UXデザインにおいて最も重要なことの一つは「ユーザーを知ること」です。ただ、ユーザーの何を知れば良いのでしょうか?取っ掛かりがないと、難しいですよね。
本日は、これからUXデザインを始めようとしている方向けに、「ユーザーの何を知るべきか」を30分でざっと洗い出すことができる、ミニワークショップの進め方をご紹介します。
目次
ワークショップの概要
ワークショップの目的
UXデザインでは、ユーザーについてどれだけ理解できているかが一つのポイントになりますが、ユーザーの何をどこまで知れば理解できたことになるのでしょうか?このミニワークショップは、その問いに答えるヒントとして、「そもそも自分たちは何を知らないのか」という大切な気づきを与えてくれます。
- そもそも自分たちはユーザーについて何を知らないのかに気づくことができる
ワークショップの対象者
できれば3人以上いた方が、より多くの気づきが得られるでしょう。
- これからUXデザインを始めようとしているチームメンバー全員
- UXデザインの必要性をプロジェクトメンバーにわかってほしいと思っている方
- リサーチを始めようと思っているが、フォーカスをどこに絞れば良いかわからない方
ワークショップをやるタイミング
このミニワークショップは、「UXデザインプロジェクトの計画を立てる前」にやることを想定しています。何から手を付ければ良いのかを考え始める前に、とりあえず30分だけ手を動かしてみるか、という感覚で取り組んでいただければと思います。
- UXデザインプロジェクトの計画を立てる前、思い立ったらまずやってみる
ワークショップの進め方
下記のワークシートとペンを用意してください。デザイン対象となる体験について、3つの異なる視点でのワークを10分ずつ行います。
ワークシートをダウンロードする(PDF / 28.0 KB)
ワーク1:ユーザーの体験全体を俯瞰しよう(10分)
デザイン対象となる体験全体を5つの『◯◯する』で表現します。「カフェでコーヒーを飲む」という体験の場合、例えば下記を、ワークシートの青色のマスに書き込みます。
<青色のマス>
行動1. カフェに行く
行動2. 注文する
行動3. コーヒーを飲む
行動4. 退店する
行動5.(別の日に)またカフェに行く
語尾が動詞になるところがポイントです。5つに何を選ぶかは人それぞれなので、正解はありません。人によっては「カフェに行こうと思う」「空いている席を探す」「本を読む」など、別の行動を選ぶかもしれませんが、それで構いません。
コツ:メインと思われる行動(上記であれば「コーヒーを飲む」)の前後や繰り返しは意外と抜けがちなので、意識的に時間軸を広げて考えるようにすると良いでしょう。
ワーク2:ユーザーの行動に影響を与える条件を見つけよう(10分)
ユーザーの行動に影響を与えると思う条件、すなわち環境や状況を2つ考えて『◯◯のとき』と表現します。先ほどのカフェのケースであれば、例えば下記を、ワークシートの黄色のマスに書き込みます。
<黄色のマス>
条件1. 雨が振っているとき
条件2. 彼女とのデートのとき
実際には、こうした条件は無数に考えられます。それらの中でも特に大きな影響を与える条件は何か、あなたが思いついた上位2つを選んでください。人によっては「知らない駅にいるとき」「静かに勉強したいとき」「タバコを吸いたいとき」など、別の条件を挙げるでしょうが、それで構いません。
コツ:残念な体験(例:満席で入れない)を想像してみて、それが最悪になる条件(例:彼女とのデートで予約していなくて店に入れず雰囲気が悪くなって…)を考えてみると、出てきやすいでしょう。
ワーク3:ユーザーの期待を想像しよう(10分)
それぞれのタイミング(ワーク1で考えた行動)と状況(ワーク2で考えた条件)において、ユーザーが期待していることを考えて『◯◯があったら良いな!』と表現し、赤色のマスに書き込みます。
<赤色のマス>
・雨が降っている&カフェに行く → カフェまで傘をささずに行けると良いな!
・彼女とのデート&注文する → 待たずに注文できると良いな!
「できたら良いな」「してもらえたら良いな」など表現は多少変わっても構いません。できる限り10マスすべてを埋めましょう。また、時間が許す限り、1つのマスにはできるだけたくさんの「あったら良いな」を書き込みましょう。
コツ:「机が汚れていないと良いな」といった最低限の要求だけでなく、それがあると「感動する」ような期待とは何かを考えるようにすると良いでしょう。
UXデザインは「知らないことを知ること」から始まる
UXデザインでユーザーについて知るべきことのうち、最も基本的かつ重要なのは「ユーザーがその行動を起こす理由」です。デザイン対象となる体験を構成する行動をコントロールできなければ、意図した体験を提供することはできないからです。
このミニワークショップは、「ある状況下で、ユーザーが特定の行動を起こす理由」をカスタマージャーニーマップ形式で整理するというものでした。これにより、見えてきたものとは何でしょうか?
自分たちが知らないことが見えてくる
ワーク3で埋まらなかったマス、あるいは埋まっていても自信のないマスは、「あなたが知らないユーザーのニーズや期待」を表しています。通常、自分が知っていることと知らないことの境界線を、自身で認識することは難しいのですが、今回のフレームワークを使えばそれが可能になります。
コンテキストを知ることの重要性が見えてくる
ワーク2はかなり迷ったはずです。ユーザーの行動に影響を与えるものとは何か、それを知らずしてユーザーの行動を制御することはできません。このような行動の背景にあるものを「コンテキスト」と呼びますが、いかに自身がユーザーのコンテキストを部分的にしか知らないのか、見えたのではないでしょうか。
「ユーザーの何を知るべきか」=リサーチフォーカス
このミニワークショップで見えてくるのは、あなたがユーザーの何に焦点をあててリサーチをしなければならないのかというリサーチの「フォーカス」に他なりません。もちろん30分のワークだけで完全なものは見えてきませんが、取っ掛かりとしてやってみましょう。
まとめ:まずは30分だけやってみよう
UXデザインにおいては、「ユーザーを知ること」が肝になります。ユーザーの何を知れば良いのだろう?と疑問に思っている方は、とりあえず30分だけ、今回のミニワークショップをやってみていただき、自分たちが「ユーザーをどこまで知っているか」に気づくところから始めてみてはいかがでしょうか。
このワークショップを自社でもやってみたいと思う方はご相談に乗りますので、ぜひお問い合わせください。