UXデザインにおけるペルソナの作り方を徹底解説!

UXデザインにおけるペルソナの作り方を徹底解説!

UXデザインプロジェクトにおいて私が最も大切にすべきだと考えているのは、ユーザーに対する共感です。この意味において「ペルソナ」手法が果たす役割は非常に大きいと思っています。

あなたは、自社のプロジェクトにペルソナを取り入れているでしょうか?また、あなたのペルソナは、最高のサービスをデザインするために、きちんと機能しているでしょうか?

本日は、UXデザインの根幹をなす「ユーザー視点」をどうすれば手に入れられるのか、というあなたの悩みを解決すべく、エスノグラフィを専門とする私が、普段どのようにペルソナを作っているのかをご紹介します。

目次

UXデザインにおけるペルソナの基礎

まずは簡単に、ペルソナの基礎をおさらいしておきましょう。

ペルソナとは

ペルソナとは、あなたの製品・サービスのターゲットユーザーを具体的な人物像として描写したものです。UXデザインにおける企画やデザイン、開発から運用に至るまで様々な場面で、「自分たちは、誰のどのような課題を解決するために、この製品・サービスをつくっているのか」を思い出させてくれるツールです。

根底にあるのは、デザインにおいて、「全員を満遍なく喜ばせようとするデザインは破綻する(結局は誰にも喜ばれないデザインになる)」という経験則です。ペルソナは、その反省をふまえて、「具体的な1人のユーザーのためにデザインする」という思想にもとづいています。

通常のペルソナは、何らかのユーザーリサーチにもとづいて作成されます。ユーザーリサーチから導き出された「複数のユーザーに共通する本質的な課題や価値観」を1人の人物像として描写することにより、1人のペルソナの望みを叶えることで、その背後にいる多くのユーザーの望みが叶えられることになるのです。

ペルソナのサンプル

ペルソナは1枚のシート形式で作成されます。1枚にまとめることで、プロジェクトの中でチームが意識すべき、ターゲットユーザーについての重要な情報を参照、俯瞰しやすくなり、製品・サービスによって解決すべき課題にフォーカスすることができるようになります。

ペルソナサンプル画像
出典:Xtensio

また、製品・サービスによって解決すべき課題は1つとは限りません。相反する考え方を持つユーザーがいるケースも多々あります。その場合は、固有の本質的な課題や価値観ごとに複数のペルソナを作成しますが、どのペルソナを優先すべきかを明確にしておくことが、ペルソナの活用において非常に重要となります。

なぜ、ペルソナを作るのか

ペルソナの用途に応じて、必要となるユーザー理解のレベル感が変わります。

ユーザーに対する共通の理解を持つため(レベル1)

皆さんは、経営者、営業、ディレクター、デザイナーが言う “ユーザー” が実はちょっとずつ違っていた、という経験をしたことはありませんか?

ペルソナを作成することによって、言葉にしづらく微妙なズレが生まれやすいユーザー像が可視化され、チーム内でユーザーに対する共通の理解を持つことができるようになります。ペルソナは、「ユーザーにとって何がベストか」をチームで議論する際のよりどころになってくれるでしょう。

ユーザーに対する共通の理解を持つためのポイントは、「ユーザー像の可視化」です。チームの個々のメンバーが持っている認識やイメージを書き出してみるだけでも、多くの気づきがあるでしょう。

  • ユーザー像の可視化によって、ペルソナはチーム内のコミュニケーションツールに

実務においてはまりやすいポイントについては、下記を参照してください。

デザインにおける意思決定のため(レベル2)

皆さんは、自分たちが議論を重ねて考えたデザインが、上司の鶴の一声でひっくり返った、という苦い経験をしたことはありませんか?

デザインの良し悪しをどう決めるのか。ペルソナを作成することで、自分や上司がそれを良いと思うか否かではなく、「そこに描かれた人物がうれしいと思うか」という明確な判断基準ができます。意思決定の軸を持てるようになるため、判断のブレがなくなり、スピードや決定に対する納得度も上がるでしょう。

ペルソナを意思決定ツールとして使うためのポイントは、「ユーザー像の正しい理解」です。確度の高い意思決定には、リサーチデータなどの根拠にもとづくユーザーの正しい理解が必要になります。「ユーザー像の可視化」だけでは、正しい理解をしたことにはならないので注意しましょう。

  • ユーザー像の正しい理解によって、ペルソナはデザインの意思決定ツールに

実務においてはまりやすいポイントについては、下記を参照してください。

企画におけるアイデア発想のため(レベル3)

皆さんは、新しいコンテンツや機能を考えようと思っても、ありきたりなアイデアや他社の二番煎じのようなアイデアしか出てこなくて困った、という経験をしたことはありませんか?

ペルソナはアイデア発想にも有効です。「そこに描かれた人物にとって最高の体験とは何か」という発想の具体的な切り口ができ、目的も明確になるからです。また、ペルソナを作成する前提として実施するユーザーリサーチは、個々のメンバーのアイデアの引き出しを充実させてくれるでしょう。

アイデア発想力を高めるためのポイントは、「ユーザーへの共感」です。ドキュメントや統計によるユーザー理解だけでなく、リアルなユーザーに会って話をするという体験をチームで共有することが重要になります。発想力に自信のないチームほど、その効果をはっきりと実感することができるはずです。

  • ユーザーへの共感によって、ペルソナはチームのアイデア発想ツールに

実務においてはまりやすいポイントについては、下記を参照してください。

なぜ、ペルソナ作成前にユーザーリサーチを行うことが重要なのか(UXデザインの質を高める2つの力とは)

ペルソナは、何らかのユーザーリサーチにもとづいて作られますが、そもそもユーザーリサーチを行うことで、どのような良いことがあるのかを見ておきましょう。

ユーザーの理解をもとにした直感力が手に入る

UXデザインでは、デザインの力でユーザーに意図する行動を(ユーザーの意向に沿う形で)起こしてもらわなければなりません。そのためには、前提として、ユーザーの行動、思考にどのようなパターンがあるのか、そこに影響を与えているものは何なのかを知る必要があります。

ユーザーリサーチによってユーザーを正しく理解することで、「このユーザーならどちらを好むか」という直感的な視点を持つことができるようになり、ユーザーの行動を精度高くデザインすることができるようになります。よく「ユーザー視点」と言われるものは、このような「ユーザーの行動や思考を本人になりきって推測する直感力」のことを指すと考えて差し支えありません。

このユーザーの理解をもとにした直感力は、すべてのタイプのUXデザインにおいて、必須の力だと言えるのではないでしょうか。

ユーザーへの共感をもとにした発想力が手に入る

UXデザインでは、ユーザーの課題を解決するために、ときに、これまでにないような新しい体験を発想し、デザインしていかなければなりません。この場合、ユーザーについてのロジカルな理解はもちろんのこと、発想の土台としてエモーショナルな共感が重要になります。

一般的に、アイデアの発想力には個人差がありますが、チームとしての発想力はかなりの部分で底上げが可能です。事実、ユーザーに直に会って話をしたことがあるグループと、そうでないグループでは、アイデアの質、量ともに大きな差が出ることがわかっています。ユーザーリサーチによってメンバーがユーザーに共感できる状況をつくり出すことによって、チームの発想力は格段に向上するのです。

このユーザーへの共感をもとにした発想力は、特に0→1でのアイデア発想が求められる価値提案型のUXデザインにおいて、重宝されることでしょう。

直感力や発想力はどうすれば得られるのか

ユーザーの理解をもとにした直感力、ユーザーへの共感をもとにした発想力、これらはいずれも私たちの感性から生み出される力です。これらの力の絶対量に個人差があることは確かですが、一方で、誰でも向上させることができるということも確かです。

これらの直感力、発想力を身につけるには、世界最高のデザインファームとも言われるIDEO社が「ユーザーの靴を履いて歩く」と表現しているように、ユーザーの体験をなるべくリアルな形で共有するのが一番の近道です。理想を言えば、ユーザーと長期間、生活をともにしたいところですが、一般のプロジェクトでは難しいと思われるので、私は以下をおすすめしています。

  • 1日でも良いので現場に行くこと
  • 1人でも良いのでユーザーに会うこと

ユーザーリサーチの手法としては、行動観察やインタビューが選択肢になってくると思いますが、あまりそうした手法にとらわれる必要はありません。とにかく、ユーザーの体験をなるべくリアルに共有させてもらうためにはどうすれば良いか、という視点でユーザーに会うことを重視しましょう。

ペルソナの作り方(前半〜ユーザーモデリング)

ペルソナには様々な作り方がありますが、ここでは一例として、私たちが実践している標準的な方法をご紹介します。定性調査をベースに「複数のユーザーに共通する本質的な課題や価値観」のパターンを見つけるところから始めるやり方で、一見、遠回りのように見えるかもしれませんが、ユーザーのことを深く理解することができ、非常に精度の高いペルソナが作れるのでおすすめです。

なお、ペルソナを作るという行為は、「ユーザーモデリング(ユーザーリサーチを通して得られたユーザーのデータや情報を整理、解釈、統合して、後に続くアイデア出しやデザインの過程で体系的に活用できる形に変換すること)」の一形態と考えられますが、いわゆるドキュメントとしてのペルソナを作成する工程は、ユーザーモデリング全体の1〜2割に過ぎないということを、下記で感じていただければと思います。

STEP1. リサーチを通して体験を集める

製品・サービスを企画あるいはデザインするフェーズにおいて、私たちが特に知りたいのは「その領域において、生活者は何を求めているのか」というニーズです。しかし、一般の生活者に「何がほしいか」や「何に困っているか」というニーズを直接的に尋ねても、求める答えは返ってきません。今の時代、生活者は特に困っていない、あるいは困っていることに気づいていないからです。

そこで、私たちは、ニーズを直接的に集めるのではなく、それを生活者の『体験』から抽出するという方法を取ります。行動観察をするのであれば日々の『習慣』を、インタビューができるのであれば過去の印象に残った『エピソード』を集めると良いでしょう。これらの『体験』の背景や感情を読み解くことによって、生活者本人であってもなかなか言語化できないニーズを抽出することが可能になるのです。

STEP1. リサーチを通して体験を集める

  • アウトプット:習慣やエピソードとして語られた『体験』

STEP2. 体験から背景・感情を読み解く

生活者の体験を集めたら、次はそれを解釈します。どうして、そのような行動や思考にいたったのかという『背景・理由』や、そこにどういう期待や不安、満足や不満があったのかという『感情』を一つひとつ読み解きます。生活者本人から語られた言葉だけでなく、そのときの環境や状況にも手がかりがあるはずですので、行動観察やインタビューを行うときは、そうした周辺情報もしっかりと収集しておくと良いでしょう。

この工程はあくまでも「解釈」なので、分析者の主観が入ります。それで構いません。それぞれのメンバーが自身の主観を信じて解釈していくことで、「一つの体験をより多面的に捉えることができる」という点に意味があるからです。また、人の体験の解釈には、人間の行動特性(例:人間工学)や心理特性(例:認知心理学)に対する知見が役立つことが多いため、学んでおくことをおすすめします。

STEP2. 体験から背景・感情を読み解く

  • アウトプット:体験の『背景・理由』や『感情』

STEP3. ニーズを抽出・発想する

生活者の体験とそこから見えてきた背景・感情をもとに、生活者の『ニーズ』を抽出します。「つまり、この体験にはどういう期待や要望があったのだろう?」という問いに対する答えを「〜したい」というセリフ形式で表現しましょう。語尾を統一したセリフ形式にすることには、1)生活者の言葉(視点)で考えることができる、2)情報をニーズに変換することができる、というメリットがあります。

生活者の理解を出口とするユーザーモデリングの場合は、素直に読み取れる『ニーズ』を抽出しますが、アイデアの発想を出口とする場合はさらに、「同じ文脈に置かれた人であれば、こういう期待もあるのではないか」という視点で『ニーズ』を “発想” していきます。本当にそのようなニーズがあるかは後の工程で検証しますので、この段階では “ありそうだ” という感覚を信じて作業を進めましょう。

STEP3. ニーズを抽出・発想する

  • アウトプット:生活者の『ニーズ』

STEP4. 価値観を導出する

出てきたニーズを小さなグループにしていきます。それぞれのニーズに「なぜ、そう思うの?」という質問をぶつけて、その回答に共通性が “ありそう” なものを直感的に近くに寄せていきます。重複するグループがあったり、仲間はずれのニーズがいたりしても構いません。経験上、グループは後で必ず見直すことになるので、この時点ではあまり悩まず、あくまでも感覚的に進めていくのがコツです。

次に、グループに表札をつけていきます。これもやはり「〜したい」というセリフ形式にします。表札に合わないニーズは、他のグループに移しても構いませんし、グループ自体を作り直しても構いません。ひと通りの作業を終えたら、今度はいま作った表札に対して、同様にグルーピングと表札づけを行います。決まりはありませんが、最上位の表札が10枚前後になるまで、この作業を繰り返します。

STEP4-1. ニーズをグルーピングする

この工程が意味するところは何でしょうか?一般的に、グルーピングは上位概念を探し出す行為です。グルーピングが進むにつれ、ニーズは、「〜がほしい(手段/have)」→「〜をしたい(目的/do)」→「〜でありたい(価値観/be)」と変換されていきます。つまり、この工程によって、生活者がその領域に対して持っている『価値観』のパターンを洗い出しているのです。

STEP4-2. 価値観を導出する

  • アウトプット:生活者の『価値観』とその必要条件としてのニーズ

STEP5. 解くべき問いを見つけ出す

STEP4で導出された価値観はあくまでも現状がベースになっていますが、STEP5では、未来に向けた価値観やニーズを発想していきます。価値観の前提になっている常識は何か、もしその常識がくつがえされたとしたらどのような価値観が生まれ得るのかを、チームで考えましょう。0→1でのアイデア発想が求められる価値提案型のUXデザインにおいては、非常に重要な工程となります。

「もしかすると、こういう期待や要望があるのではないか?」というものが見つかったら、それをHMW(How might we)と呼ばれる形式、すなわち「どうすれば、◯◯◯◯できそうか?」という質問文(=解くべき問い)にしておきましょう。これらは、STEP6で作るキャストやワークショップのインプットとして活用します。

下記の記事で、実際の『解くべき問い』の例をご覧いただけます。

  • アウトプット:製品・サービスによって『解くべき問い』

ペルソナの作り方(後半〜キャスト&ペルソナ)

ここからいよいよペルソナの作成に入ります。前章までの準備で、チームのユーザーに対する理解度や共感度はかなり高まっていると思います。ここからは、それをアウトプットしつつ、磨き込んでいく工程です。

STEP6. キャストを作成して機会領域をさぐる

ここまでに出てきた生活者の価値観ごとに、小さなペルソナ=『キャスト』を作ります。私たちが作るキャストは、ベースとなる価値観を端的に表すキーフレーズ(セリフ)と、その価値観にひもづくニーズを中心に記載したシンプルなものです。ペルソナよりもフォーカスが絞られている分、取り扱いやすいという特長があります。そして、一人ひとりのキャストは、生活者から見たソリューションの方向性を表しています。

STEP6. 機会領域をさぐるためのキャストを作成する

0→1でのアイデア発想が求められる価値提案型のUXデザインの場合

キャストをインプットにしたソリューションのアイデア出しを行います。やってみると、アイデアの幅や深さを出しやすいキャストもあれば、平凡なアイデアしか出てこないキャストもあることに気づくでしょう。私たちが、特定のケースを除き、キャスト単体での評価をあまりしない理由がここにあります。すなわち、価値観やニーズは、最終的にはアイデアとの組み合わせによって優先すべきかどうかが決まるのです。

その後、アイデアを絞り込みます。ここで言うアイデアとは「キャストとして表現された価値をどのように実現するのか」を表すものなので、アイデアを絞り込むことで、ねらうべきキャスト=『機会領域』を絞り込んでいることになります。絞り込まれたアイデアは、何度か磨き込みをかけた後にストーリーボード(弊社がよく使うのは4コマ漫画)化し、市場の反応を見るために定量調査にかけておきましょう。

リニューアルや問題改善型のUXデザインの場合

既存の製品・サービスがある場合は、既存のユーザーがどのキャストに共感するのかを定量調査で検証します。製品・サービスのヘビーユーザーまたはアクティブユーザーの反応を見れば「(いま)相性の良い価値」がわかり、ターゲットセグメントの反応を見れば「(今後)優先すべき価値」がわかります。これらを軸にキャストをプロットすることで、今後ねらっていくべきキャスト=『機会領域』が見えてくるでしょう。

  • アウトプット:絞り込まれたキャストが表す『機会領域』

STEP7. キャストを統合する

ここからキャストの統合に入ります。STEP6で絞り込まれたキャストについて、各キャストが表す価値観を持つ人/持たない人を分け隔てる条件、すなわち分岐点は何かを考えます。分岐点は、「経験=過去に何度も行ったことがある」という具合に、項目と値で表現されます。ユーザーリサーチを遡れば答えはおおよそ見えてきますが、他にもキレの良い分岐点がないかを発想、検討しておきましょう。

次に、キャストの内容および分岐点を見ながら、優先度の高いキャストを軸に、同一人物にしても違和感のないキャストをグルーピングしていきます。当然、同時に成立し得ない分岐点を持つキャスト(例:キャストA「住まい:一戸建てのキャスト」、キャストB「住まい:賃貸アパート」)は、別のグループになるでしょう。ここでできたグループの一つひとつが、『ペルソナの骨格』を形成することになります。

ニーズの分岐点をさがしてキャストを統合する

  • アウトプット:統合されたキャストが表す『ペルソナの骨格』

STEP8. ペルソナとしてシートに書き起こす

UXデザインにおけるペルソナに最低限必要な要素は、1)ゴール、2)ニーズ、3)コンテキストの3つです。これらの情報はSTEP7までの過程で、すでに手元に揃っているはずです。

1)ゴール=何をしようとしているのか、何のための体験なのか

キャストとして表現した価値観や、ニーズの中でも上位のものがこれに相当します。
(例:良い会社に就職する)

2)ニーズ=目的までの一連の体験において、満足や成功に強く関わってくるもの

目的にひもづく中位〜下位のニーズがこれに相当します。
(例:東京のデザイン業界事情を知りたい)

3)コンテキスト=目的やニーズを生み出す状況や行動、思考に影響を与えるもの

キャストを統合するときに考えた分岐点がこれに相当します。
(例:職業:地方美大生(就活中)、経済状況:親元を離れて仕送りをもらっている)

これらの情報を整理できたら、ペルソナに名前、基本属性(年齢、性別、職業など)、写真を付けます。基本属性は、ターゲットの中でも代表的だと思われる属性を与えましょう。なお、ペルソナとマーケティングにおけるターゲットセグメントの違いが気になる方は、ぜひ下記をご参照ください。

次に、上記すべての情報を見ながら、ペルソナが現在どういう状況にいて、何を考え、どのような体験をしているのかを、物語として書き起こします。物語はただ事実のみを伝えられる場合と比較して、22倍も記憶に残りやすいと言われています。共感を大切にするUXデザインにおいて、物語化は非常に有効に機能するでしょう。

すべてのペルソナを作成したら、改めて優先順位をつけます。キャストを作成したときに定量調査を行っていれば、それを根拠にすると良いでしょう。

STEP8. ペルソナとしてシートに書き起こす

  • アウトプット:1枚のシートとして表現された複数人の『ペルソナ』

STEP9. ペルソナを活用する

良いペルソナは、チームとして解くべき問いを定義し、企画やデザインといった次の活動の起点になります。製品・サービスのコンセプト検討、ビジネスモデルの検討、コンテンツ設計、デザインなど様々な場面において、議論の土台や、意思決定を支援してくれるツールとして活用していきましょう。

また、サービスの改善に終わりがないように、ユーザーを理解するという活動にも終わりがありません。ペルソナを作った後も、「ユーザーに会って話をする」という活動を継続し、発見点をチームやペルソナにフィードバックすることを習慣化することで、チームのユーザー視点を磨き上げましょう。

ペルソナの導入にあたってのFAQ

最後に、ペルソナ導入にあたってよくあるご質問にお答えします。

Q. 結局、ペルソナって必須なの?

ペルソナを作ることそのものは必須ではありません。しかし、「ユーザーを理解し、理解したことをチームで共有すること」は必須だと言えます。製品・サービスを企画、デザイン、改善していくうえで、ユーザーについてどこまで理解しなければならないのか、それに対してチーム全体としてどの程度理解できているのかを見極めたうえで、適切な手法を選択していただければと思います。

Q. ペルソナを作るのって、すごく時間がかかるんじゃない?

本記事でご紹介した方法だと、ユーザーリサーチを含めて1〜2ヶ月ほど必要になります。これが長いか、短いかは皆さんの判断に委ねますが、今後、何年も続けていく製品・サービスの土台をつくる期間であることや、意思決定のスピードが上がること、判断ミスにより手戻りが減ることなどを考えれば、また見方も変わってくるのではないでしょうか。

Q. もっと早くペルソナを作れる方法はないの?

あります。ペルソナの用途をいったん「ユーザーに対する共通の理解を持つこと」に絞り、ワークショップ形式で「簡易ペルソナ」を作ることがあります。この方法であれば、最短1日〜1週間ほどでペルソナを持つことができます。

また、製品・サービスの開発サイクルにあわせてコンパクトなユーザーリサーチを繰り返し、ペルソナを少しずつブラッシュアップしていく方法もあります。ユーザーに対する理解を、どのようなスピード感で深めたいかによって、適切な手法を選択してください。

Q. 結局のところ、ペルソナよりもビジネスの要件が優先されるのでは?

例えば、Webサイトのトップページに掲載する広告について議論になることがあります。ビジネス視点では、「より目立ってクリックされる位置に広告を置いてほしい」となりますし、ユーザー視点では「このサイトの目的に関係のない情報は出さないでほしい」となり、意見が真正面から対立します。

UXデザインは、ビジネスの成果とユーザーの満足が循環する仕組みをつくる活動です。どちらか一方に偏るとうまく循環してくれません。「ユーザーの満足が担保された中で、最大限ビジネスの成果を生み出す」という考え方のもと、効果検証をしながら、うまくバランスを取っていく必要があるでしょう。

まとめ:最高のサービスをつくりあげるために

最高の製品・サービスをつくりあげるのに必要なのは、その領域においてユーザーを誰よりもよく知るチームです。そのためのツールとしてペルソナは、作成に要した時間やお金に対して、余りある価値を提供してくれるでしょう。

ペルソナに興味を持たれた方、ユーザーを真に理解した最強のチームをつくることに興味がある方はご相談に乗りますので、ぜひお問い合わせください。

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この記事を書いた人

喜多 竜二

えそら合同会社 代表社員/HCD-Net認定人間中心設計専門家

2009年にUXデザインコンサルティングを専門とする「えそら合同会社」を設立、これまでに新規事業をはじめとする100を超える事業を支援してきた。自身は行動観察をはじめとするエスノグラフィを専門とし、生活者に対する共感を出発点としたユニークなアイデア発想の場づくりや、UXデザインの組織導入に力を入れている。東京大学工学部卒業、シドニー工科大学大学院修了。

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