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UXデザインプロジェクトにおけるエクストリームユーザー調査の進め方

UXデザインプロジェクトにおけるエクストリームユーザー調査の進め方

UXデザインプロジェクトにおいては、ただユーザーリサーチをすれば良いのというではなく、「誰に話を聞くか」という観点が極めて重要です。

あなたは「エクストリームユーザー」という言葉を聞いたことがあるでしょうか?

本日は、世界最高のデザインファームとも言われるIDEO社でも使われている「『誰に話を聞くべきなのか』という問いに対する考え方」をご紹介します。

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エクストリームユーザー調査とは

はじめに、「エクストリームユーザー調査」は何か特定の調査手法を指す言葉ではありません。「誰に話を聞くべきか」を決めるにあたって、知っておくべき考え方です。

この記事で取り上げる、リサーチ対象者選定の考え方は、新規事業の立ち上げや、新しい製品・サービスの企画において、特に、0→1のアイデア発想が求められるようなケースで有効です。

エクストリームユーザーとは

extreme とは「極端な」という意味になります。つまり、エクストリームユーザーとは、市場を代表するような平均的なユーザーと比べて、

  1. 極端な行動パターン
  2. 極端な問題意識やこだわり
  3. 極端な環境

を抱えているような人たちのことを指します。

エクストリームユーザーとは

例えば、以下のような人たちが、エクストリームユーザーに該当します。

  • 決済サービスのデザインのために「現金を一切持ち歩いていない人」に話を聞く
    (極端な行動パターン)
  • フィットネス支援アプリのデザインのために「プロ上がりのスポーツインストラクター」に話を聞く
    (極端な問題意識やこだわり)
  • 留守番支援サービスのデザインのために「3人の子を持ち週5勤務するシングルマザー」に話を聞く
    (極端な環境)

エクストリームユーザーは、いわゆる「ヘビーユーザー」とは違います。「ヘビーかどうか」は対象となる行為の頻度やそれにかける金額の大小で決まることが多いことから、ヘビーユーザーから得られる発見は結果的に、平均的なユーザーのニーズが色濃くなっただけ、といったことがよくあります。

それに対して、エクストリームユーザーからは、平均的なユーザーが持たないような、質的にまったく違う気づきが得られることがあるのが特徴です。

なぜ、エクストリームユーザーなのか

従来のマーケティングにおいては、市場の平均的な層のニーズをつかんでそれに応える製品やサービスを市場に投入する、という方法が一つの勝ちパターンでした。しかし、今の時代、市場に聞けばすぐに出てくるようなニーズを解決するような製品やサービスは既に山ほどあり、そこに革新性はありません。

また、一般消費者に「何がほしいか」を尋ねるリサーチそのものが、以前のように機能しなくなっています。消費者は特に困っていない、あるいは気づいていないので、答えようがないからです。Apple創業者のスティーブ・ジョブズ氏が「マーケティングリサーチはしない」と言った理由もここにあります。

一方で、エクストリームユーザー調査は、市場でまだほとんどの人たちが気づいていない潜在的な問題を探索するという行為に他なりません。

自分たちの常識や固定観念からは思いもよらない気づきを得るために、意図的に、極端に偏った、そして自分たちのコネクションから遠い人たちの話を聞くのです。

  • 市場の平均的な層のニーズからは、革新的な製品やサービスは生まれない
  • 一般的な消費者はそもそも困っていない、あるいは自身が困った状態にあることに気づいていない
  • エクストリームユーザーは、自分の常識や固定観念から外れた気づきを与えてくれる

エクストリームユーザーに何を聞くのか

エクストリームユーザー調査は、0→1のアイデア発想が求められるようなプロジェクトにおける、問題探索のフェーズで行われます。仮説を生み出すフェーズなので、何かの仮説を持って臨むのではなく、フォーカスだけを決めて取りかかります。

多くの場合、そのフォーカスは「◯◯をどのようにしているのか」というシンプルな問いになります。相手の意見や考えではなく、実際に普段やっていることを聞くところから始めます。その際、できればインタビューだけでなく、行動観察を組み合わせると、より深く相手を理解できるでしょう。

次に、いまやっていることをお話いただく中で、疑問に思ったところを掘り下げます。定番の「なぜ、そのようにしているのか」という質問は、意識的にやっている行為はもちろんのこと、無意識のうちにやっている行為の深掘りにも十分有効です。

そして、その人の行動や考え方に何が影響を与えているのか、いわゆる「コンテキスト」を言葉の端々から探っていきます。ここが最も重要です。もちろん、本人に直球の質問をして聞いても良いのですが、自身でも覚えていなかったり、わかっていなかったりすることが多いので注意が必要です。

最後に余裕があれば、「できればどうしたいか」を聞いても良いでしょう。これは答えそのものではなく、「どうしてそれがうれしいことなのか」という理由や背景を探るための質問です。

  1. ◯◯をどのようにしているのか(事実)
  2. なぜ、◯◯をそのようにしているのか(理由)
  3. どのような背景で、そうするようになったのか(背景)
  4. できれば本当はどうしたいのか(希望)

エクストリームユーザー調査をはじめるうえでの5つの課題

上述のとおり、エクストリームユーザー調査は0→1のアイデア発想が求められるようなケースで非常に有効です。しかし、私の知る限り、この考え方を正面から取り入れているUXデザインプロジェクトはそう多くありません。

ただ費用がかかるから、という単純な話ではありません。仮説生成のための定性調査は、従来のマーケティングの考え方では理解しづらい部分があるからです。

私たちが過去、エクストリームユーザー調査をクライアント企業に提案し、採用されなかった経験をもとに、これを実務に取り入れる際に乗り越えるべき5つの課題をご紹介します。

課題1:導入時の費用対効果が見えない

0→1のプロジェクトにおける問題探索フェーズは、事業開発の中で最も不確実性の高いフェーズで、まだ事業化されるかさえも見えていない段階です。創業直後のスタートアップはもちろんのこと、企業内での新規事業開発プロジェクトでこれを行う場合は、予算の壁が立ちはだかります。

すべての定性調査に共通することではありますが、エクストリームユーザー調査をやってどのような結果が出るのかは、「やってみないとわからない」というのが正直なところです。よって、費用対効果の算出も困難で、従来の意思決定基準では導入できないといったことが起こり得ます。

今後、その新規事業にどれだけの費用を投下し、どれだけの市場シェアや売上規模をねらうのか。事業開発は常にリスクを伴いますが、エクストリームユーザー調査は通常では得られにくい気づきをもとにしたアイデアの幅出しによって、リスクをヘッジし、事業成功の可能性を高めてくれるものだと言えます。

そう考えると、ここにいくらなら投資できそうか、見えてくるのではないでしょうか。

課題2:ターゲットユーザーに聞くべきだという思い込み

「理屈は何となくわかるが、自分たちのターゲットユーザーではなく、むしろそこから外れた人たちの話を聞くことに本当に意味があるのか」という質問をいただくことがあります。同じ予算を割くのであれば、まずは正攻法でど真ん中を攻めるべきであると。

この意見には一理あります。実は、エクストリームユーザー調査はそれを否定するものではありません。通常は、エクストリームユーザー調査と並行して、平均的なユーザーやターゲットユーザーに対しても同様の調査を行います。エクストリームユーザーと平均的なユーザーの対比や、両者の間にあるギャップを知ることで、気づきを得やすくなるからです。

ただ、その場合も、「これだ!」と思う気づきは、エクストリームユーザーの側から得られることが多いのが事実です。

手持ちの仮説の答え合わせをしたい場合は、ど真ん中のターゲットユーザーに話を聞くべきですが、新しいアイデアを模索したい場合はその限りではありません。何のためにリサーチをしようとしているのか、いま一度、よく考えてみましょう。

課題3:売れる?売れない?いま市場のことを考えてしまう

前節に似ているところがありますが、「そんなに偏った人の話を聞いても売れる(つまり市場の大半の人たちに支持される)製品やサービスなんて出来ないんじゃないか」という質問をいただくこともあります。

エクストリームユーザー調査は、新しい気づきを得るための一つのアプローチであって、あくまでも発想の起点に過ぎないという認識が重要です。ユーザーから聞き出したお困りごとを、そのまま解決するものを作ろうという話ではありません。

また、新しい製品やサービスが実際に売れるかどうかは、それが形になってみないときちんと検証できません。エクストリームユーザー調査は解決策そのものを入手するためのものではなく、その前提となる「どこに解くべき問題があるのか」を探索するものであることを理解しておくと良いでしょう。

課題4:エクストリームユーザーが見つからない

エクストリームユーザーとは、極端な行動パターン、問題意識やこだわり、環境を持った人たちのことであるとお伝えしました。しかし、実際のところ、エクストリームかどうかの条件は、最初の段階では自明ではありません。極端な条件はいくらでも思いつきますが、「どう極端であれば、素晴らしい気づきを得られるのか」は、最初の段階ではよくわからないことが多いからです。

よって通常、エクストリームユーザー調査は段階的に行います。エクストリーム(かもしれない)なユーザーと接触し、発見と学習を繰り返すのです。「誰に話を聞けば良いか決められない」という方には、この視点を持ってまずは誰かに会ってみることをおすすめします。

あるいは、エクストリームな条件は見つかったが、「そのような人が見つからない」というご相談もよく受けます。自分のコネクションをたどって…ができればベストですが、現実には難しいことが多いです。そのような場合は、リクルーティングを専門にしている会社に依頼することを検討してみても良いでしょう。

課題5:エクストリームユーザー調査を専門に扱うリサーチ会社、またはデザイン会社が見つからない

エクストリームユーザー調査は、リサーチというよりは、ユーザーとのコミュニケーションを起点としたデザイン活動そのものであると言えます。よって、その実施においては、リサーチに対する専門性はもちろんのこと、企画やデザインの実践的な知見が要求されます。

リサーチとデザインの間を何度も行き来する技術が必要で、また、成果物が規定できるような活動ではないため、これに対応できる国内のリサーチ会社、あるいはデザイン会社はまだ少数だという印象です。

まとめ:0→1のアイデア発想が必要ならトライする価値あり

エクストリームユーザー調査は、0→1のアイデア発想が求められるようなプロジェクトでその威力を発揮します。新規事業の立ち上げや、新しい製品・サービスの企画において、ぜひ導入を検討してみてください。

エクストリームユーザーに興味を持たれた方、エクストリームユーザーが見つからなくて困っている方はご相談に乗りますので、ぜひお問い合わせください。

この記事を書いた人

喜多 竜二

えそら合同会社 代表社員/HCD-Net認定人間中心設計専門家

2009年にUXデザインコンサルティングを専門とする「えそら合同会社」を設立、これまでに新規事業をはじめとする100を超える事業を支援してきた。自身は行動観察をはじめとするエスノグラフィを専門とし、生活者に対する共感を出発点としたユニークなアイデア発想の場づくりや、UXデザインの組織導入に力を入れている。東京大学工学部卒業、シドニー工科大学大学院修了。

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