あなたのペルソナが失敗する9つの原因とその対策とは?

UXデザインのためのペルソナの作り方

デザインの世界で「ペルソナ」と呼ばれる手法が使われるようになって、15年以上が経過しました。

皆さんは自社のプロジェクトに、ペルソナ手法を取り入れていますか?そして、「これは使える手法だ!」という実感を持っていますか?

本日は、私がUXデザインを10年やってきた中で遭遇した、ペルソナに対する “誤解” を紐解き、「どうすれば、ペルソナが使える手法になるのか」という視点で解説していきたいと思います。

UXデザインにおけるペルソナの9つの失敗パターン

UXデザインの現場においては、企画やデザインなど様々なフェーズで「ペルソナ」が活用されるようになってきました。ところが同時に、「ペルソナを作ってみたことはあるけど、今ではもう使わなくなった」という声もチラホラと聞くようになりました。

それは、なぜなのでしょうか?

ペルソナという手法が広まるにつれて、その考え方、作り方、使い方において、様々な誤解が生じているように感じます。ここでは、私がこれまでに見聞きしたペルソナの失敗パターンをご紹介しつつ、その対策方法を考えます。

失敗1.「ペルソナを使うことでチーム内でのコミュニケーションが容易になる」という誤解

ペルソナは、チーム内のコミュニケーションツールとして有用です。正しく作られたペルソナは、言葉にしづらいユーザー像を可視化し、ユーザーがどう考えるかを議論する際のよりどころになってくれます。

ただし、ペルソナ(というドキュメント)によって相手に伝えられる情報は、それがどんなに良く作られたものであっても、非常に限定的であることは認識しておくべきです。

コミュニケーションのしやすさという観点では、前提として、ペルソナを作成する過程をメンバーが共有しているか否かが重要になってきます。その前提なく、ディレクターがペルソナを作り、デザイナーに「あとよろしくね」と引き継ぐというやり方では、高い確率でコミュニケーションに失敗するでしょう。

  • コミュニケーションの前提として「ペルソナを作成する過程」にメンバーを巻き込もう

失敗2.「ペルソナを作ることでチームがユーザー視点を持てる」という誤解

ペルソナは、チームにユーザー視点をもたらしてくれる素晴らしいツールです。しかし、ペルソナ(というドキュメント)を作れば、自動的にユーザー視点を持てるというわけではありません。

ユーザー視点を持つために最も効果があるのは、チームで「ユーザーに会って話をする」という体験を共有することです。リアルなユーザーの声を聞くことで、チームの意識はガラッと変わります。この意味においては、ペルソナというドキュメントを作るかどうかは、あまり重要ではありません。

プロジェクトの後半から合流したメンバーに、出来上がったペルソナを見せてもピンと来ていないという経験をしたことはありませんか?チームとしてユーザー視点を持つためには、メンバー全員に、「(1人でも良いのでリアルな)ユーザーに会って話をする」機会を提供すべきだと思います。

  • ユーザー視点を持つために「ユーザーに会って話をする」という体験をチームで共有しよう

失敗3.「ペルソナを使うことで正しい意思決定ができる」という誤解

ペルソナは、企画やデザインにおける意思決定を支援してくれるツールです。チームメンバー全員が一つのユーザー像を共有することで、意思決定のブレがなくなり、スピードも上がります。

しかし、仮にブレがなくなったとしても、その意思決定が “正しい” 判断かどうかはわかりません。ペルソナは、ユーザーが抱える課題、つまりチームとして解かなければならない「問い」は定義してくれますが、「答え」を示してくれるものではないからです。

ペルソナにもとづいて判断した企画やデザインの方向性は、まだ仮説に過ぎません。後に続くいずれかのフェーズで検証しなければならないものだという認識を持っておきましょう。

  • ペルソナにもとづいて下した意思決定は「仮説」として後のフェーズで検証しよう

失敗4.「ペルソナを使うことでロジカルな意思決定ができる」という誤解

ペルソナを使うことで、自分がそれを良いと思うか否かではなく、「そこに描かれた人物がうれしいと思うか」という明確な判断基準ができます。ただし、それでもなお、判断には直感がものを言います。

例えば、デザイナーがペルソナにもとづいてデザインを決めるとき、ペルソナのドキュメントに書かれてある情報だけでロジカルに判断できることは稀です。

「ペルソナはこのデザインを見たときに、何を考え、どう行動するだろうか…?」

このような自問自答を繰り返しながら、デザイナーは、ペルソナから感じ取れる “何か” をもとに、自分自身の感性と直感を信じて、意思決定を進めます。

このことは、ペルソナを作り込むだけでなく、その読み手であるチームのメンバーの感性を磨くことも重要だということを表しています。そして、それに最も効果があるのが、失敗1のところでも出てきた「ユーザーに会って話をする」という体験です。

  • ペルソナを作り込むだけでなく、その読み手であるメンバーの「感性」を磨こう

失敗5.「ペルソナは意思決定の軸なのだから変えてはならない」という誤解

上述のとおり、ペルソナは意思決定の軸を提供してくれます。そのためか、「意思決定の軸になるものなのに、後から変えても良いものか?」という質問を受けることがあります。

ペルソナは、いま現在のチームによるユーザーの理解度を表したものと言えます。よって理解が深まれば、当然、ペルソナも深化させるべきです。特に、ユーザーリサーチを経ないで作成された「簡易ペルソナ」は、仮説としての “誤り” を多く含んでいるはずですので、積極的に精度を高めていくべきです。

とは言え、製品やサービスの方向性、つまりコンセプトを決定づける内容についての変更は、影響が大きいことも確かです。よって、データの裏付けがない「簡易ペルソナ」などをもとにアイデア発想や機能選定を行った場合は、早い段階でその受容性を検証しておくことが望ましいでしょう。

  • ペルソナに記載された「コンセプトに関わる情報」はなるべく早い段階で検証しよう

失敗6.「うちは万人向けのサービスなのでペルソナが作れない」という誤解

大規模なサービスを運営されている会社様からよく聞くお話です。老若男女、様々なお客さまがいるため、ペルソナとしての属性を絞りきれないのだと言います。ここにも大きな誤解があります。

まず、ペルソナはマーケティングにおけるターゲットセグメントを規定するものではないことを理解しましょう。つまり、ペルソナが20代女性だったとしても、それはターゲットを20代女性に絞るということを意味しません。ペルソナが表現するのは、あくまでも「デザインにおいて解決しなければならないユーザーの課題」であり、その課題を持つターゲットセグメントは20代女性以外にも複数あって良いのです。

次に、万人向けだったとしても、シェア100%でない限り、ペルソナは必ず役に立ちます。競合他社のサービスを使っているユーザーは、なぜあなたのサービスではなく、競合のサービスを選んだのでしょうか。サービスの選択という行動の背後にある価値観や考え方をペルソナにすることで、他社に勝てる戦略を練ることができるようになるでしょう。

  • 「ペルソナ≠マーケティングにおけるターゲットセグメント」という関係を理解しよう

失敗7.「ペルソナを作るときターゲットを絞ることから始める」という誤解

あらかじめターゲットを絞れるケース(例:社内システムの開発でユーザーは営業部の社員である、すでに動いている事業でターゲットが決まっているなど)であれば、問題ないかもしれません。

しかし、0→1の新規事業立ち上げや、すでに動いてはいるがターゲットが明確になっていない事業においては、まだユーザー像が見えていないはずであり、非常にあいまいなセグメント条件でしかターゲットを規定することができないでしょう。そこに労力を使っても、あまり良い見返りはありません。

おすすめなのは、先に、1)ユーザーが抱える本質的な課題や価値観をもとにペルソナを作り、その後に2)「このペルソナと同じ課題を抱える人たちは、どのようなセグメント条件を持つのか」を考えるという流れです。1)はデザインに、2)はマーケティングに必要な情報としてまったく別物なので、これらを混同してしまわないように注意しましょう。

  • ターゲットセグメントは、ペルソナを作成した「後」に考えよう

失敗8.「自分=ペルソナなので、わざわざ作る必要がない」という誤解

エンジニア出身者がエンジニア向けのサービスを開発するなど、あなた自身がターゲットの一人に含まれる場合、「この領域の課題については、自分が一番よくわかっている」と思うかもしれません。実際に、最初は自分自身のために開発していたサービスが、後になってヒットしたという例もよく聞きます。

事業開発の初期段階においては、それでもまだ構いません。ミニマムなプロダクトを最速で作るために、まずは自身を最初のユーザーとして考えるというのは合理的と言えます。一方、事業開発のステージが進むにつれて、この考え方はいくつかの深刻な問題を引き起こします。

・複数のユーザーに共通する価値観ではなく、自分一人の価値観がよりどころになってしまう
(運良く市場に刺されば良いが、反応が悪いときに次の打ち手がない)
・チームとしてユーザーについて学ぶ、すなわちユーザー視点を持つ機会が失われる
(他メンバーがあなたと同レベルの意思決定をすることができなくなる)

これらの問題はチームの機能不全につながってしまいますので、注意しましょう。

  • 自分=ペルソナという考え方は、事業開発の初期段階のみにとどめよう

失敗9.「ペルソナを作るための予算と期間を捻出できない」という認識

ペルソナの本質は、チームがユーザーを理解するところにあります。「ペルソナを作るための予算と期間を捻出できない」という発言が、「ユーザーを理解するための予算と期間を捻出できない」という認識で述べられているとすれば、これは大きな問題です。

最高のサービスをつくりあげるのに必要なのは、その領域においてユーザーを誰よりもよく知るチームです。製品やサービスを磨き上げることだけでなく、それを生み出すチームのユーザー視点を磨き上げていくことも同様に大切なのです。

立派なペルソナのドキュメントを作る必要はありませんが、「ユーザーを理解すること」は、パッケージのデザインやプログラミングと同じく、製品やサービスを生み出すうえで必須の活動だという認識を持っていなければ、他社との激しい競争において勝ち残れないのではないでしょうか。

  • 最高のサービスを生み出すために、その領域においてユーザーを誰よりもよく知るチームになろう!

まとめ:ペルソナを正しく活用しよう

ペルソナは正しく使えば非常に強力なツールです。皆さんのUXデザインプロジェクトにおいて、ぜひ有効に活用していただければと思います。

自社でのペルソナ活用やユーザーの理解にお困りの方はご相談に乗りますので、ぜひお問い合わせください。

この記事を書いた人

喜多 竜二

えそら合同会社 代表社員/HCD-Net認定人間中心設計専門家

2009年にUXデザインコンサルティングを専門とする「えそら合同会社」を設立、これまでに新規事業をはじめとする100を超える事業を支援してきた。自身は行動観察をはじめとするエスノグラフィを専門とし、生活者に対する共感を出発点としたユニークなアイデア発想の場づくりや、UXデザインの組織導入に力を入れている。東京大学工学部卒業、シドニー工科大学大学院修了。

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