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業務システムのUXデザインにおけるユーザーインタビュー実践 Tips 10選

業務システムのUXデザインにおけるユーザーインタビュー 実践Tips10選

あなたの職場で使われている業務システムをリニューアルすることになったとします。

あなたは、UXデザインの手始めとして、その業務システムのどこをどう改善していくべきなのかを探るために、実際にその業務が行われている現場に出向き、そこで働く人たちの話を聞くことになりました。

本日はこのような業務システムのUXデザインを想定したユーザーインタビューのTipsをご紹介します。

業務システム向けユーザーインタビューTips

ここでは、なるべく話を具体的にするために、「自社のコールセンターでオペレーターが使っている業務システム(顧客情報を閲覧できたり、通話内容の記録を残せたりするもの)のリニューアルをUXデザインアプローチで行おうとしている」ケースを想定します。

Tips1. インタビューの目的はレイヤーを一段上げて考えよう

ユーザーインタビューを開始するにあたり、まずは、「何のためにユーザーインタビューをやるのか」という調査目的を決めることになると思います。その際に大切なのは、「業務システム」を改善するだけなく、コールセンターの「業務全体」をリデザインするという視点を持つことです。

業務システムのUXデザインにおいては、根本的な問題を解決しようとすればするほど、システムを使った業務とオフライン業務との “境界線” を再定義することになります。また場合によっては、システムに手を加えることなく、オペレーションの仕方やコミュニケーションのルールを変えるだけで問題が解決されることもあるでしょう。そういった可能性も含めて検討するため、業務システムの中だけでなく、業務システムが使われる前後や、まわりがどうなっているのかを知る必要があるのです。

よって、ユーザーインタビューの目的は、「コールセンター業務における現状の課題を洗い出し、業務改善の方向性を導き出すこと」などとし、少し広い視野を持って臨みましょう。

Tips2. 新人になりきって業務を学ぶ姿勢を持とう

業務全体をリデザインするためには、対象となる業務を一定のレベルで理解する必要があります。ヒアリングやデモンストレーションなど、その際の方法はいろいろとあると思いますが、業務内容によっては理解が難しかったり、デザインに必要な情報が欠落しがちだったりするところがネックになります。

そのようなときにおすすめなのが、「相手を師匠と見立て、自分は弟子になりきって業務を学ぶ」という方法です。師匠であるコールセンターのオペレーターに、普段やっている業務を目の前で具体的に再現してもらい、弟子である自分は「なぜ、そのようにしているのか」など疑問に思ったところを質問します。

手法としては行動観察とインタビューの組み合わせに近いですが、お互いを師匠、弟子と位置づけることで、師匠は「自分には当たり前だけれども、新人だとわからないこと」を丁寧に説明してくれるようになり、弟子は「聞くのが憚られるような素朴な疑問」でも質問しやすくなるというメリットがあります。結果的に、対象となる業務を、より短時間で深く理解することができるでしょう。

Tips3. 前提や常識に意識を向ける素朴な質問を大切にしよう

業務システムを対象にしたユーザーインタビューでは、「本人にとっては当たり前過ぎて、話すまでもないと感じてしまう情報」をいかに引き出せるかがポイントになります。そうしたユーザーにとっての「当たり前」は、業務システムを利用したり、業務そのものを遂行したりするときの前提になっていることが多く、業務システムをデザインするうえで重要な情報になるからです。

業務システム、コールセンター業務全体、役職による視点、会社の文化など、様々なレイヤーにおいて、皆が変えられないと無意識的に思い込んでいる「前提」や、習慣化されて誰も疑わなくなった「常識」はないでしょうか?

暗黙的に共有されてしまっているこれらの情報は、当事者であるインタビュー対象者からは自然に出てきづらいため、「なぜ〜するようになったのか(過去)」「そもそも〜ではダメなのか(現在)」「〜を変えるとどうなるのか(未来)」など、前提や常識に意識を向ける素朴な質問をしてみると良いでしょう。

Tips4. なるべく全てのユーザーにインタビューしよう

業務システムの多くは、一般のWebサイトなどとは異なり、ユーザーが特定の部署や担当者に限られています。通常、インタビュー対象者は、業務システムの利用用途ごとに5人程度を人選することになりますが、ユーザーの総数が〜20人程度であれば「全員」に話を聞くことも検討すると良いでしょう。

業務システムを改善するだけであれば、タスクの流れや問題のパターンがわかれば良いので、全員に話を聞く必要はありません。しかし、これをコールセンター業務全体の改善と位置づけるのであれば、できるだけ多くの現場スタッフを巻き込んで自分ごと化してもらった方が、導入後に建設的なフィードバックを得やすくなり、結果的に良い業務システムになっていくはずです。

一人ずつインタビューする時間が取れないときはグループインタビューやワークショップ形式にしたり、人数が多すぎる場合はアンケートを併用したりすることも検討しましょう。

Tips5. インタビュー対象者はペアにして比較しよう

ユーザーインタビューからの発見点を解釈するときに、その発見点が特定のユーザーの個人的な事情によるものなのか、他の多くのユーザーに共通するものなのかを見分けることは、容易ではありません。

そこでおすすめなのが、「インタビュー対象者をペアにする」という考え方です。コールセンター業務であれば、ニーズの分岐点になると思われる、「業務システムの利用経験」「業務経験」「役職」などを軸に、軸の両端の2人をペアにして、同じテーマに対してどのような違いがあるのかを比較します。

  • 業務システムの初心者 vs ベテラン →  業務システムの利用経験による違いがわかる
  • 業務の初心者 vs ベテラン →  業務経験による違いがわかる
  • 現場スタッフ vs マネージャー → 役職の視点による違いがわかる
  • 社歴の短い vs 長い社員 → 会社の文化の影響がわかる

2人を比較することによって、発見点に影響を与えているものが何なのかが、より明確になるでしょう。

Tips6. マネージャーには3回インタビューをしよう

業務システムをリニューアルするにあたり、マネージャー(現場の事情をよく知る意思決定者またはそれに近いキーパーソン)には少なくとも3回、話を聞くことをおすすめします。

1回目、プロジェクト開始前に、まずは部署が抱える課題の全体像を聞きます。業務システムのリニューアルが、他の課題と比べて、その重要度、緊急度においてどこに位置づけられているのかを確認します。難しいのが、重要だが緊急ではないケースです。リソース不足が見込まれる場合は、UXデザインとして十分なパフォーマンスを発揮できない旨を伝えたうえで、それでも今やるのかを判断してもらう必要が出てきます。

2回目、プロジェクト冒頭に、業務システムおよび業務全体についての課題感を聞きます。マネージャー視点で、課題の構造、原因、重要度など、どのように認識しているのかを確認します。ただし、この時点では現場を知らないあなたがすべてを理解することは難しいはずです。後に続く現場スタッフへのインタビューにおいてどこにフォーカスすれば良いかのヒントが得られれば、まずは合格と考えましょう。

3回目は、現場スタッフのインタビューが終わった後に、あなたの認識を確認します。2回目の時点では具体的に理解できていなかった点を確認しつつ、現場で新たに発見された点を共有します。今度はマネージャー視点に加え、ユーザー視点での重要度もふまえたうえで、課題の優先度を決めていきます。

Tips7. 改善効果の高いタスクを分析的に特定しよう

ユーザーインタビューに使える時間は限られています。前半は改善効果の高い課題にフォーカスを絞り、後半は他に重要度の高い課題がないかを探索するなど、時間を有効に使いたいところです。

ボトルネックがどこにあるのかが見えていない場合は、インタビュー設計の一貫として、現場スタッフと一緒にボトルネックを可視化するワークショップを開催してみましょう。

  1. 自らが行っているおもな業務を5〜7つのタスク(動詞)に分割する
  2. タスクを「時間がかかる」「頻度が高い」などの軸上にプロットする
  3. 必要に応じて、タスクを5〜7つのサブタスクに分割して同じくプロットする

軸はケースバイケースですが、コールセンター業務であれば「時間」「頻度(または関与する人数)」は必ず押さえておくべきでしょう。

Tips8. 改善効果の高いタスクを感覚的に特定しよう

前述(Tips7)の改善効果の高いタスクの洗い出しにおいて見逃されがちなのが、ユーザーの “気持ち” です。ユーザーの主観的な満足度に直結するため、これも非常に重要です。

時間や頻度のように数値では測れませんが、現場スタッフに「感覚的にプロットしてもらう」ワークショップを行うことによって、比較的容易に視覚化できます。

  1. 自らが行っているおもな業務を5〜7つのタスク(動詞)に分割する
  2. タスクを「ストレスを感じる」「やりがいを感じる」などの軸上にプロットする
  3. 必要に応じて、タスクを5〜7つのサブタスクに分割して同じくプロットする

軸はポジティブ、ネガティブの2種類です。ポジティブ軸は「やりがいを感じる(楽しい、喜んでもらえる、自分のスキルが活かせる、達成感があるなどの感情)」、ネガティブ軸は「ストレスを感じる(難しい、ミスが許されない、自信が持てない、面倒くさいなどの感情)」を軸にすると良いでしょう。

Tips9. インタビューで聞くべき観点を整理しておこう

上述したマネージャーへのインタビュー(Tips6)やワークショップ(Tips7、8)を通じて、フォーカスすべきタスクは見えていると思います。ユーザーインタビューでは、それらのタスクを新人になったつもり(Tips2)で学びます。その際に、下記を参考に重要な観点をチェックしておきましょう。

  • 何をきっかけにそのタスクはスタートするのか?
  • タスクの進め方に影響を与える環境や状況(人、モノ、前提知識など)はあるか?
  • タスクを進める途中で、誰とどのようにコミュニケーションを取っているのか?
  • 業務システム以外にどのようなツールを使っているのか?
  • そのタスクを進めるうえで、誰かまわりに助けてくれる人はいるか?
  • そのタスクを進めた結果、どのようなアウトプットを作成しているのか?
  • そのタスクが終わった後、誰がどう引き継ぎ、確認あるいは承認しているのか?
  • そのタスクのどんなところに、やりがいまたはストレスを感じるのか?
  • そのタスクをできれば本当はどうしたいのか?

ただし、これらすべてを質問することが重要なのではありません。あなた自身が感じた「もっとこうしたら良いと思うのに、なぜそうしないのか?」といった素朴な疑問(Tips3)を深掘りしていきましょう。

Tips10. インタビューではポジティブな聞き方を心がけよう

業務システムのUXデザインにおけるインタビュー対象者の多くは、業務の一貫としてその場に参加しています。そこで注意しなければならないのが、インタビュー対象者の中には「この場で答えたことが、後々の業務や査定に響くのではないか」といった不安を抱いている人が、必ずいるという事実です。

つまり、「業務システムが使いづらいと感じる原因は自分のスキルが足りないからではないか」と思っている人は、問題を語ること=自分の弱みをさらすことになると感じ、「業務がうまく回らないのはあの人のせいだ(あるいは仕組みが悪い)からではないか」と思っている人は、問題を語ること=同僚の愚痴や上司への文句になると感じるため、正直に話をしてもらえない可能性があります。

そうならないために、場合によっては「なぜ〜できないのか?」といった原因を鋭く追及するような言い方は避け、「どうしたら〜できると思うか?」といったポジティブな言い方に変換して、インタビュー対象者の心理的な安全性を確保する工夫が必要になるでしょう。

まとめ:インタビューは設計と準備で勝負の7割が決まる

業務システムを対象にしたユーザーインタビューには、B2CのWebサイト等を対象にしたユーザーインタビューとはまた違った難しさがあります。本記事を参考にしっかりと準備を行って、ユーザーのニーズを発見してもらえればと思います。

 

UXデザインのためのユーザーインタビューの実施に興味がある方はご相談に乗りますので、ぜひお問い合わせください。

この記事を書いた人

喜多 竜二

えそら合同会社 代表社員/HCD-Net認定人間中心設計専門家

2009年にUXデザインコンサルティングを専門とする「えそら合同会社」を設立、これまでに新規事業をはじめとする100を超える事業を支援してきた。自身は行動観察をはじめとするエスノグラフィを専門とし、生活者に対する共感を出発点としたユニークなアイデア発想の場づくりや、UXデザインの組織導入に力を入れている。東京大学工学部卒業、シドニー工科大学大学院修了。

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