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SaaS型新規事業の立ち上げのポイントと成功・失敗パターン・成功事例

「SaaS型の新規事業を始めたいけど、何から手をつけていいかわからない」
「せっかく開発したのに顧客に使ってもらえなかったらどうしよう」

このような悩みを抱えるのは、当然ともいえます。SaaS市場は華やかに見えますが、その裏側では、多くの企業が「市場のニーズを捉えきれない」という壁にぶつかり、苦戦しているのが現実だからです。

なぜ、多くのSaaS事業は失敗してしまうのでしょうか。それは、成功と失敗を分ける決定的な「型」を知らないまま、手探りで進んでしまうからです。

この記事では、SaaS型で新規事業を立ち上げる際に本当に重要なポイントを、よくある失敗例と成功例を対比させながら、誰にでもわかるように解説します。貴重な時間と情熱を無駄にしないために、ぜひ成功の型を学んでください。

【この記事を読むと得られるメリット】

  • SaaS型の新規事業の成功に必要な基本原則がわかる
  • よくある失敗パターンを事前に回避できるようになる
  • 段階的な事業拡張の具体的手順が身につく

SaaS型で新規事業の成功確率を高めるために、ぜひお役立てください。

1. SaaS型の新規事業を始める前に知っておくべき基本知識

SaaS型で新規事業への参入を検討する際は、基本的な事業構造と成功原則を正しく理解することが重要です。以下のポイントを確認しましょう。

  1. SaaSビジネスとは?従来型ビジネスとの根本的違い
  2. なぜ今SaaS型の新規事業が注目されるのか
  3. SaaS型の新規事業でも変わらない普遍的な成功原則
  4. 「何の課題を解決するか」という問いがすべての出発点

1-1. SaaSビジネスとは?従来型ビジネスとの根本的違い

SaaS(Software as a Service)は、インターネット経由でソフトウェアを提供するストック型の収益モデルです。

従来の売り切り型ソフトウェアとは異なり、顧客は月額や年額で継続的に利用料を支払います。

【SaaSビジネスの特徴】

  • 継続課金モデル:顧客との長期的な関係性の中で収益を積み上げていくため、初期の売上は少なくても、時間とともに安定した収益基盤を構築できます。解約されない限り収益が継続するため、「顧客満足度の維持」が事業成長の鍵です。
  • データ蓄積による価値向上:ユーザーが利用するほどデータが蓄積され、より精度の高いサービスを提供できるようになります。この特性をしっかり活用すれば、競合他社が後から参入しても追いつきにくい競争優位性を築けます。
  • ネットワーク効果:ユーザー数が増えるほど、既存ユーザーにとっての価値も高まる仕組みを持つSaaSも多く存在します。たとえば、チームで使うコラボレーションツールなどが、その典型例です。

このように、継続的な関係性こそが、SaaSビジネスの最大の特徴といえるでしょう。顧客の成功がそのまま自社の成功につながる構造になっているため、従来の「売って終わり」のビジネスとは根本的に発想を変える必要があります。

1-2. なぜ今SaaS型の新規事業が注目されるのか

企業のデジタル化が加速するなかで、SaaS市場は急速な成長を続けています。とくに働き方改革やリモートワークの普及により、業務効率化を支援するSaaSへの需要は高まる一方です。

【SaaS市場拡大の背景】

  • デジタル化の進展:従来は紙やExcelで管理していた業務をデジタル化する企業が増え、専用SaaSへの需要が拡大しています。この流れは不可逆的であり、今後さらに加速すると予想されます。
  • 初期投資の削減:SaaSは、オンプレミス型システムと比較して初期導入コストが低く、中小企業でも導入しやすい環境が整っています。クラウドインフラの発達により、開発・運用コストも大幅に削減されました。
  • 機能改善の継続性:SaaSは継続的にアップデートされるため、顧客は常に最新の機能を利用できます。従来のパッケージソフトのように、数年ごとに大きなバージョンアップを待つ必要がありません。

一方、市場の拡大とともに競争も激化しており、差別化された価値提供がより重要になっています。単に「便利なツール」を作るだけでは成功は困難で、顧客の深い課題を解決する明確な価値提案が求められます。

1-3. SaaS型の新規事業でも変わらない普遍的な成功原則

SaaSという業態に特有の特性はありますが、新規事業の成功原則は、ほかの業態と変わりません。最も重要なのは、正しい問いを立てて検証することです。

【新規事業成功の普遍的原則】

  • 顧客課題を深く理解する:表面的なニーズではなく、顧客が本当に困っている根本的な課題を特定することが出発点です。この課題理解が浅いと、結局は誰にも必要とされないプロダクトを作ってしまうことになります。
  • 仮説検証を徹底する:「きっとこんなものが欲しいはず」という推測ではなく、実際に顧客と対話して仮説を検証し続けることが重要です。思い込みによる開発は、高確率でNo Market Need(市場に必要とされない状態)に陥ります。
  • 小さく始める:最初から完璧を目指すのではなく、最小限の機能で市場の反応を確かめることが成功への近道です。大きく投資する前に、本当に価値があるかどうかを確認する姿勢が欠かせません。

原則を無視して、SaaSの技術的な特徴や指標管理に目を奪われてしまうと、本質を見失ってしまいます。どんなに優れた技術を使っても、顧客の課題を解決できなければ意味がないのです。

1-4. 「何の課題を解決するか」という問いがすべての出発点

先ほども述べたとおり、SaaS型の新規事業の成否を決める最初の分岐点は、解くべき問いを正しく設定できるかどうかです。

ここでいう解くべき問いとは、事業アイデアの3要素(課題・価値・解決策)のうち、課題と価値の組み合わせを指します。

この問いが曖昧だったり間違っていたりすると、どんなに優秀な開発チームでも、成功は困難になります。

【正しい問いの立て方】

  • 具体的な顧客像を設定する:「誰が困っているのか」を明確にし、その人の日常業務や課題を詳細に理解することから始めます。抽象的な「ビジネスパーソン」ではなく、「営業部の主任で月20件の商談を抱えている田中さん」といった具体性が必要です。
  • 課題を深堀りする:表面的な不便さではなく、その背景にある根本的な問題を探ることが重要です。「資料作成に時間がかかる」という課題の奥には「情報が散在していて探すのに時間がかかる」「フォーマットが統一されていない」など、より深い問題が隠れています。
  • 解決したときの価値を明確にする:その課題が解決されると顧客にどんな価値が生まれるのか、できるだけ定量的に示すことが大切です。「時間短縮」だけでなく「月10時間の削減で売上活動に集中できる」といった具体的な価値を描けるかどうかが鍵となります。

正しい問いを立てられれば、開発の方向性が明確になり、機能の優先順位も自然と決まってきます。逆に問いが曖昧なまま開発を進めると、機能が迷走し、結果として誰のためのプロダクトかわからない状態に陥ってしまいます。

「正しい問いの重要性は理解したが、その立て方がわからない」という方は、ぜひえそらLLCのカジュアル面談の機会をご活用ください。

無料で壁打ちできますので、問いの方向性を明確にするためにお役立てください。

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2. SaaS型の新規事業でよくある失敗パターンと回避策

続いて、SaaS型の新規事業で頻発の失敗パターンを確認しましょう。まずは、これらの失敗を事前に理解し、適切な対策を講じられるようになってください。

  1. 最大の失敗要因「No Market Need」に陥る
  2. 自分が作りたいものから始めて市場に刺さらない
  3. SaaS特有の落とし穴「オンボーディング失敗」で顧客離脱を招く
  4. 最初から多機能を目指して複雑化する

2-1. 最大の失敗要因「No Market Need」に陥る

新規事業の失敗要因として最も多いのがNo Market Need、つまり市場に必要とされないプロダクトを作ってしまうことです。SaaS型の新規事業でも、この失敗パターンが圧倒的多数を占めています。

【No Market Needに陥る典型パターン】

  • 競合分析から発想する:既存のSaaSを見て、「もっと良いものが作れる」と考えて開始するケースです。しかし、競合が解決している課題と市場が本当に求めている課題にはギャップがあることが多く、結果として差別化できない類似プロダクトを作ってしまいます。
  • 技術起点で発想する:「この新しい技術を使えば面白いものができる」という発想で始めるパターンです。技術的には優れていても、それが顧客の実際の課題解決につながらなければ、誰も使わないプロダクトになってしまいます。
  • 内部課題を一般化してしまう:自社で困っていることを、「他社も同じように困っているはず」と推測して開発を進めるケースです。しかし、企業ごとに業務フローや課題は大きく異なるため、自社の課題が市場全体の課題とは限りません。

No Market Needを回避するためには、開発前の顧客ヒアリングを徹底することが重要です。「作ってから売る」のではなく「売れることを確認してから作る」というアプローチが、成功確率を大幅に高めます。

2-2. 自分が作りたいものから始めて市場に刺さらない

多くの開発者や起業家が陥りがちなのが、顧客の課題ではなく、自分たちが作りたいソリューションから発想を始めてしまうことです。これは一見合理的に思えますが、失敗確率が高いやり方です。

【ソリューション起点の危険性】

  • 顧客ニーズと乖離してしまう:「こんな機能があったら便利だろう」という開発者目線の発想は、実際の顧客の業務フローや優先順位と合わないことが多々あります。開発者が「革新的」と思う機能も、現場では「使いづらい」と感じられる可能性があります。
  • 課題の重要度の認識を間違える:技術的に実現可能で面白い機能であっても、顧客にとっては優先度の低い課題しか解決しない場合があります。顧客は「あったら便利」程度のものにはお金を払いませんし、継続利用もしません。
  • 競合との差別化ができていない:既存の解決手段を十分に調査せずに開発を進めると、結果としてすでにある機能の劣化版を作ってしまうリスクがあります。後から競合を調べて愕然とするケースは、非常に多いのが現実です。

成功するSaaSは、顧客の課題から発想を始めているものです。「顧客が何に困っているか?」を徹底的に理解してから、「それをどう解決するか?」を考える順序を守ることが重要です。

2-3. SaaS特有の落とし穴「オンボーディング失敗」で顧客離脱を招く

SaaSには、特有の失敗パターンがあります。その代表的なものが、オンボーディングの失敗による初期離脱です。優れた機能を持つサービスでも、ユーザーが初期に価値を感じられなければ、継続利用されません。

【オンボーディング失敗の典型例】

  • 初期設定が複雑すぎる:サービス開始までに多くの設定や入力が必要で、ユーザーが途中で挫折してしまうパターンです。とくにBtoB向けのSaaSでは、システム管理者だけでなく、実際の利用者も巻き込んだ設定が必要になることが多く、ハードルが高くなります。
  • 価値実感までに時間がかかる:実際に価値を感じられるまでに時間がかかりすぎて、その前にユーザーが離脱してしまうケースです。とくに「データを蓄積すれば便利になる」類のSaaSでは、初期段階では価値を感じにくいという構造的な問題があります。
  • 操作方法の習得が難しい:既存の業務フローと大きく異なる操作が必要で、ユーザーが慣れる前に使用を断念してしまうパターンです。とくに業務効率化を謳うSaaSで、かえって業務が煩雑になってしまうのは本末転倒です。

オンボーディングの成功には、ユーザーが最初に「できた」「役立った」と感じる瞬間をシナリオとして緻密に設計することが欠かせません。この最初の成功体験が、その後の継続利用を決定づけます。

2-4. 最初から多機能を目指して複雑化する

成功しているSaaSを見ると、多機能で洗練されているため、最初からそのレベルを目指してしまう企業が少なくありません。しかし、これも典型的な失敗パターンのひとつです。

【多機能化による失敗の構造】

  • 開発期間が長期化する:すべての機能を完璧に作ろうとすると、市場投入までに時間がかかりすぎて、その間に市場環境や顧客ニーズが変化してしまうリスクがあります。長い開発期間中は顧客からのフィードバックを得られないため、的外れなプロダクトを作ってしまう可能性も高まります。
  • コアの価値が希薄化する:多くの機能を盛り込むと、本来解決すべき課題が曖昧になり、結果として「何でもできるが何も得意ではない」プロダクトになってしまいます。ユーザーにとって「なぜこのSaaSを使うべきか?」が不明確なら、競合との差別化も困難です。
  • ユーザビリティが低下する:機能が多いほどインターフェースが複雑になり、ユーザーが迷いやすくなります。とくに初回利用時の学習コストが高くなると、前述のオンボーディング失敗にもつながってしまいます。

成功するSaaSは、最初は1つか2つのコア機能に絞り込み、その分野で圧倒的な価値を提供することから始めています。機能の拡張は、コアな価値が市場に受け入れられてから段階的に進めるのが鉄則です。

3. SaaS型の新規事業の成功パターンと立ち上げのポイント

失敗パターンが理解できたら、次は成功に向けた具体的な手順を把握することが重要です。SaaS型の新規事業には再現性のある成功パターンが存在します。

  1. 成功の王道は「尖りと集中」から段階的に拡張する
  2. 狭いターゲットで深く刺さる状態を作る
  3. 最初の「できた」体験をシナリオで設計する
  4. 小さな市場でPMF達成後に機能・ターゲット拡張する

3-1. 成功の王道は「尖りと集中」から段階的に拡張する

成功しているSaaSの多くは、最初から多機能だったわけではありません。

実際には、特定の課題に対して尖った解決策を提供し、小さな市場で圧倒的な支持を得てから、段階的に機能やターゲットを拡張しています。

【尖りと集中戦略の要素】

  • 明確なターゲット設定:「すべての企業」ではなく、「従業員50名以下の製造業で品質管理に課題を抱える企業」といった具体的なターゲットを設定します。狭いターゲットを設定するほど、その層特有のニーズを深く理解でき、刺さるプロダクトを作りやすくなります。
  • 単一課題への集中:複数の課題を同時に解決しようとせず、最も重要なひとつの課題に集中して取り組みます。その課題を完璧に解決できれば、顧客にとって「なくてはならない」存在になれます。
  • 圧倒的な専門性:選択した領域では、競合他社を大きく上回る専門性と品質を追求します。「少し良い」程度では顧客は乗り換えてくれませんが、「圧倒的に良い」と感じれば積極的に導入を検討してくれます。

この戦略の利点は、小さな市場であれば比較的短期間で、PMF(プロダクトマーケットフィット)を達成できることです。PMFを達成すれば、顧客からの紹介や口コミによる自然な成長が期待できるようになります。

3-2. 狭いターゲットで深く刺さる状態を作る

尖りと集中戦略を実行するためには、狭いターゲット市場を正しく選定し、そこで深く刺さる状態を作ることが重要です。

ここでいう「深く刺さる」とは、顧客が「このSaaSがないと業務が回らない」と感じる状態を指します。

【深く刺さる状態を作る手順】

  • ターゲット顧客との密な対話を行う:選定したターゲット層の顧客と継続的に対話し、業務フローや課題を詳細に把握します。可能であれば実際の業務や状況を見学させてもらい、現場の実態を肌で感じることが重要です。
  • 業界特有の課題を発見する:一般的な課題ではなく、そのターゲット層特有の課題を見つけ出します。業界特有の課題ほど、既存の汎用ツールでは解決しにくく、専門的なSaaSの価値が高くなります。
  • 段階的に価値提供を進める:最初は小さな価値でも確実に提供し、顧客の信頼を獲得してから徐々に価値を拡大していきます。いきなり大きな変革を求めるよりも、着実な改善を積み重ねるほうが受け入れられやすくなります。

深く刺さる状態を作れれば、価格競争に巻き込まれることなく、安定した収益を確保できます。また、顧客からの詳細なフィードバックを得やすくなり、プロダクト改善のスピードも向上します。

3-3. 最初の「できた」体験をシナリオで設計する

SaaSの成功には、ユーザーが利用開始の初期に価値を実感できるオンボーディング設計が欠かせません。この最初の「できた」「役立った」という体験が、その後の継続利用を決定づけます。

【効果的なオンボーディング設計】

  • ゴールを明確にする:ユーザーがオンボーディングを完了した時点で、具体的に何ができるようになるかを明確に示します。「機能を覚える」ではなく「業務が改善される」といった実用的なゴールを設定することが重要です。
  • 順を追って成功体験を積み重ねる:いきなり高度な機能を使わせるのではなく、簡単な操作で小さな成功を積み重ねる設計にします。たとえば、最初は基本的なデータ入力から始めて、徐々に分析機能や自動化機能を使えるように導いていきます。
  • 価値は実データで体験してもらう:サンプルデータではなく、ユーザーの実際のデータを使って価値を体験してもらいます。自分のデータで結果が出れば、SaaSの価値をより実感しやすくなります。

オンボーディングの設計は、単なる機能説明ではなく、顧客の業務フローの中での価値提供シナリオとして捉えることが重要です。顧客が「これは自分の仕事に役立つ」「私の課題が解決できる」と実感できる瞬間を意図的に作り出すことが、成功の鍵となります。

3-4. 小さな市場でPMF達成後に機能・ターゲット拡張する

狭いターゲット市場でPMFを達成したら、次は段階的な拡張フェーズに入ります。ここでの拡張戦略が、その後の事業規模を大きく左右します。

【段階的拡張の手順】

  • 既存顧客からラーニングする:PMFを達成した市場での顧客からのフィードバックを詳細に分析し、拡張の方向性を決定します。「こんな機能があったら」「ほかの部署でも使いたい」といった声が拡張のヒントになります。
  • 隣接市場へ展開する:既存のコア機能を活かせる隣接市場を特定し、そこでの課題を調査します。業界を変えるか、企業規模を変えるか、利用部門を変えるかなど、拡張の軸を明確にすることが重要です。
  • 機能追加の優先順位を見極める:既存顧客の満足度を維持しながら新機能を追加するため、開発リソースの配分を慎重に決定します。コア機能の改善と新機能開発のバランスを取ることが継続的成長の鍵となります。

拡張フェーズでは、最初の成功パターンをほかの市場でも再現できるかどうかが重要になります。単純な機能追加ではなく、新しい市場でも深く刺さる価値を提供できるかどうかが成否を分けます。

4. SaaS型新規事業の成功事例

SaaS型の新規事業の理論を押さえたら、実際の成功事例から具体的な実践方法を学びましょう。

ここでは3つの国内企業の事例を通じて、成功パターンがどのように実現されたかを解説します。

  1. 【株式会社ブレイン・ラボ】人材業界特化で20年間築いた圧倒的な専門性
  2. 【Okage株式会社】飲食店DXで直感的な操作性を追求した成長戦略
  3. 【株式会社Bloom Act】「訪問を超える成果」で営業DXを再定義
  4. 「解くべき問い」の設定から始めた3社の共通点

※文中敬称略

4-1. 【株式会社ブレイン・ラボ】人材業界特化で20年間築いた圧倒的な専門性

株式会社ブレイン・ラボは、人材紹介・派遣業界向けシステムで業界トップクラスの企業です。2002年の設立から20年以上にわたり、一貫して人材業界に特化したソリューションを提供し続けています。

【ブレイン・ラボの成功要因】

  • 明確な課題設定からの出発:同社は人材業界の複雑な業務フローと管理の煩雑さという根本的な課題に着目しました。創業者が株式会社インテリジェンスの初代CIOという業界出身者だったことで、現場の本当の困りごとを深く理解していたことが成功の出発点となりました。
  • 狭い領域での圧倒的な専門性構築:「人材紹介・派遣」という特定業界に絞り込み、その分野では他社が追随できないレベルの機能と業界知識を蓄積しました。現在では人材大手企業から中小まで1300社以上に導入され、売上トップクラスの実績を誇っています。

同社の成功は、「尖りと集中」戦略の典型例といえます。最初から幅広い業界をターゲットにするのではなく、人材業界という狭い領域で深く刺さる状態を作り、そこから段階的に機能を拡張してきました。

現在は「マイリク」という定着支援ツールも展開し、単なるシステム提供から人材業界の総合的なDX支援へと事業領域を拡大しています。

参考:ブレイン・ラボ「人材紹介・派遣事業者の”アプリや生成AIの活用で人材ビジネスの変革を支援する”新サービス「マイリク」の提供を開始」
Wantedly「株式会社ブレイン・ラボの事業とカルチャー」

4-2. 【Okage株式会社】飲食店DXで直感的な操作性を追求した成長戦略

Okage株式会社は、飲食店向けのセルフオーダー・モバイルオーダー・モバイルPOSの「Okage DX Platform」を展開する企業です。「こだわりとおもてなしを輝かせる」をミッションに掲げ、飲食店の人手不足解消と売上アップを同時に実現するソリューションを提供しています。

【Okageの成功要因】

  • 飲食店特有の課題への深い理解:人手不足が深刻な飲食業界において、飲食店の人手不足解消と売上アップを同時に実現するという明確な課題設定から始まりました。単なるデジタル化ではなく、「こだわりとおもてなし」という飲食店の本質的な価値を輝かせるというコンセプトで差別化を図っています。
  • ITに不慣れなスタッフでも使える設計:管理画面の複雑化という課題に対して、「考えなくても進める導線」「その場で理解できるUI」という改善指針を設定しました。ユーザーテストを通じて得られた結果から、ITに不慣れな飲食店スタッフでも直感的に操作できる体験を実現しています。

特筆すべき点として、ローンチ後、導入店舗が急拡大するなかで、オンボーディング体験の設計に注力したことが挙げられます。

ITに不慣れな飲食店スタッフでも最初から価値を実感できるよう、UI/UXを緻密に設計し、問い合わせ工数の削減を実現しました。この取り組みがフリーミアム展開(基本機能を無料提供し有料プランで収益化する戦略)など、将来の成長戦略を支える強固な基盤となっています。

参考:Okage「飲食店DXを支援する「Okage DX Platform」が2022年度IT導入補助金対象ツールに認定
Okage株式会社 会社概要

4-3. 【株式会社Bloom Act】「訪問を超える成果」で営業DXを再定義

株式会社Bloom Actは、窓口のDXを実現するオンライン商談システム「ROOMS」を提供する企業です。2018年の設立以来、「新しい働き方の選択肢」を創造し、営業効率と成果の飛躍的向上を目指してきました。

【Bloom Actの成功要因】

  • 明確な価値提案の設定:コロナ禍でオンライン商談が急速に普及するなか、単なる「オンライン化」ではなく「訪問を超える成果を出す」という方向性を打ち出しました。既存のZoomやTeamsでは実現できない、営業に特化した独自価値を明確に定義しています。
  • BtoC営業の特性に特化した設計:BtoB向けとは異なるBtoC営業の特性を深く理解し、アプリインストール不要、直感的な操作、成約率向上に特化した機能設計を行いました。営業現場で本当に必要な体験を落とし込み、迷わず商談を進められるUI/UXを実現しています。

同社の成功は、競合他社との明確な差別化を実現したことにあります。オンライン商談という既存カテゴリでありながら、BtoC営業特有のニーズに特化することで独自のポジションを確立し、大手企業との業務提携も実現しています。

参考:株式会社Bloom Act 代表メッセージ
Bloom Act「BtoC業態向け「オンライン接客ソリューション “ROOMS”」をリリースしました」

4-4. 成功事例に共通する新規事業の成長パターン

これら3社の成功事例に共通しているのは、 特定の領域に価値を集中させ、そこで深く刺さる状態を作ったうえで、 段階的に事業を拡張している点です。

また、顧客との継続的な対話やオンボーディング設計を重視し、技術的な優秀さだけでなく顧客の成功にコミットしている点も重要な成功要因となっています。

えそらLLCでは、3社のアプローチと同様のケースの支援をしています。成功企業のように

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5. まとめ

本記事では「SaaS型の新規事業」をテーマに解説しました。要点をまとめておきましょう。

SaaS型の新規事業を始める前に知っておくべき基本知識として、以下のポイントを解説しました。

  1. SaaSビジネスは顧客の成功がそのまま自社の成功につながる構造になっている
  2. SaaS型の新規事業でも変わらない普遍的な成功原則を押さえる
  3. 「何の課題を解決するか」という問いがすべての出発点となる

SaaS型の新規事業でよくある失敗パターンと回避策を解説しました。

  1. 最大の失敗要因「No Market Need」に陥る
  2. 自分が作りたいものから始めて市場に刺さらない
  3. SaaS特有の落とし穴「オンボーディング失敗」で顧客離脱を招く
  4. 最初から多機能を目指して複雑化する

SaaS型の新規事業の成功パターンと立ち上げのポイントは以下のとおりです。

  1. 成功の王道は「尖りと集中」から段階的に拡張する
  2. 狭いターゲットで深く刺さる状態を作る
  3. 最初の「できた」体験をシナリオで設計する
  4. 小さな市場でPMF達成後に機能・ターゲット拡張する

SaaS型の新規事業の成功は、華やかな技術や斬新なアイデアではなく、顧客の課題を深く理解し、段階的に価値を提供し続けることで実現します。ぜひ、土台から積み上げる取り組みで、成功をつかんでください。

監修者

喜多 竜二

えそら合同会社 代表社員/HCD-Net認定人間中心設計専門家

2009年にUXデザインを専門とする「えそら合同会社」を設立、これまでに新規事業をはじめとする200を超える事業を支援してきた。自身は人をより良く理解するための認知心理学を専門とし、生活者に対する共感を出発点としたアイデア創出に力を入れている。東京大学工学部卒業、シドニー工科大学大学院修了。

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