「不動産領域の新規事業開発のために、アイデアや事例を知りたい」
「実際に最近勢いがある不動産の流行、どのような方向性のアイデアなんだろう」
「不動産の新規事業を成功させるために、まず時流やトレンドを押さえておきたい」
不動産の新規事業を進める上で「まずはアイデアを着想するための情報が欲しい」と考える企業担当者は多いのではないでしょうか。
不動産領域は非常に広いため、アイデアの選択肢は非常に多岐にわたります。だからこそ、幅広くアイデアの種を集めて、その中から自社の強みや技術との親和性が高い領域を探していくことが大切です。

この記事では、不動産の新規事業アイデアを19個の具体例と、成功に導くための7つのフレームワークに整理し、自社の新しい事業の方向性を判断できるようにします。

不動産の新規事業では、市場の変化に即した具体的なアイデアを知り、それを実行可能なフレームワークに落とし込むことが成功のカギとなります。
読み終えるころには、自社の強みを活かした不動産新規事業の方向性と進め方をイメージできるはずです。ぜひ最後までお読みください。
| 本記事の内容について ※この記事の内容は、2025年9月執筆時点で確認した情報に基づいて記載しています。サービスの名称や内容、実績などが変更される可能性があるのでご注意ください。 |
目次
1.【デジタル化・利便性向上】不動産の新規事業アイデア5選

まずは「デジタル化・利便性向上」の方向性に基づく不動産の新規事業アイデアを紹介していきます。
不動産業界では、これまで「対面」や「紙」が当たり前だった内見・査定・契約・相談といったプロセスが、急速にデジタル化しています。背景には、コロナ禍での非対面ニーズの高まりに加え、「移動や日程調整、紙書類のやり取り」といった手間をなくしたいという顧客の利便性要求があります。
同時に、不動産会社にとっても、契約書の電子化や査定業務の自動化、オンライン面談の普及は、人手不足の解消や業務効率化、コスト削減につながる大きな追い風になっています。
この章では、デジタル化によって顧客体験の向上と事業者の効率化を同時に実現する新規事業アイデアを5つ紹介します。
【デジタル化・利便性向上】不動産の新規事業アイデア5選
- VR・ARを活用したバーチャル内見サービス
- AIを活用した価格査定サービス
- 契約や重要事項説明をオンラインで行えるサービス
- 顧客との面談をオンラインで行うサービス
- 不動産会社やサービスを比較できるサイト
VR内見やAI査定、電子契約、オンライン相談、比較サイトなどは、いずれも顧客体験を大きく変革すると同時に、業務の効率化や新規案件獲得にも直結する分野です。
自社の新規事業に活かせるものがないか、イメージしながら読み進めてみてください。
1-1. VR・ARを活用したバーチャル内見サービス
不動産分野のデジタル化・利便性向上を代表する新規事業アイデアとして、「VR・ARを活用した内見サービス」が注目されています。
現地に行かなくてもオンラインで物件を体験できる仕組みは、移動や日程調整の手間を減らし、顧客にとっての利便性を大幅に高めます。不動産会社にとっても、営業効率を改善できる革新的な取り組みです。
代表的なサービスとしては、ナーブ株式会社のVRプラットフォーム「ナーブクラウド」があります。

画像出典:ナーブ株式会社公式サイト
| VR・ARを活用したバーチャル内見サービスの例(ナーブ株式会社) ・内見から重要事項説明までをリモートで顧客対応できる仕組みを実現 ・360度ツアー画像(バーチャルツアー)のWeb公開、撮影代行、IT重説までもワンストップで対応 ・大手不動産会社を中心に導入が進んでいる |
VR/AR内見サービスは「顧客体験の改善」と「営業効率の向上」を同時に実現できる新規ビジネスであり、不動産会社向けにシステムやコンテンツを提供する事業として大きな成長が期待できるでしょう。
1-2. AIを活用した価格査定サービス
デジタル化によって効率化が進む領域のひとつが「価格査定」です。従来は担当者が膨大なデータを収集・分析して作成していた査定書を、AIが自動で生成するサービスは、不動産業界で急速に導入が進んでいます。
AI価格査定を導入することで最短数分で高精度な査定が可能になり、不動産会社は資料作成の負担を大幅に削減できます。さらに顧客に対しては、スピーディで納得感のある提案を実現できます。
代表的なサービスとしては、「SRE AI査定CLOUD」が有名です。

| AIを活用した価格査定サービスの例(SRE AI Partners株式会社) ・東証プライム上場のSREホールディングス株式会社の子会社が提供 ・取引事例比較法とAI査定を組み合わせ、実需物件の精度高い査定が可能 ・オプションで収益還元法による収益物件査定にも対応 ・最短5分で査定書を作成でき、提案スピードを大幅に改善できる ・査定書のデザイン変更も可能で、自社の特色を反映した帳票を作成できる |
AI査定サービスは「スピード」「精度」「負担軽減」を同時に満たせる新規事業領域です。不動産会社にとっては顧客の信頼を得る武器となり、ソリューション提供側にとっても市場拡大が期待できる分野だと言えるでしょう。
1-3. 契約や重要事項説明をオンラインで行えるサービス
契約や重要事項説明のデジタル化も、不動産業界に大きな変化をもたらしています。
これまで契約には来店や紙ベースでのやり取りが欠かせませんでしたが、2022年5月の宅地建物取引業法(宅建業法)改正により、電子契約やオンラインでの重要事項説明が可能となりました。
非対面でのオンライン締結や重要事項説明が可能になると、不動産会社の担当者は煩雑な書類管理や来店調整の負担から解放され、より多くの顧客対応や新規案件の獲得に時間を割けるようになります。
顧客にとっても、自宅にいながら安心して契約を進められるのは大きなメリットです。
代表的なサービスとしては、日本情報クリエイト株式会社の「不動産専用 電子契約システム」があります。

| 不動産業界に特化した電子契約サービスの例(日本情報クリエイト株式会社) ・不動産業界専用に設計された電子契約システムを提供 ・重要事項説明書(35条書面)や不動産取引契約書(37条書面)をオンラインで締結可能 ・既存の契約書をそのまま使えるため、従来の業務フローを変えずに導入可能 ・同社の賃貸管理ソフト「賃貸革命」と連携し、入力作業や郵送作業を削減 ・導入企業では契約1件あたり約1,000円の経費削減や残業時間の大幅短縮を実現 |
契約の電子化は、ユーザーからの期待値が高い一方で、実際の利用経験はまだ1割にも満たないともいわれています。広く普及していないからこそ、新しいサービスを立ち上げて先行優位を築けるチャンスが残されている分野です。
1-4. 顧客との面談をオンラインで行うサービス
顧客相談の場面でもデジタル化が進み、「面談のオンライン化」が広がっています。
これまで「大事な相談は対面で」という意識が根強かったものの、デジタル技術を活用することで利便性と安心感を両立できるようになりました。顧客は自宅から気軽に相談でき、不動産会社は新たな接点を持つ機会を増やすことが可能になります。
代表的なサービスとしては、LIFULL HOME’S「住まいの窓口」やSUUMO「オンライン相談」があります。
| 不動産ポータルによるオンライン相談の例 ・来店せずに専門アドバイザーとビデオ通話で相談可能 ・家族やパートナーと一緒に自宅から参加できる仕組みを提供 ・コロナ禍以降、利用者数が大幅に増加し、相談後の成約率向上にも寄与 |
このようにオンライン相談は、対面の代替ではなく「新しい顧客体験」として設計することで、新規事業として十分に成立します。
利用経験はまだ限られているものの、だからこそ新規参入の余地が大きく、今後サービスを提供する側にとっても開発・展開のチャンスが残されている分野です。
1-5. 不動産会社やサービスを比較できるサイト
不動産分野で新規事業を立ち上げるアイデアとして、不動産会社やサービスを比較できる「比較サイト」を立ち上げる展開もあります。
不動産売却査定やリフォーム業者の比較、土地活用プラン比較など、ユーザーが複数の選択肢を比較検討できる仕組みは、納得感を持った意思決定を後押しするサービスといえます。
さらに事業者にとっても、自社の強みを可視化して適切な顧客と出会えるため、営業効率の改善に寄与します。
代表的な事例としては、株式会社リクルート「SUUMO」の売却査定サービスがあります。

| 不動産会社比較サイトの例(SUUMO売却査定の場合) ・60秒の無料入力で複数社へ一括査定依頼ができ、査定価格や対応を比較可能 ・厳しい掲載基準を満たした不動産会社のみ掲載(大手〜地元密着まで提携) ・エリア別に「売却相場・売却事例・購入希望者情報」を確認しながら依頼先を検討できる ・不動産会社の店舗ページで、店舗の特徴・売却実績・スタッフ紹介まで確認可能 |
このような比較サイトは、ユーザーの「情報格差」を埋める役割を果たし、信頼性の高い選択体験を提供する点で成長余地が大きい分野です。
2.【空間活用系】不動産の新規事業アイデア4選

不動産業界における新規事業の切り口として、既存の「空間」を新しい形で活用するモデルの方向性も有効です。
住宅やオフィスを単に貸すのではなく、利用者のライフスタイルや働き方の変化に合わせて柔軟にデザインすることで、これまでにない価値を生み出せます。
この章では、比較的参入しやすい「空間活用型の新規事業アイデア」を4つ紹介します。
【空間活用系】不動産の新規事業アイデア4選
- コワーキングスペース・シェアオフィス
- スペースシェアリング(空間の時間貸し)
- コンセプト型シェアハウス
- 民泊と短期賃貸を組み合わせたハイブリッド経営
コワーキングスペースやシェアハウスなど、身近な不動産資産を活かした事業は、少ない投資からでも始められる可能性があります。
2-1. コワーキングスペース・シェアオフィス
不動産の空間活用モデルとして、代表的なのが「コワーキングスペース」や「シェアオフィス」です。
リモートワークや副業の普及により、従来の固定的なオフィスに代わって「必要なときに必要なだけ使える空間」へのニーズが急速に高まっています。
代表的なサービスとしては、三井不動産の「ワークスタイリング」があります。

| シェアオフィスの例(三井不動産「ワークスタイリング」の場合) ・契約企業は約1200社、会員約32万人(2025年9月時点)で約580拠点を展開し、多様な働き方をサポート ・無料のお菓子やドリンク、充実の貸出備品などを完備 ・オンラインですぐ予約できる会議室や個室を備えており、柔軟な利用が可能 ・クルー常駐で、業界トップクラスの情報セキュリティも整えている |
コワーキングやシェアオフィス事業は、既存ビルや空室フロアを活用してスタートできるため、初期投資を抑えながら新しい収益モデルを構築できます。働き方改革や人材の流動化に伴い、今後も需要拡大が見込まれる分野であり、まだまだ新規参入のチャンスが残されています。
2-2. スペースシェアリング(空間の時間貸し)
先に紹介したシェアオフィスと似た仕組みでありながら、さらに幅広い層をターゲットにできるのが「スペースシェアリング事業」です。
スペースシェアリングは、空いているスペース(会議室、イベントスペース、住宅、古民家など)を時間単位で貸し借りできる仕組みです。シェアオフィス(会議室や仕事場)よりもターゲットが広く、個人利用も含め、セミナーやヨガ、マッサージ、料理教室、撮影、パーティー、個室デートなど多様な用途に対応しているのが特徴です。
新規事業でスペースシェアリング事業を行う方向性としては大きく2つ考えられます。
・自社やオーナーが保有する遊休スペースを活用して貸し出す(参入しやすい)
・「貸したい人」と「借りたい人」をつなぐプラットフォームを立ち上げる
スペースシェアリングの代表的なサービスとしては、株式会社スペースマーケットが運営する「スペースマーケット」があります。

| スペースシェアリングの例(「スペースマーケット」の場合) ・利用実績が多い、業界最大級のレンタルスペース検索 ・予約サイト ・全国20,000件以上のスペースを掲載し、会議・撮影 ・パーティーなど多様な用途に対応 ・Web上で検索から予約・決済までワンストップで完了、15分単位の延長利用も可能 |
スペースシェア市場は拡大を続けており、今後も法人の働き方改革ニーズや個人のイベント需要と相まって、成長余地の大きい分野といえるでしょう。
2-3. コンセプト型シェアハウス
不動産の空間活用モデルとして注目されているのが「コンセプト型シェアハウス」です。
単なる共同住宅ではなく、趣味やライフスタイルに合わせたテーマを設定し、入居者同士がコミュニティを形成できる仕組みを提供することで、差別化と高い入居率を実現できます。
代表的な事例としては、JR東日本グループが株式会社シェア・デザインと資本提携して新規事業として始めた、ワンランク上のシェアハウスブランド「シェアリエット」があります。

| コンセプト型シェアハウスの例(JR東日本グループの場合) ・JR東日本グループのジェイアール東日本都市開発(JRTK)がシェア・デザインと資本提携してサービスを開始 ・新ブランド「シェアリエット」は、一人暮らしでは実現できないホテルライクな個室と充実した共用部がコンセプト ・今後は沿線開発と連動させながら物件展開を拡大し、地域コミュニティ形成や国際交流にもつなげていく方針 |
シェアハウス市場はまだ拡大余地が大きく、新しいテーマや立地を掛け合わせることで、新規参入のチャンスが残されている分野だと言えるでしょう。
2-4. 民泊と短期賃貸を組み合わせたハイブリッド経営
2018年に住宅宿泊事業法(いわゆる民泊新法)が施行され、民泊が正式に解禁されました。当初はインバウンド需要の受け皿として注目を集めましたが、規制や運営負担、コロナ禍の影響で廃業が相次ぎました。
しかし近年は、訪日客の急増とホテル価格の高騰を背景に、民泊市場が再び盛り上がりを見せています。2024年には物件数が過去最多の約2.5万件に達し、利用者も日本人が4割を占めるなど、客層も広がりを見せています。
さらに注目されているのが、民泊と短期賃貸を柔軟に切り替える「ハイブリッド経営」です。閑散期や条例制限のあるエリアでは短期賃貸として運営し、需要が高い時期やインバウンドが集中する都市部では民泊として活用することで、安定収益を確保する仕組みです。
代表的な成功事例としては、パナソニックホームズ株式会社の取り組みが挙げられます。

| 民泊ビジネスの例(パナソニックホームズの場合) ・2019年に大阪市中央区で「BON Condo Namba Nipponbashi」を竣工 特区民泊制度を活用し、土地・建物をオーナーから一括借り上げて宿泊事業者に転貸する独自の「インバウンド・リンクシステム®」を採用。キッチンや複数ベッドを備え、家族やグループでの利用を想定した設計でインバウンド需要を取り込みました。 ・2024年以降も大阪市で民泊需要が再燃 ホテル価格の高騰により大人数で泊まれる民泊の強みが再評価され、宿泊件数・施設数ともにコロナ前を上回る水準に回復。 ・受注額目標を3倍に引き上げ、事業を拡大 パナソニックホームズは市況の追い風を受け、民泊関連の物件開発に注力。受注額の目標を従来比3倍に増やすなど、積極的な事業拡大に取り組んでいます(2025年2月時点)。 |
民泊+短期賃貸のハイブリッド経営は、インバウンドの受け皿としての役割を果たしながら、国内需要にも対応できる点で、不動産会社やオーナーにとって新しい土地活用の選択肢となり得る分野です。
3.【ターゲットを絞った価値提供】不動産の新規事業アイデア5選

不動産ビジネスは「万人向けのサービス」を広く提供するだけでなく、特定のターゲットに絞ることで差別化が図れる領域です。
たとえば、高齢者や外国人、ペットと暮らす世帯など、それぞれが抱える課題やニーズに応じた住まいを提供することは、利用者にとっても大きな価値となり、事業者にとっては安定した集客につながります。
【ターゲットを絞った価値提供】不動産の新規事業アイデア5選
- 高齢者向けの住み替え支援・賃貸管理・生活サポート
- 外国人向け不動産仲介・生活サポート
- ペット共生型住宅仲介・コンサルティング
- 空き家活用に特化したサービス
- 法人向け(出張・転勤用)の短期賃貸サービス
ここでは、ターゲットを絞ることで新しい市場を切り開ける5つの事業アイデアを紹介します。
3-1. 高齢者向けの住み替え支援・賃貸管理
高齢化の進展に伴い、「大きな持ち家から利便性の高い住まいへ移りたい」「子どもに迷惑をかけないように資産整理をしたい」というニーズが増えています。こうした背景に対応した、高齢者向けの住み替え支援や賃貸管理は有望な新規事業領域です。
代表的な仕組みとして注目されているのが「リースバック事業」です。リースバックとは「自宅を売却して現金化しつつ、そのまま住み続けられる」仕組みで、老後の資金確保と住まいの安定を両立できます。
代表的なサービスとしては、株式会社セゾンファンデックスが手がける「セゾンのリースバック」があります。

| リースバック事業の例(セゾンファンデックスの場合) ・自宅を売却して老後資金を確保しつつ、普通賃貸借契約を結んでそのまま住み続けられる ・引っ越しを伴わないため、高齢者にとって生活環境の変化が少なく安心 ・将来的に買い戻し(再度購入)が可能なプランも用意されており、柔軟な選択肢を提供 ・利用者は「まとまった資金を得ながら住み慣れた地域で暮らせる」というメリットを享受 |
このように、高齢者向けの住み替え支援は、今後ますます需要が高まる領域です。新規事業としては、賃貸物件紹介に加え、生活サポートや資産活用まで組み合わせることで、他社との差別化が可能となるでしょう。
3-2. 外国人向け不動産仲介・生活サポート
不動産分野の新規事業アイデアとして、「外国人向け不動産仲介・生活サポート」もこれから注目される領域です。
訪日外国人や海外からの労働者・留学生の増加に伴い、日本で住まいを探すニーズは拡大しています。
一方で、言語の壁や契約慣習の違いから、物件探しや契約時にトラブルや不安を抱えるケースが少なくありません。その間を取り持つサービスが新規事業として期待されています。
外国人向け不動産サポートの代表的なサービスとしては、株式会社グローバルトラストネットワークスの取り組みが有名です。

| 外国人向け仲介・サポートの事例(株式会社グローバルトラストネットワークスの場合) ・外国人の住まい探し・入居・生活支援に関する幅広いサービスを展開し、住まいの不安を包括的に解決 ・創業以来、外国人専門に特化し、約15,000社の不動産会社と提携して家賃保証サービスを提供 ・物件オーナーには「言語対応の不安を解消」、不動産会社には「業務負担の軽減」、入居者には「生活情報のサポート」と三者にメリットをもたらしている |
このように、外国人向け不動産仲介は単なる「物件紹介」にとどまらず、生活立ち上げや安心感を支えるサービスを組み合わせることで高い付加価値を生み出します。新規事業としては、仲介と生活支援をワンストップで提供できる仕組みが、競合との差別化のポイントになるでしょう。
3-3. ペット共生型住宅仲介・コンサルティング
犬や猫などと暮らしたい世帯に特化したサービスも、不動産分野の新規事業アイデアとして有効です。
少子高齢化やライフスタイルの変化に伴い、ペットを家族の一員として暮らす世帯は増加傾向にあります。しかし現状では、賃貸物件の中で「ペット可」の選択肢は依然として限られており、飼い主にとって大きな課題となっています。
このギャップを埋める事業として、ペットと快適に暮らせる住宅を紹介したり、オーナーや管理会社に向けて「ペット対応リフォーム」や「トラブル防止の仕組み」を提案するサービスは成長余地が大きい分野です。
たとえば、株式会社アドバンスネットは、ペットと一緒に快適に暮らせる住まいを提供することで価値を提供しています。

| ペット共生型住宅仲介の事例(株式会社アドバンスネットの場合) ・賃貸住居の立地計画から管理 ・アフターフォローまで一貫して運営し、一般的な「ペット可」と差別化された共生型賃貸を提供 ・1998年からペット共生物件の紹介サイトを運営し、月間ユニークアクセス約10,000件、メルマガ購読者約2,500人、登録者累計約10万人を確保 ・女性スタッフが中心となり、ドッグトレーナーや動物看護師などの資格を活かして、飼い主に寄り添った接客や専門的なサポートを提供 |
ペット共生型のようにターゲットがニッチであるマーケットは、あえてその層に特化することで強いファンを惹きつけ、長期的な利用やコミュニティ形成につながる仕組みを提供できる新規事業アイデアです。
3-4. 空き家活用に特化したサービス
不動産分野の新規事業アイデアとして、「空き家活用に特化したサービス」も注目されています。
少子高齢化や相続によって増加する空き家をどうするかは、社会的課題であると同時に、多くのオーナーが抱える現実的な悩みです。
「管理が大変」「放置すると資産価値が下がる」「売るか貸すか迷う」といった声に応える仕組みは、明確なニーズを持つターゲットに直結します。
代表的なサービスとしては、株式会社ジェクトワンの「アキサポ」があります。

| 空き家活用サービスの例(アキサポの場合) ・改装・管理・売却・買取までをワンストップで対応し、空き家に関する幅広い課題を解決 ・首都圏や関西を中心に展開し、地域の提携企業と連携して最適なソリューションを提供 ・オーナーにとっては「低コストでの活用」や「手間の軽減」が可能となり、資産を収益化できる |
空き家活用は、ターゲットが「空き家を持つ人」に絞られているからこそ、ピンポイントで深い課題解決につながります。社会課題の解決と事業機会の両立が可能な領域であり、新規事業としての伸びしろも大きい分野です。
3-5. 法人向け(出張・転勤用)の短期賃貸サービス
ターゲットを絞った新規事業アイデアの最後に紹介するのは、法人向け(出張・転勤用)の短期賃貸サービスです。
これまで不動産の短期賃貸といえば、個人の二拠点生活や一時利用が中心でした。しかし近年は、法人の出張・転勤・研修といった需要にターゲットを広げる流れが強まっています。従来の賃貸契約は敷金・礼金や保証人が必須で、契約期間も長期が前提のため、数週間〜数カ月といった短期利用には不向きでした。
そこで、法人向けに柔軟な短期賃貸を提供するサービスが広がり、「ホテルより安価」「暮らすように滞在できる」という理由から利用が拡大しています。法人をターゲットに加えることで、個人需要だけに依存せず、より広い市場を取り込める点が大きなメリットです。
代表的なサービスのひとつが、株式会社アットイン(株式会社みらいホールディングスの子会社)です。

| 法人向け短期賃貸サービスの例(アットインの場合) ・9,000社超の法人、13万人以上の利用実績を持つ法人専用マンスリーサービス ・物件探しから契約、入居者の生活サポートまでを代行する「ワンストップマンスリー」を提供 ・半年先の予約や、期間短縮時の返金など、他社では難しい要望にも柔軟に対応 ・家具家電に加え70品目以上の生活備品を完備し、手ぶらで新生活を始められる仕組み ・外国人入居者に向けた7カ国語サポートや、テレワーク対応物件も多数展開 |
法人向け短期賃貸は、社員寮・研修滞在・外国人受け入れなど多様な場面で活用されており、空室や遊休不動産の収益化モデルとしても注目されています。不動産会社にとっては、法人との継続的な取引を通じて安定した収益を得られる新規事業領域だと言えるでしょう。
4.【中古市場・リノベーション】不動産の新規事業アイデア2選

近年、資材や人件費の高騰により新築市場は伸び悩む一方、中古物件や既存ストックを活用した事業が注目を集めています。
日本ではこれまで「スクラップアンドビルド」型の住宅市場が主流でしたが、環境負荷の観点や資産の有効活用の観点から、そのあり方が見直されつつあります。
中古市場を起点にした新規事業アイデアを紹介します。
【中古市場・リノベーション】不動産の新規事業アイデア2選
- 中古住宅・マンションのフルリノベーション・再販事業
- 遊休不動産の活用・再生・リノベーション
中古市場の可能性をどう活かすかが、新規事業の差別化につながります。自社ならどのように中古市場を活用できるか、イメージしながら読み進めてください。
4-1. 中古住宅・マンションのフルリノベーション・再販事業
中古住宅やマンションをフルリノベーションして再販する事業は、新築市場の停滞に代わる有力な新規事業アイデアです。
新築に比べて初期投資を抑えつつ、自由設計や最新のデザインを取り入れることで付加価値を高められるため、購入者にとっても魅力的な選択肢となっています。
代表的な事例としては、中古物件探しから設計・施工までをワンストップで提供している「ゼロリノベ」があります。

| 中古住宅リノベーション・再販事業の例(ゼロリノベの場合) ・中古マンションや戸建てを購入し、自由設計でフルリノベーションを実施 ・不動産仲介から設計 ・施工・アフターサービスまでを自社で一貫提供 ・「安心予算の算出」「宝石物件の探し方」など独自の顧客支援プログラムを用意 ・デザイン力や施工品質が高く評価され、「リノベーション・オブ・ザ・イヤー」など数々の受賞歴あり ・子育て世代から単身者、LGBTQ+やシニアまで幅広い層に支持されるブランド戦略 |
中古住宅のリノベ再販は、「手頃な価格で自分らしい住まいを実現したい」という顧客ニーズに直結する領域です。資材・人件費が高騰する今だからこそ、中古ストックの再活用に参入する企業には大きな成長機会が残されています。
4-2. 遊休不動産の活用・再生・リノベーション
遊休不動産をリノベーションによって再生し、新しい用途を与える事業は、不動産市場の中でも大きな可能性を秘めています。築古建物をそのまま取り壊すのではなく、リノベーションを施すことで、新築に比べてコストや工期を抑えつつ、環境負荷を減らし、地域に新しい価値を生み出せるのが大きな特徴です。
古いオフィスビルや商業施設をリノベーションし、新しい用途に生まれ変わらせる事業は以前から存在していましたが、建設コストの高騰や環境配慮の高まりを背景に、市場ニーズが急速に拡大しています。
代表的な事例としては、リノベる株式会社の「都市創造事業」があります。企業社宅や工場、電話局といった遊休不動産を、複合施設や賃貸マンションへと再生し、まち全体の活性化につなげています。

| 遊休不動産の活用・再生・リノベーションの例(リノベるの場合) ・築48年の元NTT電話局を「BOIL」として地域参加型複合施設へ再生 ・築45年の元鉄工所を「SWEET AS」としてスポーツコート併設の複合施設へ再生 ・築27年の企業社宅を「COMFORIA高島平」として賃貸マンションへ再生 |
遊休不動産の活用は、社会的要請と事業性の両面から注目されており、新規参入の余地も大きい分野です。
5.【知見を活かしたコンサル】不動産の新規事業アイデア3選

不動産領域の新規事業アイデアを考えるうえで、投資家やオーナーに向けたコンサルティングや業界全体を支える仕組みづくりにも大きな可能性があります。
新規事業には、テクノロジーや新しい暮らし方を切り口にする方法もあれば、これまで培ってきた知識や経験を活かして価値を提供する方向性もあります。
本章で取り上げる「知見を活かしたコンサル領域」は、まさに後者に該当する方向性です。不動産業界に精通し、長年の業歴や実務ノウハウを持つ会社だからこそ優位性を発揮できる分野です。
ここからは、不動産会社が培ってきたノウハウを活かしやすく、付加価値を生みやすいコンサルティングのアイデアを整理します。
【知見を活かしたコンサル】不動産の新規事業アイデア3選
- 個人投資家向けの資産運用コンサルティング
- 相続・事業承継のコンサルティング
- 自社ノウハウを活かした不動産会社向けのサービス
これらは物件取引そのものではなく、「不動産の知識や仕組みをどう活用して顧客の課題を解決するか」に重きを置くビジネスです。既存の顧客基盤や現場経験をもとに、資産形成や承継支援、業務効率化といった領域で新たな価値を生み出せます。
不動産会社にとって「知見を資産化すること」が、新規事業の強力な柱になり得るのです。これまでの経験をどう活かすかを意識しながら読み進めてみてください。
5-1. 個人投資家向けの資産運用コンサルティング
個人投資家向けの不動産投資コンサルティングは、資産形成ニーズの高まりを背景に注目されています。
不動産投資は利回りや税制、ローン、管理方法など専門的な知識が必要であり、初心者が独学で進めるにはリスクが大きい分野です。そのため、プロによる投資判断のサポートや物件選定の助言を受けたいというニーズが拡大しています。
代表的なサービスとしては、株式会社GA technologiesの「RENOSY(リノシー)」があります。

| 個人投資家向けコンサルティングサービスの例(RENOSYの場合) ・投資用不動産の売上実績No.1(東京商工リサーチ調べ、2025年3月)および投資用不動産買取実績No.1(同、2024年10月)を掲げるブランド ・不動産を活用した資産形成をワンストップで提供(購入・管理・売却まで) ・専用アプリ・マイページ連動で管理負担を軽減し、AI査定等の売却支援機能も用意 ・アセットプランナーが投資家の意向に合わせてラインナップを提案(マンション・アパート・戸建て・海外不動産まで幅広く対応) |
投資家に寄り添った戦略立案+実行支援のワンストップは、既にノウハウを持つ不動産会社が自社の強みを拡張できるモデルであり、成長余地の大きい領域です。
5-2. 相続・事業承継のコンサルティング
相続や事業承継に関するコンサルティングは、銀行や大手不動産会社が古くから提供してきた分野です。ただし近年は経営者の高齢化やM&A件数の増加を背景に、「相続」と「事業承継」を一体で解く総合サービスが注目を集めています。
相続や事業承継のコンサルティング自体は、銀行・信託銀行・大手不動産会社が長年取り組んできた分野です。ただし、近年は以下の変化が追い風になっています。
・経営者の高齢化が進み、相続だけでなく事業承継(M&A)を含めた包括的な支援の需要が増加している
・不動産オーナーは「賃貸経営」「相続対策」「事業承継後の資産運用」を切り離せなくなり、ワンストップの設計力が求められている
・M&Aの専門会社と不動産会社の提携により、老舗の総合対応力+新興の専門性という新しいサービスモデルが台頭している
たとえば、2025年3月には、三井不動産株式会社とM&Aキャピタルパートナーズ株式会社が業務提携を行い、「三井不動産Let’s」というサービスをスタートしました。

| 相続・事業承継のコンサルティングの例(三井不動産Let’sの場合) ・三井不動産株式会社の不動産コンサル(資産活用・賃貸経営・相続対策)と、M&Aキャピタルパートナーズ株式会社の事業承継M&Aの知見を相互に提供 ・不動産オーナーやオーナー経営者の「資産運用×事業承継」をワンストップで設計(相続・賃貸・M&A後の運用まで) ・M&A成約後の譲渡金の不動産運用など、承継後フェーズのライフプランまで提案可能 |
このように、相続と事業承継をセットで扱う枠組みは「老舗の総合対応」と「新興の専門性」を掛け合わせやすく、既にノウハウを持つ不動産会社が連携して提供価値を拡張できる成長領域です。
5-3. 自社ノウハウを活かした不動産会社向けのサービス
不動産業界で長く事業を営んできた会社の場合、自社の効率化ノウハウや取引の知見を横展開し、他社に提供する形で新規事業を立ち上げる方向性もあります。
とくに中小不動産会社はIT人材が不足しがちであり、日常の賃貸管理や契約業務を効率化できるサービスの需要は高まっています。
成功事例としては、株式会社いえらぶGROUPの「いえらぶCLOUD」「いえらぶBB」が挙げられます。いえらぶは当初、不動産ポータルやサイト制作を手掛けてきましたが、現場の課題に応える形でSaaS事業へ発展し、業界全体のDX推進に大きく貢献しています。

| 自社ノウハウを活かしたサービスの例(いえらぶCLOUD/いえらぶBB) ・「いえらぶCLOUD」は、賃貸・売買・管理を一元化できるオールインワン業務支援システムで、ポータル連動や自動追客、インボイス制度対応など、日々の業務を効率化 ・「いえらぶBB」は、賃貸管理会社と仲介会社をつなぐ無料の業者間流通プラットフォームで、物件流通から内見予約・保証審査・契約までをオンラインで一気通貫できる ・2023年時点で利用社数は25,000社を突破し、全国の不動産会社の業務効率化に寄与 |
このように、社内に眠っている実務知識や業界の課題感をサービス化すれば、不動産会社自身が「業界内のIT事業部」として新規事業を展開する可能性は十分にあります。
6. 不動産の新規事業を成功に導く7つのフレームワーク・考え方

ここまで、さまざまな方向性の不動産の新規事業アイデアを整理して解説してきました。選択肢が多いからこそ「自社はどこから着手すべきか」を見極める判断軸が必要になります。
えそらLLCはこれまで数多くの新規事業支援に伴走してきましたが、その過程で浮かび上がるのは、不動産領域ならではの難しさと、その難しさを乗り越えるための共通原則です。
本章では、その実践知を「フレームワーク・考え方」として整理し、アイデアを事業に落とし込んで成功確率を高めるための視点を紹介します。
不動産の新規事業を成功に導く7つのフレームワーク・考え方
- 迷ったときは「分類軸」で方向性を整理する
- 顧客の「大きな決断」で安心して意思決定できるよう導く
- ベテランの経験を形式知化して組織の武器にする
- 「変えられる壁」と「変えられない壁」を見極める
- 長い時間軸で「顧客体験を理解する」視点を持つ
- 顧客を一般化せず「解像度の高い理解」を目指す
- 非利用者(購入・契約に至らなかった人)の声も顧客理解に活かす
これらは単なる理論ではなく、えそらLLCが現場での支援や検証を通じて実際に見出してきた「再現性のある成功要因」です。
顧客理解と仮説検証を軸に、自社の強みとの相性も見ながら、新規事業の確度を高めていきましょう。
6-1. 迷ったときは「分類軸」で方向性を整理する
ここまで数多くの不動産新規事業アイデアを紹介しましたが、「結局どれを選べばいいのか?」と迷う方も多いでしょう。そのとき役立ててほしいのが、事業を整理するための「分類軸」です。
【不動産業界の事業領域を考えるための4つの分類軸】
| 分類軸 | 主な分類 | 新規事業の例 |
| ライフサイクル | 探す / 契約 / 住む / 改修 / 手放す | VR内見、電子契約、リノベ支援、売却査定比較サイト |
| 顧客タイプ | 一般消費者 / 投資家 / 法人利用者 / 不動産事業者 | 外国人向け賃貸、投資コンサル、シェアオフィス、業務効率化DX |
| ライフイベント | 就職・進学 / 結婚・同棲 / 子育て / 転勤・転職 / 老後・相続 | 学生向けシェアハウス、ファミリー向け物件比較、相続資産活用コンサル |
| 業界構造 | デベロッパー / 仲介会社 / 管理会社 / リフォーム・施工会社 | 民泊開発、AI査定、電子契約導入、リフォーム比較サービス |
紹介したアイデア例を見てもわかるように、不動産といってもかなり新規事業の方向性は多岐にわたります。
だからこそ、自社の強みと市場のニーズを見極めるために、「自社の強み」×「分類軸」を整理して方向性を整理するのも有効です。
| 「自社の強み」×「分類軸」の例 ・仲介会社として営業力が強い(自社の強み) →「ライフサイクル軸」で考えれば「探す」や「契約」を デジタル化するサービスが有望。 →「顧客タイプ軸」で見れば、一般消費者向けのVR内見や 比較サイト事業が自然な方向性。 ・リフォーム・施工会社として施工力が強い(自社の強み) →「ライフサイクル軸」で「改修」にフォーカスすれば、 中古住宅や空き家のリノベーション事業に直結する。 →「ライフイベント軸」で「子育て」「老後」を切り口にすれば、 バリアフリー住宅や高齢者向け住み替え支援につながる。 ・地域密着型で信頼基盤がある(自社の強み) →「業界構造軸」で“地域の管理会社”として差別化し、 ペット共生型や外国人向けなどニッチ市場を狙える。 |
このように、自社の強みを出発点にし、最も相性の良い分類軸をかけ合わせることで、漠然としたアイデア群を自社に合った方向性に整理することができます。
6-2. 顧客の「大きな決断」で安心して意思決定できるよう導く
不動産の売買やリフォームといった大きな買い物は、人生の中で数えるほどしか経験しない「一発勝負の決断」です。そのため、顧客の不安を取り除く判断材料を用意し、納得感を伴った意思決定まで導くことが重要です。
なぜならば、顧客の心理としては、「後悔・失敗したくない」「決断するまでの判断材料がまだ足りない」という気持ちを抱えているからです。
さらに、不動産領域は専門知識が必要な分野であり、消費者と事業者の間には大きな知識の差があります。つまり「何を基準に選べばよいのか分からない」「どれが正解なのか決断しづらい」という面もあります
だからこそ、大きな決断にどう寄り添い、安心できる根拠をどう提供できるかがカギになります。
| 安心して意思決定できるために導く例 ・物件情報や施工実績を見える化して、「ここにお願いしよう」と判断できる材料を増やす ・口コミやプラットフォーム上の評価を整理し、信頼できる証拠を分かりやすく提示する ・顧客がつまずきやすい場面を丁寧にヒアリングし、言語化して次の顧客への説明に活かす ・他社では満たされていないニーズを調査で明らかにし、その不足を補うサービスを設計する |
| 【弊社えそらLLCの支援事例:リフォーム会社の事例】 あるリフォーム会社の支援では、顧客インタビューを通じて「なぜその会社を選んだのか」を掘り下げました。 すると、価格や仕様ではなく「担当者が一貫して誠実に説明してくれたこと」が安心感につながっていると分かりました。 これをサービスの打ち出し方や体験設計に反映させた結果、顧客が納得感を持って意思決定できる状況を実現することができました。 |
「顧客の一生に一度の大きな決断にどう寄り添えるか」という視点を軸にサービス設計を行うことが、多くの顧客から信頼され、長く選ばれる事業へとつながっていきます。
6-3. ベテランの経験を形式知化して組織の武器にする
不動産の新規事業はアイデア自体が優れていても、現場で安定して成果を再現できなければ定着しません。だからこそ「属人的なやり方」を抜け出し、仕組みに落とし込むことが成功の前提条件になります。
不動産業界では、ベテランの営業担当や施工担当が長年の経験から培ってきたノウハウが、暗黙知のまま属人化してしまうケースが少なくありません。新規事業を成功させるためには、こうしたスキルや判断基準を「形式知」として整理し、誰でも再現できる仕組みに落とし込むことが重要です。
| ベテランの経験を形式知化して組織の武器にする例 ・成績の良い営業と平均的な営業に同行し、内覧時の行動や話す順序の違いを観察してパターン化する ・本人が自覚していない成功要因を、インタビューとデータ比較で言語化する ・抽出したノウハウをマニュアルや教育プログラムに落とし込み、誰でも再現できるように仕組み化する |
たとえば営業現場では、成績の良い担当者と平均的な担当者で「内覧時の行動や話す順序」が微妙に異なることがあります。その違いを観察・比較し、当人と一緒に振り返ることで、初めて「成果につながるパターン」として言語化できます。
本人が自覚していないスキルであっても、体系化することで新人教育やチーム全体の底上げに活かせるのです。
こうして属人化したノウハウを形式知化できれば、新規事業においても「再現性のある成功モデル」を早期に作り上げることができます。さらに高水準のレベルに磨いていくことで、競合との差別化を図る武器にもなります。
6-4.「変えられる壁」と「変えられない壁」を見極める
不動産業界で新規事業を立ち上げる際には、規制や商習慣の壁に必ず直面します。ここで重要なのは、「変えられる壁」と「変えられない壁」を見極めることです。
・変えられる壁:長年の慣習や業界構造に根差した制約、現場の心理的抵抗など
・変えられない壁:宅建業法や借地借家法など
大切なのは「変えられない壁は変えられない」と割り切り、そのうえで「変えられる壁」をどう取り払うかに力を注ぐことです。
| 変えられる壁を外すアプローチの例 ・慣習や心理的抵抗の背景を丁寧にヒアリングし、不安の正体を明らかにする ・移行プロセスを小さなステップに分けて段階的に進める ・既存業務と新しい仕組みを一時的に併用し、現場の安心感を確保する ・成果が早く出やすい部分から変化を起こし、実績で信頼を積み重ねる |
たとえば「多少不便でも慣れているやり方を変えたくない」という現場に、単に新しい仕組みを提示しても受け入れられません。むしろ「なぜ変化を怖いと感じるのか」「その制約はどこから生まれているのか」「慣習を変える意思があるのか」を理解し、一つひとつ丁寧に解消していくプロセスが欠かせません。
| 【弊社えそらLLCの支援事例】 私たちが業務慣習に関わる案件を伴走したときにも、この壁の存在が大きな論点になりました。 多少の不便があっても長年続けてきたやり方に慣れているため、現場の人たちは必ずしも変革を望んでいるわけではありません。 だからこそ、「本当にこの慣習を変える意思があるのか」を確認することが不可欠でした。 単に新しい仕組みを提示するだけではなく、その変化がどんな制約や恐怖に由来するものなのかを一つひとつ理解し、関係者が無理なく受け入れられる移行プロセスを設計していくことを重要視しました。 |
規制や慣習は新規事業にとっての大きな制約に見えますが、逆にいえば「変えられる壁」を突破できれば、それだけで競争優位を築けます。
新規事業を成功させるためには、規制や慣習を突破する力だけでなく、その背景にある人々の心理や構造的な事情を理解する力が欠かせません。
6-5. 長い時間軸で「顧客体験を理解する」視点を持つ
不動産の新規事業を成功させるには、短期的な利用場面だけを見るのではなく、顧客体験を「長い時間軸」で理解することが大切です。
なぜならば、不動産に関わる体験は非常に長いジャーニーを伴うからです。
家を建てることを考え始めてから実際に購入するまでに1年、2年とかかることもあります。さらに、住み始めて初めて気づく課題や、ライフステージの変化とともに生まれる新しい課題もあります。
顧客の体験を理解するには、できれば一人の人生を通じて追いかけるのが理想ですが、実務的には難しいのが現実です。そこで、ある時点にいる人の体験を聞き取り、別の時点にいる人の体験とつなぎ合わせて、一つのジャーニーとして理解していく必要があります。
| 【弊社えそらLLCの支援事例(家の売買を支援するサービス)】 売買を支援するサービスでは、「売る」「買う」の両方のフェーズにいる人たちからエピソードを収集しました。 「売って買う」という両方を同時に行うケースもあれば、片方だけの人もいます。そうした異なるフェーズの声をどう解釈して繋げていくかが非常に難しいテーマでした。 単にコンテキストを揃えるだけでなく、リサーチで得られたエピソードをどう解釈するかを丁寧に議論し、ワークショップを通じて仮説を組み立てながら理解を深めました。 |
事例のように、解釈と統合のプロセスがあって初めて、長いジャーニーを構造的に理解できます。
顧客理解を「点」ではなく「線」で捉えることが、不動産事業における新規サービス設計で意識すべきポイントです。
6-6. 顧客を一般化せず「解像度の高い理解」を目指す
不動産の新規事業では、まず地域や顧客の個別性に特化してサービスを作り込み、その後に横展開することが成功につながります。
なぜならば、不動産は地域の事情やライフスタイルによってニーズが大きく異なるため、最初から「誰にでも合う」サービスを目指すと焦点がぼやけてしまうからです。
たとえば、東京と地方では需要や商習慣が違うのはもちろん、同じ地域の中でも「生活重視」か「仕事重視」かによって求める家の条件はまったく異なります。大雑把な括り方をしてしまうと、こうした違いを見誤ってしまう可能性が高いのです。
むしろ、都心と地方といった属性よりも「利便性を求める人」という心理で括った方が、共通したニーズが見える場合もあります。
最初から過度に一般化するのではなく、特定の少数の顧客に熱狂的に愛されるような解像度の高い理解が必要です。その積み重ねが、やがて広く受け入れられるサービスにつながっていきます。
だからこそ、新規事業の第一歩は「誰のためのサービスか」を徹底的に絞り込むことから始めるべきなのです。
6-7. 非利用者(購入・契約に至らなかった人)の声も顧客理解に活かす
不動産の新規事業を成功させるには、購入や契約に至った利用者だけでなく、「非利用者(途中で選ばなかった人)の声」も理解することが大切です。
不動産の意思決定を理解するうえで大事なのは、契約・購入に至った人の体験だけではありません。「内覧したけれど購入しなかった」「リフォームを検討したけれど踏み切れなかった」といった「非利用者」の声もまた貴重な手がかりになります。
選ばなかった理由や迷いが生じた段階がどこかを理解することで、意思決定の構造をより立体的に把握できるからです。
利用者と非利用者の両方の体験を組み合わせて理解することで、顧客の判断をより立体的に捉えられます。新規事業の着想に役立つだけでなく、意思決定のリスクや心理的ハードルを解消するサービス設計につながります。
7. 不動産の新規事業の伴走はえそらLLCにお任せください

ここまで、不動産分野で挑戦できる19の新規事業アイデアと、それを成功に導くための7つのポイントを見てきました。
VR内見やAI査定のようなデジタル活用から、空間シェア、法人向けサービス、リノベーション、投資・相続コンサルまで、不動産の新規事業には実に多彩な方向性があります。
しかし、どんなに面白いアイデアも「顧客理解」がなければ成功しません。
不動産は「顧客理解に癖がある領域」であり、購入や賃貸の意思決定は一発勝負で後戻りできず、長いジャーニーを伴います。さらに、専門家と消費者の知識格差や、規制・商習慣の壁が存在し、新規事業設計には特有の難しさがあります。
えそら合同会社は、こうした難易度の高い領域においても成果を出せる強みを持っています。
不動産領域におけるえそらLLCの強み
- 顧客理解: 住宅購入や賃貸といった非日常的で大きな意思決定を対象に、鮮度の高いエピソードを収集し、文脈ごとに構造化することができます。仮説検証のプロとして、思い込みではなく実際の顧客体験に基づいた解像度の高い理解を導けます。
- 暗黙知の形式知化: ベテラン営業や現場担当者の無自覚なノウハウを行動観察・比較で抽出し、再現性ある知見に変換することができます。仮説を立てて観察・検証を繰り返すことで、経験知を組織全体で使える資産に変えられます。
- 規制理解: 変えられない壁と変えられる壁を切り分け、現場が受け入れやすい移行プロセスを設計することができます。法規制や商習慣に関する仮説を実際の現場で検証するプロセスを組み込むことで、実効性の高い変革を実現できます。
- ジャーニー分析: 売却・購入・リフォームといった長期的なプロセスを分断せず、一つの体験として構造的に把握することができます。異なるフェーズで得たエピソードを仮説的に組み合わせ、検証を重ねることで、長期にわたる顧客体験を立体的に理解できます。
| 【弊社えそらLLCの支援事例 会社名:非公開(注文住宅のオンライン相談)】 ・対面が好まれるサービスでも、オンラインで安心して利用いただけるように 消費者にとっての住まいづくりのプロセスには、あらかじめ検討しておくべき重要なポイントが数多く存在します。その相談をオンラインで受けられる仕組みの構想がありましたが、「大事な相談は対面で」という意識が強く、一筋縄ではいかない難しさに直面していました。 そこで、ストーリーボードでアイデアを具体化し、顧客インタビューで検証を実施。得られたエピソードを分析・整理し、住まいづくりにおける長期的な意思決定プロセスを構造的に把握しました。そのうえで顧客の不安を言語化し、オンラインならではの付加価値を設計しました。 結果として、サービスローンチ後に想定通りの成果につながり、現在も多くの方に利用されています。 |
| 【弊社えそらLLCの支援事例 会社名:非公開(住宅関連の対面相談窓口)】 ・MVP段階から伴走し、顧客理解と体験設計を支援 住生活分野における新規事業の立ち上げに際し、MVP段階から伴走しました。 サービスは一部地域で試験的に展開されていましたが、サービスの本格展開に向けて各仮説を検証し、施策の精度を上げていく上で、改めて顧客理解をしていく必要がありました。 そこで、調査を通じて顧客の不安や期待を丁寧に把握し、そのエピソードを整理・構造化。複数の典型的な顧客像(キャスト)として可視化することで、事業チーム内に共通理解を生み出しました。理想的なユーザー体験をデザインするワークショップを開催。中期的にどのような施策を行っていくのか方針を決定しました。 結果的に、現在は900社以上を抱えるサービスに成長しました。 |
このように、えそらLLCは、顧客理解・暗黙知の形式知化・規制理解・ジャーニー分析を強みとして、不動産の新規事業に必要な仮説検証をスピーディかつ精度高く行うことができます。
「新規事業のアイデアはあるが、どれを選べばいいのか分からない」「検証の仕組みを持たずに進めて失敗したくない」とお考えであれば、ぜひ一度ご相談ください。えそらLLCが、事業の確度を高めるための伴走パートナーになります。
現在、30分の無料カジュアル相談会を実施しています。不動産領域での具体的な検証方法や、新規事業の進め方などについて、その場でヒントをお伝えします。

まとめ
本記事では「不動産領域での新規事業アイデア」について解説してきました。最後に、要点を簡単にまとめておきます。
◆【デジタル化・利便性向上】不動産の新規事業アイデア5選
・VR・ARを活用したバーチャル内見サービス
・AIを活用した価格査定サービス
・契約や重要事項説明をオンラインで行えるサービス
・顧客との面談をオンラインで行うサービス
・不動産会社やサービスを比較できるサイト
◆【空間活用系】不動産の新規事業アイデア4選
・コワーキングスペース・シェアオフィス
・スペースシェアリング(空間の時間貸し)
・コンセプト型シェアハウス
・民泊と短期賃貸を組み合わせたハイブリッド経営
◆【ターゲットを絞った価値提供】不動産の新規事業アイデア5選
・高齢者向けの住み替え支援・賃貸管理
・外国人向け不動産仲介・生活サポート
・ペット共生型住宅仲介・コンサルティング
・空き家活用に特化したサービス
・法人向け(出張・転勤用)の短期賃貸サービス
◆【中古市場・リノベーション】不動産の新規事業アイデア2選
・中古住宅・マンションのフルリノベーション・再販事業
・遊休不動産の活用・再生・リノベーション
◆【知見を活かしたコンサル】不動産の新規事業アイデア3選
・個人投資家向けの資産運用コンサルティング
・相続・事業承継のコンサルティング
・自社ノウハウを活かした不動産会社向けのサービス
◆不動産の新規事業を成功に導く7つのフレームワーク・考え方
・迷ったときは「分類軸」で方向性を整理する
・顧客の「大きな決断」で安心して意思決定できるよう導く
・ベテランの経験を形式知化して組織の武器にする
・「変えられる壁」と「変えられない壁」を見極める
・長い時間軸で「顧客体験を理解する」視点を持つ
不動産の新規事業の伴走はえそらLLCにお任せください。アイデア出しの段階から事業創出をお手伝いいたします。












