新規事業のUXデザインは自社でやるべき?それとも外注すべき?

UXデザインは自社でやるべき?それともUXデザイン会社に外注すべき?

UXデザインを始めるにあたり、自社内のリソースのみでやるか、外部のUXデザイン会社に依頼するかで、迷ったことはありませんか?

私は、UXデザイン会社を経営する身ではありますが、「UXデザインは自社で回せるようになるべき」という考えを持っています。ただ、それでも、外部のUXデザイン会社に依頼することには多くのメリットがあるとも思っています。

どういうときに外注を検討すべきなのかを考えるヒントにしていただくため、本日は、『私がもし事業会社を経営していて、これから新規事業を立ち上げようとしていたら』という視点でお話しします。

新規事業の立ち上げにおいて不足するリソース

新規事業の立ち上げ期は、スタートアップであれ、大企業の新規事業開発部門であれ、慢性的にリソースが足りない状況が続きがちです。少人数のチームで立ち上げることが多いため、スキルセットも不足するでしょう。

事業内容にもよりますが、少なくとも企画段階では、「リサーチ」「デザイン」「ビジネス」の3領域に対する専門性が必須です。これらのスキルセットを内部から調達するのか、外注するのか。頭を悩ませている経営者やプロジェクトマネージャーの皆さんも多いのではないでしょうか。

正しい人に正しい質問をするリサーチ技術

新規事業の企画段階においては、「正しい人」に「正しい質問」をすることが重要です。

プロジェクト初期、つまり事業アイデアを見つけ出す仮説生成のフェーズでは、自分たちのコネクションから調査協力者を募ることも多くなるでしょう。人脈と行動力で、まだカバー可能な段階です。その後、それを形にしていく仮説検証のフェーズに移るにつれて、聞くべき相手は変わり、特定の人を見つける「リクルーティング」の技術が必要になってきます。

また、調査協力者からリアルな情報を引き出すために、緊張している相手に心を開いてもらうためにはどうすべきか(ラポールの形成)、何をすると調査結果が歪められてしまうのか(認知バイアス)といった基礎知識や、それらを実践する際の “自身のくせ” は、知っておくべきでしょう。

  • 「正しい人」を見つけるリクルーティング技術
  • 「正しい質問」の前提になるラポール形成や認知バイアスに関する基礎知識
  • リサーチコミュニケーションにおける “自身のくせ” に対する自覚

発見と学習のための作り込まないデザインスキル

新規事業の企画段階では、通常のデザインとは異なるスキルが要求されます。「発見と学習のために行う」「作り込まない」という2点がデザインのポイントになります。

UXデザインでは、対象となる製品やサービスを体験、行動、操作の順にデザインしていきます。どのレイヤーのデザインも答えのない探索的なものとなるため、ざっと形にしてみてそれをユーザーに見せ、検証と改善を繰り返す(これをプロトタイピングと言います)技術が必要になります。

その際、デザイナーには、各レイヤーでの発見と学習が正しく行われるために必要な最小限のプロトタイプを、最短の時間でデザイン、場合によっては動きを伴う実装まですることが求められます。通常、精緻に作り込むよう訓練されているデザイナーにとって、この “必要最小限” の見極めには一定の経験を要するでしょう。

  • 体験、行動、操作のプロトタイプを作り分けるという視点とノウハウ
  • 発見と学習のために必要な最小限のプロトタイプを最短の時間でデザインする技術
  • 必要に応じて、動きを伴うプロトタイプを実装する技術

泥臭い仮説検証によるビジネスモデルの構築

ユーザーに刺さる製品やサービスを作ることと、それが売れることは違います。製品やサービスが革新的であればあるほど、市場にはすぐに受け入れられないという状況に陥ります。

製品やサービスに価値があるだけでは不十分なのです。それを誰に、どのように伝えていくか。一定の販売方法が確立している既存事業とは異なり、新規事業ではすべてをゼロから開発しなければなりません。

販売チャネル、訴求メッセージ、課金モデル、供給体制など、複数のパラメーターの最適値を模索するため、ここでもやはり、顧客の声を聞いて、仮説を立てて検証するという地道な活動を繰り返すことになります。ビジネスモデルの知識があっても実質的にあまり役に立たない、足で稼ぐしかないところだと言えるのではないでしょうか。

  • ビジネスモデルに対する仮説をゼロから立てることができるノウハウ
  • 仮説を検証するために、顧客の声を聞いたり、テストを行ったりするリサーチ技術
  • リサーチ結果にもとづいて新しいモデルを考える発想力、構想力

UXデザイン会社に依頼する3つのメリット

私自身、UXデザイン会社を経営する立場ではありますが、事業会社にとっては「外部のUXデザインを専門とする会社からノウハウを学びつつ、半年から遅くとも1年程度を目安に、自立した組織づくりを行うこと」が理想だと考えています。

ここでは、事業会社から見たときに、自立した組織づくりを前提としながらも、どのようなところにUXデザイン会社と付き合うメリットがあるのかをご紹介します。

メリット1:自社にないUXデザインのノウハウを学べる

UXデザイン会社は、受託でのデザインコンサルティングを生業にしてます。一定の実績がある会社であれば、数多くの業態、状況、条件下でのデザインプロジェクトを回した経験があるはずで、場数としては圧倒的でしょう。事業会社としては、自社にないノウハウを短期間で学び取る良いチャンスです。

リサーチなどの専門的なノウハウはもちろんのこと、特に、状況に応じて最適なプロジェクトを計画、変更する「プロジェクト設計」と、情報が少なく不確実性の高い中でも適切に判断し、デザインの品質を上げていく「デザインマネジメント」の2つは、今後のためにも、ぜひ習得すべきノウハウだと思います。

メリット2:UXデザインに足りないリソースを補える

私は、新規事業の立ち上げ期において、誰かの手が余っているといった状況のプロジェクトを見たことがありません。慢性的な人手不足の中、外注によって一時的に足りないリソースを賄うことができるのは魅力的です。

通常、UXデザイン会社は複数のメンバーでチームを組んでいて、フェーズに応じて「リサーチャー」「プランナー」「コンサルタント」「デザイナー」「エンジニア」など、そのときに必要なリソースを提供してくれます。これらのスキルセットを一式、自社で最初から揃えるのは、なかなか難しいのではないでしょうか。

メリット3:バーンレートを下げることができる

残念ながら、新規事業は失敗することがあります。一般論として、かなりの確率で失敗します。多くの場合は、軌道に乗る前に、つまりスケールのポイントが見つからないまま、資金が尽きてしまうのが原因だと言われています。

それを避けるためにも、極力、バーンレート(資金がなくなるスピード)を上げないことが重要です。事業開発において、固定支出の大半を占めるのは人件費です。最低限の人員で、事業が軌道に乗るまでの間を乗り切るために、外部のリソースを有効に活用しましょう。

ちょっと待って!UX デザイン会社に相談する前に

UXデザイン会社の力量を外から見比べるのは難しいです。私が知る UX デザイン会社は、いずれも質の高い仕事をしてくれますが、正直なところ、この領域で10年以上やっている私にとっても、会社サイトだけを見ての良し悪しの判断は困難を極めます。

  • 会社によってUXデザインの定義が違っている、何をどこまでやってくれるのか…
  • 決まったアウトプットがなく、何をよりどころに比較すれば良いのか…
  • 結局、ビジュアルデザイン力のあるところが良さそうに見える…

ここでは、UXデザイン会社に相談する前に知っておくべきポイントをご紹介します。

UIが得意な会社、UXが得意な会社がある

前述のとおり、UXデザインでは、対象となる製品やサービスを体験、行動、操作の順にデザインしていきます。あなたが依頼しようとしている会社が、これらのうちどのレイヤーを得意としているかは確認した方が良いでしょう。

UIとUXの違いを理解したうえで、あなたがいま必要としているものは何なのか、よく考えてみましょう。一般的に、0→1の事業立ち上げや、コンセプトの見直しを含むリニューアルでは、UIに依存しないUXレイヤー(事業の提供価値)のデザイン力が必要です。

参考:UIとUXの違いをやさしく解説!上司に説明すべき3つのポイントとは

意思決定をどのレベルで支援してもらえるのか

新規事業の立ち上げでは、不確実性の高い中での意思決定が要求されます。UXデザインは、そのような意思決定に伴うリスクをヘッジする手段でもあると言えるでしょう。

あなたがスタートアップの経営者であればさほど気にする必要はないかもしれませんが、事業会社で新規事業を立ち上げているのだとしたら、組織横断での合意形成に関する経験値はしっかりと見るべきでしょう。チームの判断と組織の判断とが食い違う可能性は多々あり、その場合は合意形成というプロセスが事業推進において大きなウェイトを占めるからです。

チームの自走を支援してもらえるか

何度も言いますが、UXデザインは本来、自社でやるべきことです。自社でできない点を補う、時間を買う、リスクヘッジする、などのために外注するのです。いずれ自立しなければならないため、”丸投げ” は決してうまくいかないと思います。

ノウハウを提供してくれない会社との付き合い方は考えた方が良いかもしれません。あなたの会社の事業としてベストな状態とは何かを考えてくれていれば、そして、いま手持ちのノウハウ自体に価値を置くのではなく、ノウハウ自体を生み出す実力がある会社であれば、それを出し惜しむことはないでしょう。

まとめ:自社に何が必要かを見極め、うまく付き合おう

優れたUXデザイン会社は、新規事業の立ち上げにおいて必要となるリソースとスキルセットに加え、後の自走に必要となるノウハウを提供してくれます。パートナーとして、うまく付き合っていくことで、事業の成功、成長にしっかりと貢献してくれることでしょう。

UXデザインを外注すべきかどうかで迷っている方はご相談に乗りますので、ぜひお問い合わせください。

この記事を書いた人

喜多 竜二

えそら合同会社 代表社員/HCD-Net認定人間中心設計専門家

2009年にUXデザインコンサルティングを専門とする「えそら合同会社」を設立、これまでに新規事業をはじめとする100を超える事業を支援してきた。自身は行動観察をはじめとするエスノグラフィを専門とし、生活者に対する共感を出発点としたユニークなアイデア発想の場づくりや、UXデザインの組織導入に力を入れている。東京大学工学部卒業、シドニー工科大学大学院修了。

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