あなたがもし「新しいヘルスケアサービスを立ち上げるプロジェクト」を任されたとしたら、何をとっかかりにスタートしますか?
私たちがいただくUXデザインのご相談の多くは「何をつくるべきかはまだ見えていないが、とにかく一緒に面白いもの、これまでにないものをつくってほしい」というもので、いわば “解くべき問い” そのものを探るところからはじまります。
本日は、このような「問いの探索」において有効な、一般生活者の行動観察データの読み解き方を、具体例とともにご紹介します。
目次
ヘルスケアをテーマにした行動観察レポート
未来のヘルスケアサービスを考えるにあたり、アイデア発想を出口とした行動観察を実施しました。行動観察については、下記に詳しく書きましたので、ぜひご参照ください。
調査目的:アイデア発想の切り口を得る
今回は、0→1でのアイデア発想が求められる新規事業開発プロジェクトを想定しています。「未来のヘルスケアサービスを考えるためのアイデア発想の切り口を得ること」を目的として調査を実施しました。
調査課題:ヘルスケアにおける生活者の習慣を探る
調査のフォーカスは「一般の生活者は、普段の体調管理をどうしているのか」に定めました。機会領域を全方位的に探るタイミングなので、やや広めの設定としました。今後、必要に応じて、フォーカスを絞っていこうと考えています。
調査方法:生活者に対するリモートでの行動観察を実施
一般の生活者に、専用アプリを通じて以下2つの質問を投げかけて、回答を動画で投稿してもらいました。動画は行動観察とインタビューの両方を含んだ内容になっています。
Q. 体調が悪くなる 「予感」 がする瞬間は?
Q. 自分の体調を知るために行うことは?
調査結果:延べ45人分の行動観察データを回収
今回の調査で得られた行動観察を公開しています。下記のページをご参照ください。
Q. 体調が悪くなる 「予感」 がする瞬間は?
http://client.dig-c-report.com/seminar20170830/275/ (26人の回答)
Q. 自分の体調を知るために行うことは?
http://client.dig-c-report.com/seminar20170830/276/ (19人の回答)
未来のヘルスケアを考えるうえでの7つの問い
アイデア発想を出口としたリサーチを行う場合、アウトプットは発見された事実の解釈にとどまりません。こういうニーズやゴールがあるのではないか、という仮説そのものを発想によって導出していきます。
そして、それを “解くべき問い” として表現したのが、下記の7つの問いです。
Q1. どうすれば、日常の行為の中で、自然と自分の体調を知ることができそうか?
こちらの男性(42歳)は、趣味でやっているドラムを踏める回数を通じて、今の自分の体調を知るそうです。体調を知るために何か特別な行動を取っているというわけではなく、普段やっていることの中で、経験的に体調を測るためのモノサシを持っているようです。この方のように、体調を管理するという行為が、もっと日常の行為の中に溶け込めば、より多くの人たちが自然と体調管理を実践できるのかもしれません。
Q2. どうすれば、自分の意識や努力の必要なく、良い体調を保つことができそうか?
こちらの女性(69歳)は、毎日測定した体重をメモしておき、変化があったときに原因をたどれるようにしているそうです。これは年齢的にも体調管理にかなり意識が向いているからこそできることであって、健康な若者だとこうはいかないかもしれません。高い意識を持ってストイックに努力しなくても、健康を保つことができる方法があれば、特に若者にとっては理想的なのではないでしょうか。
Q3. どうすれば、体調管理を習慣化できそうか?
こちらの男性(57歳)は、お風呂上がりに体重、体脂肪率、基礎代謝などを測っているそうです。自分の体調の変化を数字で見ることができるところに良さを感じているようです。体調管理は、健康なときほど変化がないため、飽きがきやすい行為の一つだと考えられますが、この方のように何かに楽しみを見出すことができれば、継続するモチベーションになるのかもしれません。
Q4. どうすれば、体調の変化を事前に予測できそうか?
こちらの女性(34歳)のように、天気が悪い日に頭痛などの症状が現れる方は多いようです。体調の変化は、体調が悪くなったときにはじめて気づく人が多いようですが、天気であれば、天気予報を見ることで事前に予測することができますよね。他の人たちも、体調の変化を事前に予測することができれば、安静にしたり、薬を持参したり、何らかの対策を講じることが可能になるのではないでしょうか。
Q5. どうすれば、体調が悪くなりかけたときに、それ以上悪くならないようにできそうか?
こちらの女性(29歳)は、起きたときに寝汗の量が多い日は体調が悪くなるということを経験的に知っています。しかし、水分補給には気をつけているものの、ほかに有効な対策を打つことができず、わかっていても頭痛や吐き気が起きてしまうようです。体調が悪くなる予兆を感じたときに、自分で何か有効な対策を打つことができれば、体調の悪化は軽くてすむはずですが…。
Q6. どうすれば、悪くなった体調を緩和あるいは早く回復できそうか?
こちらの女性(69歳)は、体調が悪くなると水をたくさん飲んだり、さっぱり系のものしか食べられなくなったりして、さらに食欲が落ちるそうです。いくら予防や対策をしても、体調が悪くなるときはあります。病院に行くほどではないにしても、自己流よりも良い対処方法を知っていれば、それ以上、体調が悪くなることを緩和できたり、回復が早まったりするのではないでしょうか。
Q7. どうすれば、病院に行くべきかを自分で正しく判断できそうか?
こちらの女性(43歳)は過去に甲状腺機能障害を患った関係で、自身の血圧を健康のバロメーターにしています。もし、再発したときにはすぐに病院に行こうと思っているそうです。この方のように、過去に大病を患った人であれば、何かあれば病院に行くという意識が強いですが、健康な人ほど病院に行くべきかの判断がつかず、必要以上に無理をしてしまっている、ということがあるかもしれません。
まとめ:未来のヘルスケアを考えてみませんか?
上記の7つの問いを使えば、今すぐにでも未来のヘルスケアサービスを考えるワークショップを開くことができるでしょう。
その際、参加される方にはぜひ、元になった行動観察データ(動画)を視聴いただくことをおすすめします。チームの発想力を左右するのは、抽象化された上記のような「問い」だけでなく、リアルな生活者の体験に触れることで深まった「共感」だからです。
未来のヘルスケアサービスを考えるというテーマでワークショップをやってみたい方は、ぜひお問い合わせください。