールなどの使い方のルールを定める
- ビデオ会議は、大部屋に集まるのではなく、1人1台で表情がよく見えるように
- ビデオ会議は、相槌を大きくうち、話したいことがある時は、ジェスチャーで知らせる
- ビデオ会議は、聞きたいことはないか確認しながら進める
- チャットでは、メールのように形式ばらない
- チャットでは、質問は細かいことでも気軽に書き込んでよい
- チャットでは、ネガティブな発言や指示を全員の目が触れる場所に書き込まない
②会議や定例のやり方を工夫する
- アジェンダ、議事録などドキュメントをしっかりと残す
- 進行資料がある場合は、MTGの開始時に目を通す時間を設ける
- MTGの途中、リアルタイムで議事録をとり、投影・確認しながら進める
- レビュー対象となるデザインや進行資料がある場合、全員が同じものを見て会話をする
- MTGの最後に、次回に向けてのTODOを整理する時間を設ける
- 「総合的な判断」のための会議なのか、「コラボレーション」のための会議なのかを意識する
→ 「総合的な判断」の場合は後述の③に留意しましょう
→ 「コラボレーション」の場合は後述の④に留意しましょう
③正しい理解と判断を促すため、論点を可視化する
- 課題や重要度を把握しやすくするために、共通言語となるインプットを作成する
(ペルソナ、カスタマージャーニーマップなど) - 意思決定しやすいよう、優先度やメリデメ、リスクを整理する
- 意思決定の結果は、過程を含めて、全員が振り返ることができるようにしておく
④適切な場(人、情報、プロセス)を設定する
- 意思決定者にもできれば参加してもらう(ただし全員が発言できる場になるよう留意する)
- ワークショップ形式で行うことも検討する(Miro などを利用する)
- 発散した情報は、意思決定につなげやすいよう、優先度をつけるなどして整理しておく
(優先度付きのアイデア一覧など) - 議論した結果を、アウトプットとしてまとめる
(シナリオ、ワイヤーフレームなど)
まとめ:「オンラインだから」進めにくいのではない
ポイントで見たように、デザインプロジェクトが進めやすいかどうかは、いかにオンラインの性質に合わせたコミュニケーションのとり方を工夫できるかによるところが大きいと言えます。ひとつひとつのことをしっかりと可視化していくことが重要になってきますが、本質的に言えば、それはオンラインでも対面でも変わりません。
コミュニケーションに手を抜かず、丁寧に可視化とレビューを繰り返し、意思決定を行いやすい土台を創り上げていくことが、オンラインによるデザインプロジェクトを成功させる鍵と言えるでしょう。
オンラインでのデザインプロジェクトのご支援も可能ですので、パートナー探しにお悩みの方はぜひお問い合わせください。